2010年5月12日水曜日

theta関数

theta関数は、
1. 周期
周期行列を分散に持つガウス分布の、A-トーラスへのPushForward
2. ボゾン
自己双対位相アーベル群のLatticeを固定して、Heisenberg群のユニタリ表現
3. フェルミオン
admissible basisを固定して、グラスマン多様体上の双対Determinant束の大域切断
の見方ができる。

* MTでは、1の見方で、Hill's surfaceのtheta関数を定めている。
- 周期ポテンシャル<->周期スペクトル+補助スペクトル
周期ポテンシャルは周期1の周期関数qを用いた極限点型の自己共役作用素、
L=-(d/dx^2)+qの端点(-∞,∞)に対するスペクトルで、
Lax形式で定義されるKdV-flowで不変である。
一方、補助スペクトルは端点0,1でのDirichlet条件に対するスペクトルで、
これらはKdV-flowで不変でない。
周期スペクトルは基本解の周期1に対するモノドロミー行列の判別式Δの解であり、
周期スペクトルを与えるとΔが定まる。
補助スペクトルを与えると基本解のうちの一方の1での値が定まる。
- 正準共役変数
周期的戸田格子では、非線形格子力学(戸田)の5章にあるように、
Floquet指数を用いると、これらは、
補助スペクトルに対する正準共役になる。
Q:これはMTでは書かれていないが成り立つのか?
- KdV-flow
周期ポテンシャルは、周期スペクトルを指定すると、KdV-flowにより、transitiveに移る。
これは、ヤコビアン多様体の実トーラスに一致する。
ヤコビアン多様体を定義するためにLattice構造は周期ポテンシャルを用いて収束条件により規定される。
- 周期ポテンシャルの微分条件
微分方程式と固有値展開(小谷)定理4.15(Marchenko-Ostrovsky)では、
周期ポテンシャルの微分可能性と周期スペクトルの和の収束条件の対応、
が記述されていた。(この定理がどこで証明されているのか記載がないので、ずっと気になっている。)
SWProp2.8では、real analytic loopが主な対象である旨の記述がある。
Q:finite gapでない場合の周期ポテンシャルの軌道が張る閉空間はどのようなloopに対応するのか?


* NSによる、H=H^1/2をシンプレクティック空間とみなす方針では、
MTのポアソン構造から定数部分をはずしているが、これは自然。
HはHeisenberg群に拡張される。
Hの基底{z^k}を用いて値の積によりformalには環の構造を入れることができる。
Q:真空期待値をとることでCFTでは収束の議論を無視できるが、今の場合はSchwarzの不等式により収束が言えるか?
Q:2の方針でtheta関数を定義するためには、HにおけるLattice構造として、何をとればよいのか?


* TTによる、周期写像の埋め込みでは、
3による定義ができることを示している。
Q:SWの§9のtheta関数とτ関数の対応の証明の議論がどこまで適用可能か?

MT:McKean-troubowitz
NS:Nag-Sullivan
SW:Segal-Wilson
TT:Teo-Takhtajan

8 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

うーむ、相変わらず博識ですな。勉強になりました。

匿名 さんのコメント...

ちなみに、今年のあれはランダムシュレーディンガー。

http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~yasuyuki/mp2010.htm

大槻東巳 (上智大理工)
ランダム媒質中を伝搬する波動の局在・非局在転移

小谷眞一 (関西学院大理工)
1次元系の絶対連続スペクトルと可積分系

中野史彦 (学習院大理)
アンダーソン局在と関連する話題

南就将 (慶応大医)
ランダム・シュレーディンガー作用素の基礎

aka さんのコメント...

教えていただきたいことがあるんですが、
ループ、とくに今の場合はGL(2,C)に値をとるループについて、
実解析的、
C∞級、
Cn級、
微分不可能、
ラフパス、
ただの連続
といった階層がでてきますが、
ループ空間において、こうした集合は、
うまいこと分離できるのでしょうか?

MTにおいては、Dirichlet級数の収束条件で、I^1/2にフィルトレーションを入れて、
これがV_{i}というKdV-flowの作用と
両立していました。

Sobolev空間によるフィルトレーション
が入って、記述できるのでしょうか?

もしできるとしたら、そのフィルトレーションを特徴付ける量はどんなものになるのでしょうか?

こうした話、いい文献ありましたら教えてください。

aka さんのコメント...

>ちなみに、今年のあれはランダムシュレーディンガー。

情報ありがとうございます。
ちょうど知りたいと思っていたところでグッドタイミングです。
参加するつもりです。

微分方程式と固有値展開、
は題材はとてもいい本だと思うのですが、
私のようなど素人にとっては、
- 作用素を具体的にどう関数に作用するのか、よくわからない。たとえばVorterra作用素がでてきたとき、共役作用素をどう求めるのか、少しは例を出しておいていただけると、解りやすい。
- 作用素の核関数と作用素が混乱してしまう。
- 証明途中の式をあとで引用しているため読みづらい。
- 知りたいと思う定理の証明が略されている。
- Floquet指数を持ち出しても、それがどう有難いか記述がない。
- 一般展開定理の例が少なすぎる。
- 参考文献がどれも手に入りづらい。絶版もしくは非常に高価で、現代数学の基礎、としてはいかがなものか。

と、不満たらたらなのです。
著者の顔を眺めに行きます。
ついでにサインしてもらおうかな。

匿名 さんのコメント...

一応、整理しとくと、ユークリッド空間を走るパスについては、


{実解析的} \subset {C∞級} \subset {Cn級}\subset {ただの連続}

は自明ですな。

"微分不可能"はなにを意味しているのでしょうか?
"ただの連続"とはどう違うのでしょうか?


ラフパスはパスと重複積分との組の意味なので、一直線には並べられません。
でも例えばC^1級ならば、重複積分が定義できるので、

{実解析的} \subset {C∞級} \subset {Cn級}\subset {ラフパス}

とはなっています。(まあすでにこの程度は想像ついてると思いますけれど。)
{ただの連続}と{ラフパス}に大小関係は特にないです。
「こうした集合はうまいこと分離できる」とはどういったニュアンスでしょうか?

Sobolev空間によるフィルトレーションなどなどについては、私の知識ではわかりません。
ユークリッド空間でなくて、GL(2,C)に値をとるループについても、
自明なこと以外は特にGL(2,C)値の場合についてはわかりません。

匿名 さんのコメント...

「微分方程式と固有値展開、は題材はとてもいい本だと思うのですが、」
という書き方をaka氏がするときは、文句を言いたいときなんですね。
最近わかってきました。

-Vorterra作用素がでてきたとき、共役作用素をどう求めるのか

普通の積分核作用素(核はK(x,y)) の共役の積分核が " K(y,x)のconjugate" だというのは
知っているよね。計算も簡単で、Fubiniの定理を一回使うだけ。
 Vorterra作用素の場合は普通の積分核だと無理に思うと

K(x,y) I_{a<y<x<b } , where I is the indicator function

だと思えるので、これでx,yを入れ替えれば終わり。



- 作用素の核関数と作用素が混乱してしまう。

Yes.この業界の人はたいていそうするが、私もあまり好きではない。

aka さんのコメント...

>「こうした集合はうまいこと分離できる」とはどういったニュアンスでしょうか?

Marchenko-Ostrovskyの定理だと、
周期ポテンシャルの微係数がL^2に入る条件が、周期スペクトルの収束条件で表されています。
このような条件がないものか?と。

SWのほうの話で言うと、
Prop2.9
H_{+}を多項式程度に移したものが有理曲線に対応、
対応するloopの行列要素が有理関数
といった話があります。

Prop2.8では、loopをS1上の関数と見るときに、
半径r<1でちょっと縮めた関数とするとreal-analytic、
と言っているので、
このloopの特異性と、対応するRiemann面の性質、
が気になるところです。

すぐにわかることは、
コンパクトRiemann面の変形に対応する擬等角写像として
実解析的写像がとれる(Ahrfols-Weill)ので、
Gr内の対応する閉空間Wは、H+をreal-analyticに移したものになります。
すなわち、loopはreal-analyticなものになります。
これは、フックス群で一意化されるRiemann面についても同様に成り立ちますが、

MTの例のように、一意化されるにしても離散群で一意化できない場合、
loopはreal-analyticから離れていく、と予想され、

上記のMarchenko-Ostrovskyに対応するRiemann面では、
周期ポテンシャルが大体loopを定める関数のシュワルツ微分と同程度の特異性を
持つと思われるので、
スペクトルの収束条件により、loopの特異性が現れていると解釈できます。

aka さんのコメント...

>という書き方をaka氏がするときは、文句を言いたいときなんですね。
>最近わかってきました。

そんなにひねくれているかな?
今回は、素直に、
本の題材はいい、とほめていて、サインもほしいな、と。
実際、この本のおかげで、ソリトンやらKPやら勉強することになったし。
でも、読み辛いのは確かなので、
気になった点を列挙しただけです。
他意はないです。

注釈、ありがとうございました。