2010年10月29日金曜日

サマースクール復習その12

* Shottky double
実直線に含まれる有限個の閉区間の和集合Eに対して、
Ω=C∪{∞}-E
とする。
Ωを二つ(Ω1,Ω2)用意して、境界で張り合わせることにより、
(Shottky double)
リーマン面Rを作ることができる。

Rには、
Shottky doubleから定まるinvolution

実構造から定まるinvolution
の二つの作用がある。

ここで、疑問になるのは、
H(Ω):Ωに対するハーディ空間(p=2としておく)

RのKrichever mapによる佐藤グラスマン多様体における像、
との関係。

* 多重連結領域のτ関数
Integrable Structure of the Dirichlet Boundary Problem in Multiply-Connected Domains
(http://arxiv.org/abs/hep-th/0309010)
には、
多重連結領域に対して、τ関数が定義されていて、
そのlogをとったものをFとおいている。
この記号はpre potentialを想定していて、
Fを用いて、(3.45),(3.46),(3.47)
多重連結領域のグリーン関数、
調和関数、
Rの周期行列
と対応がつく。

この論文では、境界がsmooth Jordan curveとしているが、
上の閉区間の場合に、そのまま適用することは可能だろうか?

少なくとも単連結の場合、
Blashcke積とグリーン関数の関係は、単位円盤への等角写像を用いて
グリーン関数を表すことではっきりする。
多重連結の場合もフックス一意化により、
Finite Gap Jacobi Matrices, I. The Isospectral Torus
(http://arxiv.org/abs/0810.3273)
における
Blashcke積とグリーン関数の関係もわかりやすい。

まずは、おもちゃバージョンのE=[-2,2]の場合から手をつける必要がある。

* Jacobi行列の周期と摂動
Rを二つ用意して、これを2点でnodeとしてくっつけることにより、
特異点を持つリーマン面:R'ができる。
これを摂動して特異点を持たないリーマン面R2をつくると、
R2の種数g2は、Rの種数gを用いて、2*g+1=g2となる。
すなわち、
g2;1=2*(g+1)であり、
これはR,R2をスペクトル曲線に持つJacobi行列、
J,J2の周期の関係である。
そこで、
周期g+1のJacobi行列Jを周期2*(g+1)と思って、
それを摂動することにより、(適当な)J2を得たい。

一番簡単な場合は、2点を伸ばして2つの閉区間にする場合、
すなわち、有理曲線から楕円曲線へ、modulus 1->kとする場合
である。

2010年10月25日月曜日

サマースクール復習その11

* 超楕円曲線上の有理微分形式
-a) Algebro-Geometric Quasi-Periodic Finite-Gap Solutions of the Toda and Kac-van Moerbeke Hierarchies
(http://arxiv.org/abs/solv-int/9705019)
のAppendix A,B,C
-b) Algebro-Geometric Constraints on Solitons with Respect to Quasi-Periodic Backgrounds
(http://arxiv.org/abs/nlin/0606062)
-c) リーマン面上のハーディ族(荷見)
を参照。
一般論として、リーマン面上の1次有理微分形式を、
1st:正則微分形式
2nd:留数が全て零の有理微分形式
3rd:1st,2nd以外
と分類したとき、
1stは、Dirichlet問題を解いて得られる調和関数から、作ることができる。
1次ホモロジー群の標準的な基底(A,B)={A1,..Ag,B1,..Bg}を固定することにより、
A周期に関して正則化することができ、B周期行列が考えられる。

3rdは、2点p,qにおいて、留数がそれぞれ1,-1であるような有理微分形式を作ることができれば、それらの線形和を取ることで留数を消すことができる。
これは、(potential theoretic)Green関数の性質を利用して、log||を引くことによって、2点で、正、負の対数的極を持つ調和関数を作ることができるから、
それから、有理関数を作ることができる。これから3rd微分を構成できる。
2ndは、3rdで構成した微分の正の点に関して偏微分することで、極の位数を上げることにより、構成できる。

超楕円曲線の場合は、a) Appendix Aに具体的に記述がある。

ここで、気になるのは、
1stおよび無限遠点でのみ極を持つ2ndについては、
超楕円曲線の場合、平衡測度dρとして、x^kdρの形、
すなわち、直交多項式の形になっている、ということ。
これから、
Krichever対応を直交多項式の言葉で翻訳できないか?
という疑問がでる。

* Jacobiの楕円関数
楕円関数入門(戸田盛和)参照

2010年10月12日火曜日

サマースクール復習その10

* equilibrium measure
[317] Equilibrium measures and capacities in spectral theory
(http://www.math.caltech.edu/papers/bsimon/p317.pdf)
の、Appendix Aの内容
μ:コンパクトサポート正測度
に対して、
Φ(μ):ポテンシャル
および
ε(μ):Coulombエネルギー
が定義される。

E:複素平面内のコンパクト集合
に対して、
C(E):対数容量
および、
ρ(E):平衡測度
が定義される。
対数容量はBorel集合に対して定義が拡張される。

PropA1:ポテンシャルΦ(μ)はC-supp(μ)で調和
Cで優調和で、下半連続
PropA3:Φ(μ)|supp(μ)が連続ならば、Cで連続
PropA4:C(X)>0ならばX内にサポートを持つ測度でそのポテンシャルがC上連続なものが存在する
CorA5:任意の測度について、ポテンシャルの値が∞の集合は容量0
PropA6:ε(μ)<∞の測度について、C(X)=0ならばμ(X)=0

容量0⇒ハウスドルフ次元0⇒ルベーグ測度0
という関係が成り立つ。
ThA7:共通のコンパクト集合にサポートが含まれる有限測度の弱収束について、
ポテンシャルのlimit infは収束先のポテンシャル以上で、容量0を除き統合が成り立つ
ThA8:Coulombエネルギーはweakly lower semi continuous
ThA9:容量正のコンパクト集合に対して、平衡測度は唯一つ存在し、
ε(ρ(E))=log(1/C(E))
が成り立つ

ThA10:容量正のコンパクト集合Eについて、Ω:(C-E)の∞を含む連結成分
(a)x∈Cについて、Φ(ρ(E))(x)<=log(1/C(E))
(b)x∈Eについて、容量0を除き等号が成り立つ
(c)x∈Ωについて、不等号が成り立つ
(d)supp(ρ(E))⊂∂Ω
(e)Φ(ρ(E))のCでの連続性はsupp(ρ(E))で常に等号が成り立つことと同値
(f)I=(a,b)⊂E⊂Rのとき、ρ(E)|Iはルベーグ測度に関して絶対連続で導関数は実解析的
ThA12:容量正のコンパクト集合Eについて
次数nの多項式の絶対値はΩにおいて、ポテンシャルを用いて上から評価できる

ThA13:E=∪[a_{j},b_{j}] 重ならない実閉区間の有限和のとき、
平衡測度は、超楕円積分になる。
ただし、その際にパラメータが測度のボレル変換の境界条件により定まる。

G(E)(x):Eに対するGreen関数を
G(E)(z):=-Φ(ρ(E))(z)+log(1/C(E))
で定める。
(a) C-Eで調和関数
(b) G(E)(z)-log|z|は∞で調和関数
(c) G(E)|∂Eは容量0を除き0
(d) G(E)(z)>=0 z∈C

E:単位円周のとき、平衡測度はルベーグ測度
G(E)(z)=log|z|
になる。

E=[-2,2]のとき、x(z)=z+1/zとすると、
単位円周上のルベーグ測度は、
(4-x^2)^(-1/2)dx
に移るが、これが平衡測度(定数倍を除く)

そこで、
E=[-1,-k]∪[k,1]
として、これを単位円周からの射影とみなす。
k->0のとき、Eは[-1,1]になる。
k->1のとき、Eは{-1}∪{1}になる。
対応する平衡測度を楕円積分を通して理解しようとすると
Jacobiの楕円関数がでてくる。

2010年10月5日火曜日

サマースクール復習その9

* x(z)=z+(1/z)による引き戻し
I=I_{1}∪I_{2}と二つの閉区間の和の場合に、
平行移動とスケーリングを施して、
I_{1}=[a1=-2,b1=2cos(θ1)], I_{2}=[a2=2cos(θ2),2]
となっている場合を考える。
さらに簡単のために、a2+b1=0の場合、すなわち、θ1+θ2=π
とする。
この場合、x(z)によるIの持ち上げは、
単位円周∂D上を、e(z)=exp(2πi(z))として、
A1_{+}=e([0, θ2])

C1=e([θ2,θ1])

A2_{+}=e([θ1, π])
A2_{-}=e([π, π+θ2])

C2=e([π+θ2,π+θ1])

A1_{-}=e([2π-θ2, 2π])

と分割する。
B1,B2をそれぞれC1,C2の端点を通って、∂Dと直交するD内の円弧、
R=[-1,1]
とする。
円弧四辺形A1_{+},B1,A2_{+},R
で囲まれた部分は、適当な等角変形により、長方形に移る。
円弧四辺形A1_{-},B2,A2_{-},R
も同様である。

区間Iに対する、スペクトル曲線の半分部分のフックス群一意化は、
上記の円弧四辺形で得られる。
だから、実際には、{i,-i}を不動点に持つ、Schottky一意化になる。

円弧四辺形のユークリッド座標系のとり方は、{i-i}にそれぞれ、
電荷1,-1をおいたときの複素ポテンシャルをみて、
等ポテンシャルと流線をみる、
ということに対応する。
実際、円弧四辺形を長方形に移す等角写像は、
U={z|0 < Im(z)<π}
H:上半平面
exp:U->H
w(z)=(z-i)/(z+i):H->D
として、w(exp(z)):U->D
の逆写像を考えればよい。
すなわち、主値を決めて、
p(z)=log((1/i)(z+1)/(z-1)):D->U
によって、写像を定める。
p(0)=(π/2)i
p(-i)=log((1/i)i)=0
p(i)=log((1/i)(-i))=log(-1)=πi
となる。
p(x+yi)=log{(-2y+(x^2+y^2 -1)i)/((x-1)^2+y^2)}
であり、
単位円上の円弧は直線に移る。
円弧B1は、
(x^2+y^2 -1)/2y=constを解いて得られる円周上にあるので、
直線に移る。