2010年3月23日火曜日

プリム形式とGrunsky作用素

Nag-sullivanのK(x,y)のTTにおけるGrunsky operatorによる解釈を見ると、
次の疑問がわく。

KNTYにおいて、リーマン面上の自由フェルミオン場を作るために必要な道具は、
- 正則1形式
- 第2種微分の母関数であるプリム形式
- 局所座標
- Abel-Jacobi map
- スピン構造
であり、
H^1/2において、
正則1形式は、対応する調和微分、
プリム形式はK(x,y)、
局所座標は単位円盤の座標
を対応させることができる。
では、
1. 普遍タイヒミュラー空間上に自由フェルミオン場を構成することができるだろうか?
その際、タウ関数、すなわちテータ関数は(Banach多様体上の正則関数として)意味のあるものとなるだろうか?

2. 1がokであったとすると、
A Brownian Motion on the Group of Diffeomorphisms of the Circle
(http://arxiv.org/abs/0909.3881)
にあるブラウン運動のグリーン関数とテータ関数はラプラス変換などで対応するようにできるだろうか?

3. 具体的に相関関数を計算することができるか?

2010年3月8日月曜日

ちょっとした疑問

単連結領域Xに離散群Γが不連続に作用しているとして、
F=X/Γの基本領域内に、点pを固定し、
各点q∈Fに対してpとqを結ぶF内の可縮なpath γ(q)を用意する。

(X/Γ,p)に対してブラウン運動B_tが定義できるとすると、
ω(t)をγ(w(t))で結んでできるclosed pathのホモトピー類をとることにより、
X/Γの基本群(i.e.Γ)の上にμ_t:確率測度の族
が定義される。(基本領域の境界についてはとりあえず無視)

* 単純にΓの基本生成元の集合に確率測度をいれて乱歩をおこなうと、
時間が小さいとき原点から離れていることはないが、
ブラウン運動から来る場合は、微小時間でも遠くにいる場合がある。
この違いは、中心極限定理の形で理解できるのだろうか?

* ドリフト項を持つ伊藤拡散過程で同様のことを行うと、
離散群上にドリフト項を持つ拡散過程が定義できることになるのか?
* そのさい、ギルサノフの定理のような変換は離散群上でもおこなえるのか?

上記の対応を、
たとえばBerkovich空間の数論的基本群の上で展開できたとすると、
空間の基本群上の測度で割ることによりガロア群上の拡散過程が定義できないか?
というのが疑問。
そもそも数論的基本群にどう拡散過程を定義するか?が問題なので、そのままでは数学になっていない。

変形ベッセル関数

"Brownian Motion and Stochastic Calculus 2nd edition"(Karatzas & Shreve)
の4.4 The formulas of Feynman and Kac
に、Δu=0の解から、(Δ-α)u=0の解(αは定数)をラプラス変換を使用して形式的に求めるやり方が載っていた。(αが定数でなく非負値関数の場合は、5.7.10にあるkillingの考え方が必要になる。)

実2次元Euclid平面の場合、Δu=0は、変数分離をして、極座標(r,θ)に直してみると、
D=r*d/drとして、各νごとに、D^2f(r) = ν^2 * f(r) を解くことになる。
すなわち、r^(ν),r^(-ν) (ν != 0) 1,log(r) (ν=0)
により解の基底が定まるので、この組み合わせを係数に持つθに関するFourier級数が解になる。

Δu=m^2*u(m>0は定数)について同様の事を行うと、
D^2f(r) = (ν^2 + (m*r)^2)* f(r)を解くことになり、
これは、
D{r^(ν)*exp(m*r)}=(ν+m*r)*r^(ν)*exp(m*r)
D{r^(ν)*exp(-m*r)}=(ν-m*r)*r^(ν)*exp(-m*r)
D{r^(-ν)*exp(m*r)}=(-ν+m*r)*r^(-ν)*exp(m*r)
D{r^(-ν)*exp(-m*r)}=(-ν-m*r)*r^(-ν)*exp(-m*r)
を組み合わせることになる。
でてくるのは、変形ベッセル関数になるのだけれど、
mによる変形が、r^(ν)をr^(ν)*exp(m*r)に移すことに対応する。

ホロノミック量子場(4章)に、Dirac方程式としてνがZ+1/2の場合に解を求めているが、
そのからくりが少し理解できた気がする。

さて、
ホロノミック量子場で、mがでてくるのは、
m=0がCritical、すなわちイジング模型の格子が退化して有理曲線になっている場合、
m>0がイジング模型の格子が楕円曲線になっている場合
であって、
閉リーマン面の変形を
a)擬等角写像によるsmoothな変形
b)退化
に分けると、b)に対応している。

2010年3月1日月曜日

universal Teichmuller空間のperiod mapping

Teichmüller Theory and the Universal Period Mapping via Quantum Calculus and the $H^{1/2}$ Space on the Circle
(http://arxiv.org/abs/alg-geom/9310005)
では、
円周上の関数で平均0、1/2階微分が2乗可積分なもののなすヒルベルト空間として、H=H^(1/2)をとりあげ、
-内積と適合する複素構造としてヒルベルト変換J、シンプレクティックフォームSが定まる
-Diff(S^1)の作用を、QS(S^1)の作用に拡張できる
(ポアソン積分によりP:H->D(単位円盤上の調和関数で原点で0、Dirichletエネルギー有限な関数のなす空間)なるisometryが定まるが、この同一視とDicichletの原理による調和関数のDirichletエネルギーを用いた特徴づけにより、Dirichletエネルギーの評価と擬等角写像の定義を結びつける)
-QS(S^1)の作用はシンプレクティックフォームを保つ
ということを示し、これらを用いて、
Hをuniversal Riemann surfaceの1次元コホモロジー群とみなして、そのホッジ分解を明示していた。
また、universal Teichmuller空間T(1)のperiod mappingを、Sp(H)/Uを行き先として定義し、
それが単射であることを示していた。

この話について、次のような点に興味を持った。
-境界を持つRiemann面も含んでいること
-genusを固定していないこと
-関数環としての代数構造が強く効いていて、メビウス変換に対する不変性からシンプレクティック形式を保つことが出ること
-ダグラス積分が、核関数として微分ではなく差分を要請していること

genusを固定していない、と言う点は、
一つにはリーマン面の退化の間に成り立つ漸化式が綺麗にかけること
(ex. Polynomial recursion formula for linear Hodge integrals)
を思わせるし、
genusをp進補間して増大させていく極限というものを考えることができるのでは?
とも思わせる。

p進の場合にどう考えるべきかの辞書として、
Conformal and quasiconformal categorical representation of hyperbolic Riemann surfaces
(http://projecteuclid.org/DPubS?service=UI&version=1.0&verb=Display&handle=euclid.hmj/1171377082)
をみてみる。

2010年2月18日木曜日

Coleman積分とグラフ上の調和関数

The Frobenius and monodromy operators for curves and abelian varieties
(http://arxiv.org/abs/math/9701229)
に基づいて、
Coleman Integration Versus Schneider Integration on Semistable Curves
(http://www.ma.huji.ac.il/~deshalit/new_site/files/Coates.psをhttp://www.ps2pdf.com/convert.htmで変換)
に、semi-stable reductionをもつcurveのHodge decompositionの様子が記述されていた。
Mumford-curveの場合は、degeneration graphのgenusとcurveのgenusが一致するので、
簡潔になり、
グラフ上の調和関数、すなわちresidueを用いた計算により、第2種微分(modulo exact)が記述できる。

Berkovich空間としての積分は、
Integration of One-forms on P-adic Analytic Space(http://www.wisdom.weizmann.ac.il/~vova/)
Th4.3.1およびCor 4.3.5
に記載されている。
(ただ、この記述では、Frobenius作用、モノドロミー作用はでてきていない。)

2010年2月16日火曜日

正則写像の極限としてのR-tree

* 射影直線のBerkovich空間を有限R-treeの帰納的極限としての上半平面と
その境界として捉えて、
この中に、
有限安定グラフの普遍被覆として生じる有限R-treeを考え、
その(無限)(分岐)被覆R-tree T
を対象としたい。
-Tが存在できるためにはどのような条件が必要か?
-Tはどのような力学系に対応するか?
というのが素朴な疑問となる。

-Tにおける被覆の様子と基本群の作用は両立している必要があるから、もとの有限安定グラフを特殊ファイバーの双対グラフとして持つMumford曲線の基本群とどう対応するか?
という疑問もある。

* 複素領域において、平面に埋め込まれたsimplicial R-treeの固定点を持つ(無限分岐)被覆について、
Ribbon R-trees and holomorphic dynamics on the unit disk
(http://www.math.harvard.edu/~ctm/papers/home/text/papers/rtrees/rtrees.pdf)
では、以下のようなことが述べられていた。
- Ribbon R-treeの被覆f(T,p)->(T,p)ではSchwarz lemmaが成り立つ。すなわち被覆写像は距離を増大させない。
- Tがminimality条件を満たすとき、Tはcoreから復元できる。
ただし、coreとは、pとpost-critical setのconeのfによる逆像。
つまり、Tを制御する情報はcritical points。
- 単位円盤に双曲距離を入れて正則写像としてのBlaschke積をみると、リスケーリングによって、
post-critical setsたちの距離を無限大に近づけていくことで、双曲多角形がR-treeにGromov-Hausdorff収束する。すなわち、正則写像の幾何的極限としてR-treeの被覆が得られる。
- 一方、Blaschke積の零点を絶対値1に近づけると次数が下がる。その意味で代数的な極限が存在する。
- 代数的極限における次数の退化は、境界である単位円周上の正因子によって補完される。
代数的極限が幾何的極限と対応する十分条件が、次数2の場合に述べられている。

p進では、当然そのままでは何も移行できないが、
複素数では、上半平面と単位円盤が対応して、Blashchke積は、ガロア作用である複素共役を用いて定まった。
p進において、単位円盤もどきは存在しないが、ガロア作用を用いてBlaschke積に対応するよい写像を作れないか?
リスケーリングによって境界上の点の距離を無限大に持っていく、という操作を作ることができないか?
というものが気になる。

2010年1月26日火曜日

Teichmuller curve

Trees and the dynamics of polynomials
http://www.math.harvard.edu/~ctm/papers/home/text/papers/trees/trees.pdf
をみると、
複素解析的にtreeと有理関数から生じる力学系を関連付けることができるようだ。

また、複素解析的には、
Teichmuller curveという概念がある。
リーマン面からリーマン面のmoduliへの写像がlocal isometryという条件によって定義されるが、
Rigidity of Teichm¨uller curves
(http://www.math.harvard.edu/~ctm/papers/home/text/papers/rigidity/rigidity.pdf)
によるとTeichmuller curveは変形を持たず、数体上で定義される。
逆に、
Every curve is a Teichmuller curve
(http://arxiv.org/abs/0909.1851)
によると、
数体上定義される代数曲線は、Teichmuller curveと双有理同値になる。
こちらは、P1-{0,1,∞}上の分岐被覆として実現できるというBelyiの定理を用いている。

数体上の代数曲線、という概念が解析的に特徴付けられたように見えるが、
これは、何らかの変分法として特徴付けられるだろうか?

Teichmuller curveをさらにJacobianをとって、A_gへの写像とみなすと像がどうなるか?
ということに関して、
Variations of Hodge structures of a Teichmuller curve
(http://arxiv.org/abs/math/0401290)
があった。
Higgsバンドルの言葉で特徴付けている。
特徴づけの中にreal multiplicationが現れるので、
志村曲線であるTeichmuller curveはどれだけあるか?
と気になるが、
それは、
Shimura- and Teichmueller curves
(http://arxiv.org/abs/math/0501333)
で極めて少数であることが示されている。

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三角群を絡めたサーベイとして
Teichmuller spaces, triangle groups and Grothendieck dessins
http://www.mth.kcl.ac.uk/staff/wj_harvey/HstrasL.pdf