八丈島は、二つの火山がくっついたひょうたんの形をしていて、
底土港はひょうたんのすぼまっている部分の東側に位置している。
西側にも港はあり、八重根港というらしい。
海上、風の状態によっては底土港ではなく八重根港にかめりあ丸が寄港することもあるそうだ。
コンクリートを打ち付けて作った岸壁に船は接岸され、
ネクタイを締めた船員が、厳かに港から突き出された通路へのドアを開けた。
港に照りつける太陽は強く、すこし潮気を含んだ空気は東京ほどに湿っぽくはなかった。
八丈島観光協会の人が柔和な態度で上陸した観光客の案内をし、
小さな港ゆえ出口にはホテル、旅館、レンタカーの案内人が送迎に来ていた。
私が予約していた宿泊施設は、小崎荘という民宿で、
あらかじめ下調べをしていたときに
http://www.awaremi-tai.com/aware/aware067-06.htm
の、
「おばあちゃんだけの宿かと思ったが、GW中で宿泊客が多いということもあってお手伝いの女の子がいた。親戚だそうで、聞くと高校生だという。この女の子が凄く純粋で、親切で、感心してしまった。「八丈島で育つと性格が良くなるのかねえ」と聞いてみたら、昨年まで東京に居たんだという。親が実家のくさや工場を継ぐために八丈島に戻ってきたんだと。」
という一文をみて、この民宿に決めたのだった。
こういう女の子が居れば私も八丈島で"伊豆の踊り子"が理解できるかもしれない、
という若干の期待に満ち溢れた選択だった。
実際に迎えに来てくれたのは、案の定おばあさんで、
かなりお年を召した車での出迎えだった。
宿泊中の移動手段としてレンタサイクルを借りようと思っている、
と切り出すと、
体力に自信ある?と挑戦的な返答が返ってきた。
天邪鬼な私は、この挑戦は受けざるを得ない、と、
小崎荘の前にレンタサイクルに寄ってほしい、とお願いした。
レンタサイクルは需要があまりないらしい。
よって値段もかなり強気で、一日2100円となっている。
3泊の私は6300円を払って自転車を借りることになった。
(物の値段に疎い私は、帰京後、近所のスーパーで自転車の値段を見たときに複雑な思いとなってしまった。)
レンタサイクルのおじさん曰く、
「体力に自信ある?マウンテンバイクのほうがいいよね?
ちょっと待って、籠のあるほうがいいか。
でも、籠のあるほうの自転車は変速機は昨日壊れていたのを修理したんだ。
変速がうまくいかないかもしれない。」
と、いろいろ恐ろしい言葉を投げかけてくれた。
もしかすると、自転車の選択は間違いだったのかもしれない、
とうすうす感じながらももはや引き返すことも出来ず、
この自転車を借りて小崎荘へと向かったのだった。
レンタサイクルショップは、三根という、八丈島一番の繁華街にあり、
小崎荘は、メインストリートを南に一直線に下ったところにあった。
途中、釣り船屋、くさや工場、などが散見された。
時刻は12時ちかくになっていたが、
船の中でほとんど睡眠をとっていなかったこともあって、
部屋で仮眠を取りたかった。
小崎荘に辿りついて、玄関で声をかけると、
小学生くらいの子が出てきて、
「お手伝いさんがいるからそっちに声をかけて。」
とのこと。
期待してお手伝いさんを探すと、
年の頃は50代の妙齢のお嬢さんだった。
部屋に案内してもらって、すこし落胆しながら仮眠。
再び起きた時には、もう太陽は西に傾いていて、
部屋に差し込む光は赤みを帯びていた。
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