午前五時の船のデッキに人影は殆ど見られなかった。
太陽が水平線から徐々に上がっていき、薄い雲に隠れてしまうと、
船は三宅島へと向かった。
かめりあ丸は八丈島に向かう途中で、三宅島、御蔵島の二つの島に立ち寄る。
だが、天候の関係もあり、場合によっては島の近くを通り過ぎるだけ、ということもある。
だから、この二つの島を目的地としている旅行者は、目的地に無事到着できるか、
船内放送に戦々恐々としているのだった。
三宅島が目前に迫る頃、
船内放送は、三宅島には予定通り到着、御蔵島は天候不順のため立ち寄らず、
と告げた。
デッキには女性が一人、熱心に三宅島の桟橋を眺めていたが、
聞くと、目的地は御蔵島だと言う。
欠航で残念ですね、というと、
午後の便に期待します、とのこと。
かめりあ丸は八丈島に着くと一時間後にすぐに東京に向けて折り返すが、
その際に御蔵島に立ち寄る予定なので、そうしたこともできるのだった。
だが、天候不順が続けばまたも虚しく島を通り過ぎることにもなる。
若いが相当の島マニアのように見受けられた。
御蔵島を過ぎて、鳥の群れもいつの間にか姿を消して、
周囲は見渡す限り水平線。
空と海と雲と太陽だけが存在する世界になった。
この感覚を求めていたのだ、と内心感嘆しながらも、単調な世界にすぐ飽きが来て、
船内に戻り仮眠を取った。
午前9時、船は予定通り八丈島底土港に到着した。
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