歴史が科学である以前、
その目的は、ある集団における政体、王権の正当化、といったものであった。
神話という形で、祖先の系統の確認と、宇宙観、というものが提示され、
集団が階層化するにつれて、神話は取捨選択され統合された。
文化形態の異なる集団の接触の結果、
集団の統合のための装置として、
さらに普遍的な指導原理が必要となり、
ある地域には古代宗教から有史宗教へと変革を遂げたものもあった。
この変革の結果、歴史は、単なる集団の正当化から脱皮して、
客観的な記述に基づいた、現実世界の共時的、通時的な理解のための方法
として重要視されることとなった。
人間が地球上の他の生物と異なる点は、
事象をシンボル化し、言語を用いて記述することによって、
時間と空間を越えて知識を共有できる、ということである。
社会が継続して知識の集積に努力することは、
それぞれの時点での人間の自己理解に対するささやかな援助となる。
村上氏の書物における、歴史方法論の論点として、
1)共時的分析と通時的分析の相補性の問題
2)通時的変化の自足的単位の問題
3)思想的ないし文化的要因の問題
4)思想の担い手の問題
があげられている。
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