2012年9月29日土曜日

サマースクール 復習 その15

* DG category

スキームにおいては、
- 空間の位相と層の位相の分離、とくに局所環付き空間の概念
- 関手の概念による相対化
- 部分空間の層による書き換え
- 有限性を制御する射の固有性および層の連接性の概念
に加えて、
- 垂直方向の矢印によるファイバーの概念の視覚化
- 水平方向の矢印による空間の包含関係の視覚化
- 斜め方向の矢印による平滑というファイバーと部分空間の絡む概念の視覚化
が成功していた。
そして、
- Kahler微分の存在
- Serre双対性
- 6つの関手およびその導来関手
により、多様体で成り立っていた多くの性質、
- Poincare duality
- 交差理論とRiemann-Rochの定理
が成り立つことが示されていた。
スキームの概念を拡張して非可換な対象を扱えるようにしたい場合にも、
上記の概念が拡張できなければそれほど有用ではないだろう。


On differential graded categories
http://www.math.jussieu.fr/~keller/publ/OnDGCat.pdf
空間に対し圏を対応させるという思想では、
スキームに対しその上の連接層のなすアーベル圏を対応させることができる。
しかし、導来同値な空間の性質を調べたい、という動機のもと、三角圏の圏の性質を調べたい。
- テンソル積、内部Homの存在
- 関手性
の問題があるので、DG圏を用いる。
DG圏の圏はテンソル積で閉じている。
DG圏を係数とするDG加群が定義できる。
DG加群の擬同型が定義でき、局所化を行うことができ、三角圏になる。
perfect DG導来圏という充満部分圏が定義でき、三角圏になる。
DG圏に米田関手がH^{0}とperfectDG導来圏の同値性を導くという形でsaturatedの概念が定義できる。

非可換スキームの圏NCSはDG圏のDG圏dgcatを局所化することで定義される。
NCSの対象はsaturated DG圏である。
NCSはQuillenの意味でのモデル圏の構造が入り、テンソル圏になる。
NCSには内部Homが存在する。
NCSにおいて、対象の充満DG部分圏による商が定義できる。
NCSにおける連続写像の概念が定義でき、(良い)スキームから来る場合は向井変換でかける。

DG圏に対して、Hochshild homologyが定義できる。
NCSにおいて、cyclic homologyが定義できる。
DG圏には固有性、平滑性の定義が存在する。


Model Categories and Simplicial Methods
http://arxiv.org/abs/math/0609537v2
- 斜め方向の矢印の概念を抽象化
- 局所化の概念を抽象化
- 導来関手をQuillen関手を用いて記述できるように概念化
したものがモデル圏。

2012年9月25日火曜日

サマースクール 復習 その14

* Riemann-Roch
三角圏に安定性条件を入れて、条件を固定するごとに様々なアーベル圏が出てくるとすると、
その内の一つがたまたま代数多様体の連接層のなすアーベル圏であった場合、
そこで使用出来るRiemann-Rochの定理のような公式は、
他のt-構造からアーベル圏を構成した際にどの程度反映されるものなのだろうか?
たとえば、Calabi-Yau圏に対して、Quiver with potentialから定まるアーベル圏が
t-構造のcoreとして取られた場合に、
- Riemann-Rochの定理は存在するのか?
- 接バンドル、余接バンドルに対応する対象は何か?
- 特性類が存在するコホモロジーは何か?
- とくにEuler数はどのような特性類を用いて与えられるのか?
- Todd類はどのように特徴づけられるか?
といった点が疑問になってくる。

Lectures on D-modules
http://www.math.columbia.edu/~scautis/dmodules/ginzburg.pdf

2.6. Application: Riemann-Roch Theorem for curves.
において、Atiyah代数を用いて記述をしている。

The Atiyah class, Hochschild cohomology and the Riemann-Roch theorem
http://arxiv.org/abs/math/0610553v3
平滑(固有)代数多様体において、
余接バンドルのAtiyah類から、接バンドルにLie代数の構造が入る。(Prop1)
Hochshild cochain complexに接バンドルのLie代数の構造と整合する積構造が入り、(Th1)
(アフィンの場合はHochshild-Kostant-Rosenberg同型により)接バンドルの外積代数とcochain complexは同型となる。(Prop2)
Serre-dualityの存在とcanonical extentionの存在。(Th3)
Chern指標の定義(Def5)
Todd類の定義(Prop6)
Riemann-Roch(Th4)
が示されている。

Hirzebruch-Riemann-Roch theorem for DG algebras
http://arxiv.org/abs/0710.1937v3
DG代数に対して、PerfectDG加群の圏を定義する。
DG圏に対して、Hochshild chain complexおよびHochshild homologyを定義する。
DG代数のDG加群の圏とPerfectDG加群の圏はQuasi iso。(Th2.6)
bimoduleによるテンソル積のPerfectonessに関する関手性(Cor2.3, Prop2.4)
複体のレベルでのKunneth Quasi-iso(Th2.8)
Euler characterの定義(3.1)
Trace射の定義(Prop3.3)
テンソル積のEuler数をEuler characterのpairingで表示(Th3.5)
なお、ここではTodd類は現れていない。

A variant of the Mukai pairing via deformation quantization
http://arxiv.org/abs/1103.5312v1

2012年9月24日月曜日

サマースクール 復習 その13

* Calabi-Yau代数

Calabi-Yau algebras
http://arxiv.org/abs/math/0612139v3

多様体上の関数に対して、そのcritical pointsは、
余接空間上の2つのLagrangian、0-sectionと関数の微分のグラフ、
の交わりとなるので、genericには次元は0となる。
そのため、numericalな値が定義できる。
Counting invariants for Calabi-Yau threefolds
http://www.math.ubc.ca/~behrend/talks/edmonton11.pdf
にあるように、
3次元Calabi-Yau多様体上の安定層(イデアル層)のモジュライ空間が平滑な場合には、
モジュライ空間上のEuler類の積分として、Gauss-Bonnet-Chernの定理からEuler数が不変量として出てくるが、
これは、Poincare-Hopfの定理より、関数の微分として出てくるベクトル場が有限個の横断的な零点を持っている場合、
零点におけるベクトル場の向きを考慮に入れた足しあわせたものだった。
実際には、モジュライ空間はほとんど平滑にならないので、平滑な空間に埋め込んで、
特異な場合にも成り立つGauss-Bonnetの定理を利用して不変量が定義される。
ここで、特異な場合のGauss-Bonnetの定理の成り立つ根拠は、
Donaldson-Thomas invariants via microlocal geometry
http://arxiv.org/abs/math/0507523v2
にあるようにSymmetric Obstruction Theoryの存在だった。

さて、3次元Calabi-Yau圏として、3次元Calabi−Yau多様体の性質を抜きだして、
DT-invariantsが定義できるような圏を構成したい。
特に有限次元代数の加群の圏として非可換代数から構成したい。
その典型例として、
自由代数にポテンシャル関数を与えて、そのJacobi環として定義される代数、
がある。
この代数は、
- dg代数によるresolutionを持つ。とくに3次元Calabi-Yau代数の場合にQuasi-isoになる。(Th5.3.1)
- contangent complexの類似が定義でき、変形理論が展開できる。(Prop2.4.2)
- 幾何の場合のモジュライ空間の対応物として有限次元表現の空間を取ることができる。
ポテンシャル関数のcritical locusが定義でき(2.3.1)、vanishing cyclesのEuler数を定義できる。(Prop2.10.4)
- DG代数としてRHomによる良い記述がある。(Prop2.9.5)
がある。
Calabi-Yau代数として、Symplectic DG dataというものにより、universalな構成が存在する。(Th3.6.4)
Calabi-Yau代数の例として3次元MacKay Quiverのpath algebraにポテンシャルをつけたものがあり、
これは3次元Calabi-Yau代数となる。(Th4.4.6)

2012年9月23日日曜日

サマースクール 復習 その12

*Donaldson-Thomas invariatns

Donaldson-Thomas invariants
http://www.ihes.fr/~maxim/TEXTS/DTinv-AT2007.pdf

導来圏の安定性条件を用いて、
t-構造およびそれに付随するアーベル圏を定めることができる。
代数多様体の導来圏について、安定性条件から一つアーベル圏を定めると、
アーベル圏が、
有限次元代数の加群の圏の場合や、
Quiver with potentialの場合がある。
このようなアーベル圏を扱う枠組みとして、
3次元Calabi-Yau圏がある。

実3次元多様体(の上の接続)に対して、Chern-Simons汎関数が定義され、
その正則バージョンとして、
複素3次元Calabi-Yau多様体(の上の正則接続)にして、正則Chern-Simons汎関数が定義される。
そのcritical pointsに対し不変量がされる。

これを拡張して、
3次元Calabi-Yau圏に対して、
安定性条件から定まるアーベル圏のmoduli stackの
virtual dimensionが0の時、そのvirtual numbersで、
numerical Donaldson-Thomas(DT) invariantsが定義できる。
(GW理論と同様、モジュライに対してvirtual fundamental classが定義できて、
不変量がwell-definedであることを確かめる必要がある。)

3次元Calabi-Yau圏に対して、
Motivic Hall代数とその部分群として、
Motivic Quantum Torusが定まる。
さらに、phaseを固定して無限積を取ることで、
DT-invariantsからMotivic Quantum Torusの元を定義することができる。
この元は、安定性条件の壁超えに対して、
良い振る舞いをする。

2012年9月21日金曜日

サマースクール 復習 その11

* 導来圏の安定性条件
Spaces of stability conditions
http://arxiv.org/abs/math/0611510v1

三角圏に対して安定性条件が定義できる。
(小三角圏に対して完全三角形で関係式を入れることでGrothendieck群(K群)が定義できる。welldefinednessはTR4による)
これは、アーベル圏に対する安定性条件を拡張し、
K群からの複素数値線形関数であるcentral chargeと
その値であるphaseを指定するごとに忠実部分圏を割り当てる。
- 三角形のTranslationに対しphaseが正の向きに半周する(1周しないのはsuperであることを念頭に置いている?)
- phaseの大きい対象からphaseの小さい対象には射は0だけ。
- 任意の対象はphaseが単調減少の有限個の三角形に分解できる(semistabilityの概念の拡張)
を条件に加える。
さらに安定性条件の空間を適切に記述するためには、局所有限性の条件が必要になる。

central chargeはK群上の複素数値関数であるから、
K群が有限生成であれば、
central chargeの空間は複素空間を関係式で割った比較的わかりやすいもので、
安定性条件の空間はその持ち上げになる。

一般にはK群は有限生成ではないが、安定性条件の空間の連結成分を取れば、
Th3.5では、局所的に持ち上げが位相を込めて同型になる、と言っている。

さらに、
射影的平滑代数多様体の導来圏の場合には、
局所有限な安定性条件で、
Chern指標を経由する条件の空間に限定する。(そのためsuperであることが必要だった)
この場合は、安定性条件の空間は、Th3.5より複素多様体と局所同型なので複素多様体になる。

安定性条件の空間には、
central chargeに対する変換からくる群作用と、
三角圏の同値変換から来る群作用が存在する。

実例として、
複素数体上の楕円曲線の場合、導来圏の同値はSL(2,Z)のZによるextentionからくる。
安定性条件は、GL(2,R)で向きを保つものの普遍被覆からくる。
よって、安定性条件/導来圏同値 は、modular curve上の直線束となる。

代数多様体の導来圏がexceptional collectionsで生成され、Quiver with relationsの導来圏と同値な場合は、
綺麗に書ける場合もある。

A 型特異点の安定性条件
http://www.mm.sophia.ac.jp/~shinoda/msj/pdffiles/ishii.pdf

2012年9月20日木曜日

サマースクール 復習 その10

* Quantum groupとHall代数

3次元多様体の量子不変量が'量子'である理由は、
- Witten不変量はWZW模型によって幾何学的量子化されたものから計算されている(表現はアファインLie環)
- Reshetikhin-Turaev不変量は量子群の表現を用いて構成されている
というものであり、背後にChern-Simonsゲージ場という量子場があったからだった。

さて、
WZW模型を計算可能にするKZ方程式はモノドロミー保存変形の量子化であり、
モノドロミー保存変形はアーベル圏の安定性条件から導出されていた。
そこで、量子群をアーベル圏の言葉で記述したくなる。
通常は定義関係式を用いて(Quasi)Hopf代数として定義される量子群(量子展開環)は、
Ringelの定理により、Borel部分はアーベル圏の言葉で記述できていた。
展開環全体の記述のためには、2次元球面が上半平面と下半平面の貼り合わせであるように、
アーベル圏が良い性質(Hereditary)を持っていて、さらに複体を用いて記述する必要がある。

Quantum groups via Hall algebras of complexes
http://arxiv.org/abs/1111.0745v1

2012年9月19日水曜日

サマースクール 復習 その9

Renormalization and motivic Galois theory
http://arxiv.org/abs/math/0409306v1
淡中圏として、motivic Galois group、
すなわちGmとあるpro-unipotent groupの半直積を固定して、
universal singular frameの明示的な式を提示していた。
これは、Time dependent exponential mapの形から、
かなりJoyceの構成に近いと思われる。
しかし、ここでは、安定性条件が現れていないので、
どのようにBridgelandの枠組で理解できるのかよくわからない。
Q:singular frameをBridgelandの枠組みで理解すること。

Stokes factors and multilogarithms
http://arxiv.org/abs/1006.4623v5

また、
群値運動量写像を用いた箙多様体の変種とRiemann-Hilbert対応
http://www.math.titech.ac.jp/~yamakawa/abst-geom55.pdf
に現れる乗法的箙多様体を、Quiver iwth potentialの圏の言葉で理解すること。

2012年9月18日火曜日

サマースクール 復習 その8

* 安定性条件とモノドロミー保存変形

Stability conditions and Stokes factors
http://arxiv.org/abs/0801.3974v5

- 安定性条件
有限次元代数の有限次元加群のなすアーベル圏に対して、
K群の正錐に対して複素上半平面上の点を加法を保つように対応させることにより、
安定性条件を与えることができる。
(ここで、複素数であることは、本来Motivicであるべき対象を記述する適切な言葉がないため、
それを含む複素数体で物事を議論しているためと思われる。モノドロミーに対する数論的理解が進めば、
安定性条件はより精緻な対象で記述されるべきであると思われる。)
K群の生成元は(単純加群からなり)有限個であるから、安定性条件の空間はこの場合、有限次元であり、
とくに上半平面の直積として多様体となる。
安定性条件の元で、部分加群に関する偏角の単調減少性によりsemistable条件を定義できる。

Kingにより安定性条件(Kingのθ安定性と同値になる)とK群の正錐(type)を指定するごとに、
semistable加群のcoarse moduli spaceを構成できる。
安定性条件の微小変動によりmoduli spaceが変動しない空間分割、
すなわち安定性条件のchamberと壁が構成できる。

有限次元代数の有限次元加群のなすアーベル圏からHall代数Hを構成できる。
安定性条件はK群の演算とcompatibleであるので、
安定性条件とtypeに対してよい振る舞いをする部分代数を構成したい。
typeに対して特性関数を取ることにより部分代数Cを、取ることができる。
Cには直和の類を用いて余積構造を入れることができる。
さらに、indecomposable加群の類で生成されるCの部分代数nを取ることができる。
nはLie環におけるnilpotent partの類似であり、
Cartan部分代数の類似であるh(これは安定性条件の空間を含んでいる)、
およびhとnの半直積であるBorel部分代数の類似b
を取ることができる。

さらに、安定性条件の空間からnへの関数として良い振る舞いの関数をとりたい。
Joyceによる構成は、nの中に、良い元をとって、typeの演算とcompatibleな微分方程式を満たすようにできる、
というものだった。(2)
これを、b(の完備化)に値を取る射影直線上のStokes dataと見ることで、
壁越えとモノドロミー保存変形を関連付ける。

- 射影直線上の代数群G主束の不確定特異点を持つ接続
admissble rayにおける正則で0への極限が明示的に記述される切断がuniqueに存在する。(Th2.6)
Stokes rayを超える部分ではStokes factorにより解の変化が記述される。
よって、上半平面をStokes rayにより偏角によって並べることにより、Stokes factorが記述されるが、
これがadmissible rayのみの領域で変化しないことと、モノドロミー保存変形であることは同値となる。(Prop2.11)
さらにモノドロミー保存変形のJimbo-Miwa-Uenoの方程式は、
Gのroot分解を用いて記述することができる。(Th2.12)(4)

-
安定性条件とn(の完備化)の元を与えることにより
a) 安定性条件の特性関数がStokes factorに対応する
b) Stokes multiplierの正規化
の2つの条件を満たすStokes dataを持つmeromorphic 接続がuniqueに対応する。
さらに、接続の留数は、Joyceの構成により記述でき、モノドロミー保存変形の微分方程式を満たす。

2012年9月17日月曜日

サマースクール 復習 その7

* 2次微分と安定性
Quadratic Differentials as Stability conditions
http://www.hcm.uni-bonn.de/fileadmin/stringmath2012/plenary_talks/brsm_bonn_stringmath.pdf
点付き境界付きリーマン面に対し、非退化3角形分解からQuiver with Potentialを構成する。
さらに、complete Ginzburg代数の導来圏の部分圏として、
3次元Calabi-Yau三角圏を構成する。(Q:これはCalabi-Yau代数の文献を見ればよい?)
この3角圏に対し安定性条件の空間、および圏の自己同値の空間を構成し、
後者の連結成分での商を取る。(安定性条件の空間は複素多様体(Th2)となる。)
(Q:自己同値の空間はその部分空間になるのか?)
すると、複素orbifoldとして、符号付きmeromorphic2次微分の空間と同型になる。(Th1)
辺に対するflipはQuiver with Potentialのmutationを引き起こし、圏の自己同値を引き起こす。
最初と最後の分割が変わらない辺のflipの列を合成することで、圏の自己同値の群が生成される。

境界付きリーマン面に対し、meromorphic2次微分を、零点がすべてsimpleであるようにとり、
3位以上の極についてはreal blowupをし、2位以下の極しか持たないようにする。
このようなリーマン面と2次微分の組は複素orbifoldとして定まる。
2次微分なのでsqrtをとって留数を取ることができる。

リーマン面とすべての2位の極での留数を固定して、2次微分の部分空間をとり、
これを安定性条件の空間に引き戻すと、
どのような特徴付けができるか?
という事が書かれていた。

2012年9月16日日曜日

サマースクール 復習 その6

* 虚2次体上の保形型式
有理数体上のGL(2)保形型式は、
複素上半平面上の関数で算術群に対する保形性を持つ関数で表される。
とくに、正則保形型式が存在して、楕円曲線のモジュライ上の直線束の切断を与えていた。
ここで、複素上半平面がでてきたのはSL(2,R)/SO(2)が対応していたためだった。
では、虚2次体上のGL(2)保型形式はどうだろうか?[
SL(2,C)/SU(2)が3次元上半平面に対応するが、
正則保型形式は存在しない。
また、保型形式はSU(2)の有限既約表現の存在により、ベクトル値になる。

Some Applications of Number Theory to 3-Manifold Theory
http://arxiv.org/abs/1203.1428v1
算術群として、arithmetic Klein群、とくにBianchi群と呼ばれるものに注目する。
ただし、結び目の補空間の基本群として現れるのは、figure-8に対応する場合だけである。
Eichler-Shimura同型に対応するBettiコホモロジーと算術群のコホモロジーの同型対応、
およびその保型形式としての解釈、
cusp型式、Hecke対応については、定義が存在する。
(これらは保型表現としてみたほうが分かり易いかも知れない。)

また、虚2次体のゼータ関数のs=2での値と、虚2次体のorderのPSL2による商の体積との関係が存在する。
(もし結び目補空間がいっぱい対応していてくれれば、これは体積予想とも関連したはずであるが、
上記の通り1つしかないので、結び目の観点からはあまり興味はない。)

2012年9月15日土曜日

サマースクール 復習 その5

* A-多項式
3次元トーリックCalabi-Yau多様体において、
そのmirror curveは対応するMatrix modelのスペクトル曲線であり、
1次元シュレーディンガー方程式のWKB法によるStokes曲線を与えていた。
すなわち、
完全WKB解 析,そ して完全最急降下法
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku1947/55/4/55_4_350/_pdf
にあるように、
シュレディンガー方程式のポテンシャルQ(x)から、
Stokes曲線が得られるが、
一方で、Q(x)は曲線のリーマン面としての一意化を与える関数を与えるものだった。

3次元トーリックCalabi-Yau多様体のスペクトル曲線は2次元トーラス内の曲線なので、
パラメータとしてはトーラス上のパラメータをとったほうが見やすい。
では、結び目を与えて、それに対応する3次元トーリックCalabi-Yau多様体の
mirror curveおよびStokes曲線は何になるのだろうか?

Representation Theory and the A-polynomial of a Knot
http://www.math.ucsb.edu/~long/pubpdf/repnApoly.pdf
Plane Curves Associated to Character Varieties of 3-Manifolds
http://homepages.math.uic.edu/~culler/papers/PlaneCurves/curves.pdf
では、
結び目の管状近傍として得られるソリッドトーラスを取り除き、
境界が2次元トーラスである3次元コンパクト多様体を対応させ、
これに対して、特性多様体と呼ばれるリーマン面と、A-多項式と呼ばれる多項式を対応させている。

結び目補空間が双曲一意化を保つ場合、基本群の作用を見ると2次元射影表現が得られるが。
SL(2)への持ち上げが境界のトーラスの作用によって固定されたものが得られる。
特に、トーラスの基本群の生成元が(同時)対角化されているように基底を選ぶ。

境界トーラスでの表現を対角化条件を保って、3次元空間の基本群の表現に持ち上げる場合、表現空間の体は、
変形の自由度分超越次数が増大し、今の場合は1次元増加する。


A-polynomial, B-model, and Quantization
http://arxiv.org/abs/1108.0002v1

2012年9月14日金曜日

サマースクール 復習 その4

* 結び目に対応するmirror curve

Knots, Mirror Symmetry and Large N Duality
http://wwwth.mpp.mpg.de/members/strings/strings2012/strings_files/program/Talks/Friday/Aganagic.pdf
- 結び目に対して、3次元(非コンパクト)トーリックCalabi-Yau 多様体を対応させることができる。
トーリックCalay-Yau多様体にはmirror curveが対応するので、
結び目に対してリーマン面が結び目不変量として対応する。

- では、Calabi-Yau多様体のミラー対応は、結び目に対してどのような対応をもたらすのか?
コンパクトCalabi-Yau多様体のミラー対応は、SYZ対応によりLarangian fiberの対応になるが、
今の場合は、トーリック非コンパクトなので、fiberはトーラスではなく、退化した
R*R*S1の形になっている。

- トーリックCalabi-Yau多様体のGW不変量はEynardによりSymplectic invariantsを用いて計算できた。
Eynardの計算は、
トーリック多様体を局所的に複素3次元ベクトル空間と思って組み合わせ的に計算できること、
それに対応してmirror curveにpants分解が入り、Lagrangianの情報がpants分解との整合性に落ちること、
に帰着されていた。

- Gopakumar-Vafa 双対性
Gopakumar-VafaによるS^3上のChern-Simons理論と
resolved-conifold上のGW不変量のLarge N双対性
を仮定すると、結び目不変量はLargeN双対性によりresolved conifold上の計算になる。
ここで、NはCSのほうは、SU(N)をゲージ群に取ることで、GWのほうはパラメータtに対応する。

- 実際に幾つかの結び目に対してmirror curveを具体的に計算できる
unknot
trefoil
figure-8
torus-knot

- linkの場合はまだ材料は揃っていない


Large N Duality, Mirror Symmetry, and a Q-deformed A-polynomial for Knots
http://arxiv.org/abs/1204.4709v4

Introduction to the Gopakumar-Vafa Large N Duality
http://arxiv.org/abs/math/0701568v2

2012年9月13日木曜日

サマースクール復習 その3

* Chern-Simons汎関数

Chern-Simonsゲージ理論において、
講義では、作用汎関数が与えられれば後は何とかする、という物理のスタンスが述べられていた。

作用汎関数については、
- 接続1形式に対して値を定める汎関数
- levelと呼ばれる整数パラメータが与えられ
- 変分が消えるところは、平坦曲率
ということが記述されていた。
しかし、作用汎関数自体は天下り的に定義され、
何故、その汎関数が選択されたのか、については明示されていなかった。

Chern-Simons
http://ncatlab.org/nlab/show/Chern-Simons+theory

Classical Chern-Simons theory, Part 1
http://arxiv.org/abs/hep-th/9206021v1


2012年9月12日水曜日

サマースクール復習 その2

結び目は3次元球面に埋め込まれた1次元球面のことであった。
結び目の情報を取得するために、
1. Morse関数を選んで1次元に射影し、critical pointsの位置と指数を記述する。
または、
2. 結び目の1点を固定し、結び目を包む2次元球面に対して、その点と結び目の点を通る直線による射影を行う。
(これは平面射影と同じである。)
という方法が考えられる。

2.のほうは、Lefshetz pencilの手法の類似とみなせる。
0次元球面は2点であり非連結であるから、S1上の2重分岐被覆は、
S1上の0次元球面バンドルで特異点を持つものと思える。
それをblow-upにより引き剥がすことで、
0次元球面、すなわち2点からなる0次元のvanishing cyclesの情報が付加される。
組紐群のKZ方程式による表現の局所モノドロミーからスケイン関係式が出てくることを思い出すと、
強引にLefshetz pencilのモノドロミー表現からスケイン関係式が生じている、
と思えないこともない。
(ただし、スケイン関係式のパラメータがこの場合何を指しているかというと、
モノドロミー表現の固有値ということになるが、
0次元球面だとパラメータを持てないため、その分の自由度をどこかで与える必要がある。)

Q:接バンドルを取ることにより、結び目から、射影直線上のrank2(ベクトル)束が生じるとみなすことができるか?
Q:だとすれば、射影直線上のrank2分岐ベクトル束は結び目の適当な集合の情報を保持していることになる。これはベクトル束と分岐の情報からどのように定まるか?

2012年9月11日火曜日

サマースクール復習 その1


* 内容
ランダム結び目と環状高分子の統計物理
結び目を折れ線近似できる対象として定義して、その不変量を構成する。
結び目多項式を、スケイン関係式を満たす多項式として、
とくにJones多項式を、
組紐群の表現->ヤン-バクスター関係式->マルコフトレースの構成->絡み目不変量の構成
という枠組みの中で説明している。
(さらに背後にあるTemperlay-Lieb代数と6頂点模型についても言及しているが、
これは、
Six-Vertex, Loop and Tiling models: Integrability and Combinatorics
(http://arxiv.org/abs/0901.0665v2)
を参考に理解することとする。)
さらに、結び目の不変量を如何に計算するか、という点で、
結び目ダイアグラム及びそれと同値なガウスダイアグラム、
更に一般的なコードダイアグラム、矢印ダイアグラムを定義し、
Vassiliev不変量を定義している。
その応用として、長さを固定してランダムな移動のもとでどのような結び目が生じるか、
という実験を行なっている。

3次元双曲幾何とクラスター代数
カスプを持つRiemann面に対して、三角形分割をひとつ与えた時、
飾り付きTeichmuller空間にPenner座標が標準的に構成され、
空間を写像類群で割ったTeichmuller空間にFock座標が定義される。
これらは三角形分割のフリップに対してクラスター変換となる。
そこで、擬Anosov写像に対する写像トーラスに完備双曲構造を入れるために、
Fock座標を使用する。
ただし、Fock座標を取るTechmuller空間の点は、
写像トーラスの定義に用いた写像の固定点で、その存在は仮定する。

結び目不変量と量子場の理論
Chern-Simonsゲージ理論を用いて結び目不変量を定義する。
位相的場の理論の公理を適用し、物理的Hilbert空間がこの場合WZW模型の共形ブロックになることを利用し、
とくにトーラスの場合の共形ブロックをアフィンLie環の指標で表す。
さらにトーラスのS変換、T変換に対する指標の変換則を記述し、
分配関数の計算を行なってみる。
S2*S1、およびS3の場合に、Wilsonループ演算子を挿入して計算し、これがJones多項式にFrame因子を除いて一致することを示す。
結び目多項式の背後に、圏化として結び目ホモロジーがあり、その統一理論として、
Triply-gradedホモロジーの存在およびそのPincare多項式としての超多項式が期待される。
これは、弦理論的には、精密化されたChern-Simons理論が与えるTQFTの分配関数となるべきものである。

結び目の量子不変量とその応用
Kauffman bracketを用いて、結び目不変量を定義する。
これは、結び目の射影図の交差の解消をすべて列挙し、
解消後のループの数、解消の様子を用いて、重みを付けて足し合わせたものになる。
状態和を可解格子模型、面模型と関係付けて、量子展開環の表現と結びつける。
自然表現に対応するものがJones多項式で、
有限既約表現に対応するものが、Colored Jones不変量である。
さらに、
3価リボングラフの不変量、4価以上のリボングラフの不変量である横田不変量、および、
3次元多様体の不変量としての、Witten-Reshtihkin-Turaev不変量、Turaef-Viro不変量を定義する。
後者は量子パラメータqが1の冪根の時、すなわち表現に半単純でないものが生じるとき、
前者の不変量に対応する。
また、Turaef-Viro不変量と横田の不変量は離散Fourier変換で移りあう。
結び目補空間の位相不変量である体積について、Kashaevが堆積予想を提出したが、
それについて、modulo 鞍点法で、4面体分割と双曲構造方程式により解釈ができる。
これを厳密に示すために、logarithmic CFTからくる不変量と、qが1の冪根の時生じる半単純でない表現を用いて、
理論構成されることが期待されている。