2008年12月24日水曜日

CFTの変形とSLE

CFTは共形不変な場であって、場の理論としての変形は、共形不変からのずれを意味する。
共形不変な場における局所演算子は、変形された場における離散的な空間上の変数が繰り込まれたもの、ということになる。

An Introduction to the Stochastic Loewner Evolution
http://www.math.duke.edu/~jose/esi.pdf
に、共形不変性について、別の立場から見た解説があった。
ではSLEとCFTとの関係はどうなの?
という素朴な問いかけには、
On Malliavin measures, SLE and CFT
http://arxiv.org/abs/math-ph/0609056
があった。
また、
On Connections of Conformal Field Theory andStochastic Loewner Evolution
http://arxiv.org/PS_cache/math-ph/pdf/0410/0410029v1.pdf
で、背景知識も含めて説明されている。

では、佐藤グラスマン多様体の中でこれらの変形を記述できるだろうか?
この話の有限体上の類似物はあるだろうか?
という疑問が当然わいてくる。

2008年12月15日月曜日

フーリエ変換、戸田模型、幾何学的ラングランズ対応

Griffithsによるlinealization flowsの論文は手に入らないので、
http://www.dima.unige.it/~bartocci/gfabstracts/ge-int.pdf
を参照することにする。
Lax方程式と固有ベクトル写像の関係、さらにJacobian多様体における積分曲線について、
戸田模型を参考にして理解することにする。

http://arxiv.org/PS_cache/math/pdf/0111/0111260v1.pdf
にGiventalの量子コホモロジーのなかで現れたflag varietyと戸田模型の関係が、
affineの場合に説明されている。
これは、幾何学的ラングランズ対応の際に現れたD-module(Hitchinハミルトニアンの量子化として定義される)と量子コホモロジーから定義される量子D-Moduleの対応をmiura対応によって説明している。Guest-Otofujiの方法とあわせて調べてみる必要がある。

さらに、flag varietyについては、Laumonによるコンパクト化がある。これは、幾何学的Eisenstein層のために使用されていたmoduliで、それを
http://arxiv.org/PS_cache/arxiv/pdf/0811/0811.4454v1.pdf
でcologero系と関連付けている。
量子コホモロジー環におけるJ-関数の位置づけを理解する必要がある。

http://arxiv.org/abs/0809.0180
(Local Fourier transform and epsilon factors)
で、Laumonのフーリエ変換を用いてL関数のε因子の計算をしている。
元になるstatinary phaseについての考え方やフーリエ変換の定義に関する論文は、
http://www.numdam.org/numdam-bin/fitem?id=SB_1987-1988__30__105_0
からたどれる、
Transformation de Fourier, constantes d'équations fonctionelles et conjecture de Weil。
Sabbahの本にD-Moduleの場合のlocal-Fourier変換がでていたので、
l-adic層とD-moduleと双方を理解する必要がある。

というのも、localに考えると、Fourie変換はWely-algebraの座標と微分を交換する変換だが、
http://www.math.ucdavis.edu/~mulase/texfiles/spectral2008.pdf
HITCHIN INTEGRABLE SYSTEMS, DEFORMATIONS OFSPECTRAL CURVES, AND KP-TYPE EQUATIONS
のなかで、
"Note that Sato Grassmannians are constructed from pseudo-differential operators. We will show, using Abel's theorem, that the Serre duality is simply the formal adjoint operation on the pseudo-differential operators."
と書かれていたが、擬微分作用素のadjointがSerre dualityなら、フーリエ変換はなんだろう?
と疑問がでるから。
幾何学的ラングランズ対応の枠組みでは、GL(1)の場合にヘッケ固有層を作成するのにFourier-Mukai変換を縦横に使いまくっているようだし、分岐が絡む場合に理解しておく必要があるだろう(E.Frenkelの概説参照)

とくに、これをもとにして、Hitchin hamiltonianで分岐の場合を理解したい。

また、
http://arxiv.org/PS_cache/math/pdf/0602/0602032v2.pdf
(A FUNCTORIAL CONSTRUCTION OFMODULI OF SHEAVES)
には、moduli spaceの埋め込み(theta関数!)をquiverの言葉で実行している。
これとcurveの場合のHiggs場の埋め込みとどう関連するかも面白そうなところ。

Ringel-Hall代数は、三角行列を生成するので、比喩的には、abel圏のRiemann-Hilbert問題をとく1st stepとみなせる。
Segal-Wilsonのグラスマン多様体では、S1上の関数で円盤内で正則、または無限円で正則という形で三角分解しているが、大きな枠組みでアーベル圏のグラスマン多様体をRingel-Hall代数で書き表せるだろうか?
この場合にはYoungタブローはもっと複雑なmoduliのcell decompositionの言葉で記述されることになるだろう。
上記論文はそんな形で理解できないだろうか?

2008年12月8日月曜日

くりこみとEuler系

connesの非可換幾何学とmotivesについての本に、
Bost-Connesシステムの説明があった。
そこでは、ゼータ関数を分配関数とするような量子統計場(あるいはC*環とKMS条件を満たす時間発展の組)
が定義されていた。
定義中に出てくる条件が、スケール変換にみえるので、
くりこみによる不動点が、おそらくアーベル拡大になるのだろう。

Connesの本では、非可換幾何的な対象、すなわちC*環を用いて、等分点からアーベル拡大を具体的に構成する(ManinのReal-Multiplication)という目的が述べられていた。

ここで、当然気になる疑問は、
Euler系(あるいはKolyvagin系)のcompatibilityに関する条件、
は、くりこみにおけるスケール変換とみなせるのでは?
というもの。
繰りこみ変換群によって、最終的に不動点にたどり着く、
すなわち臨界値の詳細がわかる、
という対応を夢想すれば、
例えば岩澤理論やゼータの特殊値の説明に使われるEuler系はすべて、C*環におけるくりこみの条件として説明がつくのではないだろうか?

真面目にやろうとすると、
1)まずは関数体でのC*環をみる
2)Drinfel'dのElliplic-modulesによりC*環を構成する
3)Drinfel'd modular varietyのEuler系を構成する
4)両者の対応を確かめる
5)非可換幾何の対応物が何かを確かめる
6)くりこみに使用するべき理論の摂動に対応するものが何かを確かめる
7)くりこみ理論を関数体の場合に確立する(まずはアーベル、次にGL2、それからboundaryへの極限操作を類推して一般論)

があって、
ここから、数体の場合、あるいはp-adic、Λ-adicな場合の類似を探す、
ということになるのだろうか?

数体の場合は、Gl1,Gl2はともかく、そこから帰納的に作成していくべき非可換幾何の対応物がなさそうなので、どうなるのだろうか?

2008年9月22日月曜日

Loop groups and equations of KdV type
http://www.springerlink.com/content/047h5427q7504rv2/fulltext.pdf

戸田格子模型について、見てみる。
非周期有限戸田格子の場合、
与えられたデータから有理関数をつくり、
その∞でのローラン展開の係数から行列式を作ることで、τ関数が求められる。
τ関数によって、戸田方程式は、自然に線形化される。

周期戸田格子の場合、固有値以外に、補助スペクトルを考慮する必要が在り、
ここで超楕円曲線がでてくる。
τ関数として、この超楕円曲線に付随するθ関数のlog、2回微分がでてくる。

いずれにせよ、Lax形式が最初にあって、スペクトル曲線を考え、そこからτ関数を導出する。
では、τ関数とは何者なのか、
というのが問いで、
これを大きなGrassmann多様体の枠組みで考えよう、
というのが肝心なところらしい。
このあたり、スペクトル曲線上の正則ベクトル束の話と絡んでくるようで、
やっとLanglands理論との接点が見えてくるような気がする。

curvesのmoduliについてはHarer-Zagierの定理があって、moduliのEuler数が計算されている。
これは群論、組み合わせ的な計算に終始しているが、結果はζ(1-2g)が出てくる。
この値は岩沢主予想でもでてくるものであり、
できればつながりがあってほしいと思うのは自然だが、これはあまりにも根拠が貧弱すぎる。

KP->スペクトル曲線と言うつながりで、hyper-elliptic以外に扱いやすい曲線のクラスがでているのだろうか?
genusに関係なく、元の曲線が具体的にわからなくても扱えるクラス、というものがほしいが、
一般型の曲線はスペクトル曲線と言う簡単な式になるわけもない。
何か摂動をいれて、固定点としてスペクトル曲線に移るような流れがmoduli内に構成できると嬉しい。

曲線のクラスを考えるという流れだと、
まずはhyper-ellipticの場合の特徴をつかむ必要があって、
On the Cohomology of Theta Divisors ofHyperelliptic Jacobians
http://arxiv.org/PS_cache/math/pdf/0010/0010006v1.pdf
On Hyperelliptic Abelian Functions of Genus 3
http://arxiv.org/PS_cache/arxiv/pdf/0809/0809.3303v1.pdf
Differential Structure of Abelian Functions
http://arxiv.org/PS_cache/math/pdf/0604/0604267v1.pdf
などが参考になるか?

2008年7月16日水曜日

微分方程式と代数曲線

http://www.math.ucdavis.edu/~mulase/texfiles/nato.pdf
にざっと目を通してみた。

もともとの興味は、微分方程式と固有関数展開、と言う本に
Dubrovin方程式という名前で周期ポテンシャルのスペクトルギャップと超楕円曲線の関係、
とくにテータ関数を用いたポテンシャルの表現、
が載っていて、その意味を知りたかったから。
Kricheverと言う名前が検索すると出てきたのでgoogle先生に聞いてこの論文にたどり着いた。

印象的だったのは、序文の
"Today, I wish I could tell him this result, and ask him about its possiblerelation to number theory."
と言う一文。
久賀さんのガロアの夢は昔読んだことがあって、Picard-Fuchsと言う名前や微分ガロア体という
用語を覚えている。
最近の幾何学的Langlands対応の進展を理解するのに、まずはこの論文を読んでみることからはじめよう。

2008年2月25日月曜日

何故昔の言語は難しかったのか?

言語の使用方法の揺らぎが、
類推による統一、
簡素化、
へと流れていく、
と仮定する。

その言語の場所当りの使用人口が大きければ大きいほど、
揺らぎが大きくなり、
その結果、
速やかに簡素化が進むのではないだろうか?

2chにおける奇妙な使用方法の速やかな定着は、
単一の掲示板という極めて使用密度の濃い環境において
成り立っているものと思われる。

逆に、ラテン語やギリシャ語などは、
少数部族の雑多な使用方法が使用密度の低さから統一されずに、
受け継がれてきたため、
結果として複雑な言語となってしまっていたのではないだろうか?

ここでは、言語の複雑さを、規則から逸脱する例外事項の多さ、説明のつかない機構の多さ、
で測っている。

レトリックと人生

レイコフとジョンソンの「レトリックと人生」
をパラパラと眺めてみる。



形式文法や言語哲学の入門書をパラパラと眺めていても、
そこでなされる形式化と実際に言語を運用する際の意味の伝達
との間に、
かなりの乖離がある。
しなやかで弾力性のある意味伝達を、
自然言語がいかなる経緯によって獲得したのか、
また、
プログラミング言語は、仕様を含めてそのようなしなやかさを獲得できるのか、
という点に興味がわく。

また、
レトリックが一部の特異な使用例から、一般的なイディオムとなって意味の解析がスルーされるようになる機構、
についても、興味がわく。

フランス語の歴史を見てみると、
もともとラテン語には存在しなかった冠詞が、
発音の変化による活用の区別の不明瞭化に伴い、
発達し、
また、主語人称代名詞も同様の理由で発達してきた。
時制については、時間の構造をより精密に捉えるために、
複合時制が発達し、単純過去、前過去といった時制の使用が縮小されていった。
こうした言語の潮流を記述するためには、
使用方法の揺らぎ、
使用される場所の距離による相関、
相転移、
アトラクター、
といった概念をどのように用いることが出来るだろうか?

また、
話し言葉と書き言葉で必然的に異なる変化への抵抗力、
それに伴う上記の言語変化に関するパラメータの遅速、
といった部分を記述するには、
どのようにすればよいのだろうか?

2008年1月29日火曜日

言語のミクロとマクロ

生命の定義に、
- 代謝
- 複製
- 進化
の要件を備えるもの、
というものがある。
代謝と複製があれば、進化は複製の過程で起こるエラーとして実現されるので、
必須の条件は代謝と複製
ということになる。

では、代謝と複製はどのように理解されるのだろうか?
ミクロの立場からは、
分子結合を調べることによって理解され、
マクロの立場からは、
細胞を単位とした集合体の振る舞いを調べることによって理解される。

代謝を理解するうえでの鍵は、電子の授受を基本とするATPによるエネルギーの伝達であり、
複製を理解するうえでの鍵は、アミノ酸を基本とするRNA,DNAによるたんぱく質の複製作業
ということになるだろう。

一方、言語について、
我々は、
どのようにミクロとマクロを設定し、
どのように言語の振る舞いを捉えることが出来るだろうか?
力学系としての言語、言語物理学とでもいうべきものが、
存在するのではないか、
という淡い期待があり、
それを記述する言語は、生物数理と根本を同じとする体系として結実しないだろうか?

言語は、それを語る主体が必要であり、
主体の集合体である同一言語を解する共同体が必要である。
この共同体の中で、言語は、
情報を伝達し、その過程で変容を受ける。
言語の使用には揺らぎがあり、
揺らぎは言語特有の変化に対するポテンシャルの上で増幅され、
共同体の中で受け入れられる変化となる。

言語を支える文法構造は、いわば分子結合や触媒を記述したものであるといえるし、
認知言語学に根ざした意味の把握は、たんぱく質に対応するとでもいえようか。

ただ、生命と言語を比べると、
- 言語には共同体内で簡単にわかるような距離がない
- 言語は、叙法や比喩のように現実に存在しない何者かを想起させる不思議な力がある
という違いがある。
インターネットを介した情報伝達をみるとき、物理的な距離は言語に関しては無意味だということが
理解されよう。
また、代謝におけるATPのような基本単位や、その伝達経路について、
何らかの仮定を置くことは難しいように見える。