2012年9月11日火曜日

サマースクール復習 その1


* 内容
ランダム結び目と環状高分子の統計物理
結び目を折れ線近似できる対象として定義して、その不変量を構成する。
結び目多項式を、スケイン関係式を満たす多項式として、
とくにJones多項式を、
組紐群の表現->ヤン-バクスター関係式->マルコフトレースの構成->絡み目不変量の構成
という枠組みの中で説明している。
(さらに背後にあるTemperlay-Lieb代数と6頂点模型についても言及しているが、
これは、
Six-Vertex, Loop and Tiling models: Integrability and Combinatorics
(http://arxiv.org/abs/0901.0665v2)
を参考に理解することとする。)
さらに、結び目の不変量を如何に計算するか、という点で、
結び目ダイアグラム及びそれと同値なガウスダイアグラム、
更に一般的なコードダイアグラム、矢印ダイアグラムを定義し、
Vassiliev不変量を定義している。
その応用として、長さを固定してランダムな移動のもとでどのような結び目が生じるか、
という実験を行なっている。

3次元双曲幾何とクラスター代数
カスプを持つRiemann面に対して、三角形分割をひとつ与えた時、
飾り付きTeichmuller空間にPenner座標が標準的に構成され、
空間を写像類群で割ったTeichmuller空間にFock座標が定義される。
これらは三角形分割のフリップに対してクラスター変換となる。
そこで、擬Anosov写像に対する写像トーラスに完備双曲構造を入れるために、
Fock座標を使用する。
ただし、Fock座標を取るTechmuller空間の点は、
写像トーラスの定義に用いた写像の固定点で、その存在は仮定する。

結び目不変量と量子場の理論
Chern-Simonsゲージ理論を用いて結び目不変量を定義する。
位相的場の理論の公理を適用し、物理的Hilbert空間がこの場合WZW模型の共形ブロックになることを利用し、
とくにトーラスの場合の共形ブロックをアフィンLie環の指標で表す。
さらにトーラスのS変換、T変換に対する指標の変換則を記述し、
分配関数の計算を行なってみる。
S2*S1、およびS3の場合に、Wilsonループ演算子を挿入して計算し、これがJones多項式にFrame因子を除いて一致することを示す。
結び目多項式の背後に、圏化として結び目ホモロジーがあり、その統一理論として、
Triply-gradedホモロジーの存在およびそのPincare多項式としての超多項式が期待される。
これは、弦理論的には、精密化されたChern-Simons理論が与えるTQFTの分配関数となるべきものである。

結び目の量子不変量とその応用
Kauffman bracketを用いて、結び目不変量を定義する。
これは、結び目の射影図の交差の解消をすべて列挙し、
解消後のループの数、解消の様子を用いて、重みを付けて足し合わせたものになる。
状態和を可解格子模型、面模型と関係付けて、量子展開環の表現と結びつける。
自然表現に対応するものがJones多項式で、
有限既約表現に対応するものが、Colored Jones不変量である。
さらに、
3価リボングラフの不変量、4価以上のリボングラフの不変量である横田不変量、および、
3次元多様体の不変量としての、Witten-Reshtihkin-Turaev不変量、Turaef-Viro不変量を定義する。
後者は量子パラメータqが1の冪根の時、すなわち表現に半単純でないものが生じるとき、
前者の不変量に対応する。
また、Turaef-Viro不変量と横田の不変量は離散Fourier変換で移りあう。
結び目補空間の位相不変量である体積について、Kashaevが堆積予想を提出したが、
それについて、modulo 鞍点法で、4面体分割と双曲構造方程式により解釈ができる。
これを厳密に示すために、logarithmic CFTからくる不変量と、qが1の冪根の時生じる半単純でない表現を用いて、
理論構成されることが期待されている。


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