一様分布の乱数から、確率測度のシミュレーションを行うときに、
自然と累積分布関数の逆関数、という話が出てくる。
ここで、逆関数をみる、ということは、
楕円積分などのアーベル微分と絡んでもよいと思うのだが、
分布関数が種数1以上の代数曲線の周期と結びついた確率測度、
という話をみたことがないので、
面白い分布関数がないものか?
と気になる。
* 代数曲線の種数増大列
Katz-Sarnakのランダム行列の議論では、
有限体上の代数曲線の列で、種数->無限大
となるものを考えて、
そのフロベニウス作用素の1次コホモロジーの固有値
から作られる確率測度のGUEへの収束をみていた。
* ベータ分布
上記の代数曲線の列として、
GUEに収束しないものの例として、
Fermat曲線があげられている。(ただし、次数と標数に制限がつく。)
Fermat曲線は、
射影直線の{0,1,無限大}における分岐
によって得られ、
式の形からも、標数0に持ち上げられ、
整数環上定義されるものである。
複素数体上で、
Fermat曲線のアーベル微分をみると、
その周期は、ベータ関数で表される。
ベータ分布でパラメータが特殊な有理数となっているものの列
が、標数pへのreductionでGUEに収束しない列を与えている。
ベータ分布は、事前分布も事後分布もベータ分布となるような、
尤度関数を持っている。
* そこで、次の疑問がわく。
射影直線の{0,1,無限大}における分岐、
すなわち、dessin d'enfantを考えて、
適当な被覆列をとる。
1. その[0,1]におけるアーベル微分の周期をとって、確率測度とする。
被覆列についてみると、確率測度の列ができるが、
この列を事前分布、事後分布として解釈できるような尤度関数は存在するか?
2. 確率測度の列について、各尤度関数は、その代数曲線のempirical measureのレート関数と、なにか関係がつくか?
3. 適当なパラメータの特殊化を行って、有限標数にreductionを行うと、代数曲線列は、固有値測度がGUEに収束しない列となりうるか?
1 件のコメント:
Dembo-Zeitouniなどをお持ちでしたか。大偏差原理に関しては定番とされている、しっかりした本です。あいかわらずよくご存知で。
世間では言葉の定義が混乱している場合があるので、まずただしておきませう。
(A)
LDPといった場合には、基礎の空間で測度の列がデルタ測度的なものに弱収束しているときに、部分集合の重みが指数的に減少していく様子を定量的にとらえたものです。しかし、「積分型」とでも言うべきバージョンがあって、
適当な指数型積分の"Log-asymptotics"を考えることと(ほぼ)同値だというわけです。(Varadhan's lemmaといったりする)
(B)
ラプラスの方法(あるいは、Laplace approx., Laplace-type asymtotics)という場合には、その指数型積分の"exact asymptotics"を計算するものです。この場合、指数の肩に乗る関数の停留点の近傍のようすが重要で、
たいていはそこでのHessian的なものできまります。ということは、測度の乗っている空間に微分構造的なものがいるわけだ。
リンク(kwansei)のpp. 18--19あたりと、リンク(newton)のp. 4にごく簡単にのってます。(全部を見る必要はなし。)
ところが、人には(A)までLaplaceなんとか、、とよんで、(B)をSharp Laplace asymptotics
などど呼んだりしてるので、いろいろと用語が混乱してます。
DZに書いてあるのは(A)のみでなく、(B)もでしょうか?自分に必要なとこをつまみ食いしただけなので、よく覚えていないんです。
さて、業界人なら、「LDP成功」ときくとすぐに、(B)の意味でのLapalceの方法は成立するのか考えるので、私も深い考えなしに聞いた訳です。このたびのモデルでは、固有値を一回デルタ測度だと思って、確率測度の空間に確率測度をいれてるので、これはSanov型LDPの状況になんとなくにてると思ったわけです。リンク(kwansei)のpp. 18 以降をぜひご覧下さい。
>上記の本の5章はブラウン運動のLDPに関する話が出ているので、
>tree-上のブラウン運動でも同様のことがいえるのか?
>とあわせて学習してみたいと思っています。
これはSchilder型LDPのことですか?そうだとすれば、Tree上ではスカラー倍がないので、類似物はないように思いますが。
コメントを投稿