2012年11月21日水曜日

サマースクール 復習 その23


Finite volume flows and Morse theory
http://arxiv.org/abs/math/0101268v1

de-Rhamによる、
微分形式を用いたcohomology類の表現と
currentを用いたhomology類の表現があり、
積分によりPoincare dualityが表現される。
(e.g. http://www.math.upenn.edu/~ghrist/EAT/EATchapter6.pdf
http://www-math.mit.edu/~rbm/papers/deRham.11.May.2011.pdf)

コンパクト多様体Xに対して、
時間tをパラメータとするsmooth flow φ_{t}:X->X
が与えられると、これから、
P: φによるt->+∞における極限を対応させるpull-backによる微分形式への写像
を考えることができるが、φがfinite volume flowのときには、これは収束し(Th1.2)、
Pは微分形式からcurrentsへの写像を誘導する。
一方で、
I:微分形式からcurrentsへのinclusion
に対して、
IとPはあるchain mapTを用いてchain homotopicであることが示せる(Th2.3)。
これから、IとPはcohomology上で同じ写像を与えるが、Iはisomorphismを与えるので、
結局Pはcohomology上のisomorphismを与えることになる。

この議論をf:X->Rが実数値Morse関数の時に、
critical setsを安定多様体と不安定多様体に分割して、φを具体的に与えることによって(式(3.2))、
安定多様体からなるcohomologyの生成元と微分の表現を与えることができる。
(Th3.3, Th4.1, Th4.2)

これは、X*Xにおける対角線のresolutionを与えている、と見ることができる。

Boundary values, Fourier-Sato transform and Laplace transform
http://www.math.jussieu.fr/~schapira/respapers/BV.pdf
のLem5.1では、quadratic coneのFourier-Sato変換の計算をしている。

specializationはγ-topologyを入れた実直線上にログ構造を入れて、
その上でghostを見ていることに対応する(はず)。
microlocalizationはspecializationのFourier変換であるが、
実数上ではtempered distributionが必要になる。
標数pにおけるl進層での類似物では、Deligne-LaumonのFrouier変換が存在する。

On algebraic models for morse homotopy and their noncommutative deformations
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~kajiura/msj-kikagaku2006.pdf
An $A_\infty$-structure for lines in a plane
http://arxiv.org/abs/math/0703164v1

実2次元平面内の直線の組みに対してそれで囲まれる多角形を対応させて、
A∞圏を構成している。
ただし、1つの直線のself-intersectionやtransversalでない場合の問題があるので、
微分形式とcurrentsによる別の圏の構成をして、
ホモトピー同値性により、所望の圏を構成する。(Th3.2)
distributionの積は一般には定義されないが、
佐藤超函数と見てmicro supportを確認すれば積が定義できる。
そのため、デルタ関数とstep関数で生成されるDG代数を定義し(Def3.3)、
それを用いてself-intersectionの場合の代数を定義する。(Th3.7)


Homological mirror symmetry and torus fibrations
http://arxiv.org/abs/math/0011041v2

2012年11月12日月曜日

サマースクール 復習 その22

* 熱力学
熱力学の本(田崎)を見てみると、
熱平衡という概念があり、
平衡状態は、
環境という概念と、線形関数である示量変数の概念によって指定される。
環境と示量変数の組が状態空間を定め、状態空間上の関数として、状態量が定まる。
平衡状態に対する操作として、
- 環境を変化させない等温操作
- 環境に変化を許す断熱操作
の2種類がある。
操作に対して不変な式として状態方程式が存在する。

熱力学特有の概念として、
- 最大仕事と呼ばれる示量変数
が存在し、等温操作における仕事は最大仕事に等しい。
最大仕事を用いて、熱力学関数であるHelmholzの自由エネルギーが定まる。
すなわち、断熱操作に対する依存性が記述できる。
Helmholzの自由エネルギーの、
断熱操作の環境のパラメータに対する依存性を記述する示量変数として、
エントロピー、
が定義される。
状態に対する操作は一般に可逆ではなく、非可逆性を表す尺度として、
エントロピーが用いられる。

以上の概念を、もう少し馴染みやすい数学の言葉でアナロジーを作ってみる。
Constructuble sheafという概念があり、
Constructible sheafは、
sheafが定義される空間という概念と、Grothendieck群上の線形関数であるConstructible functionによって(一意ではなく)指定される。
Constructible sheafに対する操作として、
- 空間を変化させずGrothendieckのsix operationを行う
- 空間の変形(A,B-model双方の意味で緩く)
の2種類がある。
操作に対して不変な式として、相対Riemann-Roch(あるいはConstructible shaefに対するindex theorem)が存在する。

空間変形に対する依存性として、障害類の概念が定まる。
また、接続によるliftingにより、断熱操作に対応する状態が定まる。

非可逆性に対する尺度として、"重み"が対応するべきと思われるが、
"重み"は、Constructible sheafを単純層のextenstionで書いた時の矢印の向きを規定するもので、
そのままでは、示量変数とはならない。

* 統計力学
熱力学は、マクロな概念である熱の起源の説明を、ミクロの世界の言葉を使用する統計力学に委ねた。
では、そのアナロジーとして、Constructible sheafをよりミクロな世界の言葉で記述できるか、
という疑問が生じるが、
空間を固定した時に、
その上のConstructible sheafの複体のなすdg圏と
その余接空間をSymplrectic多様体と見た時の深谷圏のtriangulated envelopの圏が、
microlocalizationを通して同値、
ということが成り立つ。(空間はコンパクト実解析的多様体)
深谷圏におけるブレーンの射は擬正則多角形の個数であるから、
これはミクロな言葉で記述されている、と思ってよいだろう。

Constructible Sheaves and the Fukaya Category
http://arxiv.org/abs/math/0604379v4
Microlocal branes are constructible sheaves
http://arxiv.org/abs/math/0612399v4
Fukaya categories as categorical Morse homology
http://arxiv.org/abs/1109.4848v1

Springer theory via the Hitchin fibration
http://arxiv.org/abs/0806.4566v3
l進層およびLaumonのFourier変換の代わりにmicrolocal geometryの言葉を用いる。

* l進層における重み
l進層においては、Weil予想により"重み"は定義されていて、
良い性質を持っている。
http://www.ams.org/journals/bull/2009-46-04/S0273-0979-09-01268-3/S0273-0979-09-01268-3.pdf

Q:l進層において、なんらかのブレーンの深谷圏による記述は存在するか?
- l進層において、microlocalizationにおける特性cycleに対応する概念は存在する

INTRODUCTION TO WILD RAMIFICATION OF SCHEMES AND SHEAVES
http://swc.math.arizona.edu/aws/2012/2012MiedaSaitoNotes.pdf
l 進層の特性類と分岐について
http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~t-saito/jd/ag.pdf

Q:l進層のブレーンによる記述によりKatz-Sarnakの定理の自然な解釈ができるか?

* 混合モチーフの圏
l進層、Hodge加群といった"重み"の存在する圏の親玉に対応するものとして、
混合モチーフの圏がある(だろうと思われている)。
導来圏は構成されている。
Q:もしl進層の導来圏にブレーン解釈が存在するなら、混合モチーフの導来圏にも同様の解釈ができないか?
ただし、
その場合のブレーンに対応するものは、
宇宙際理論によれば、簡単に記述できるものでは無さそうだ。

2012年11月6日火曜日

サマースクール 復習 その21

SERRE-TATE LOCAL MODULI
https://web.math.princeton.edu/~nmk/old/serretatelocmod.pdf

標数pの世界から標数0の世界に持ち上げる、ということを問題にする。
一番簡単な場合は、group schemeであるが、
変形を持たないschemeの場合は面白くない。
そこで、abelian schemeの持ち上げが問題となる。
標数pの完全体k上のabelian schemeと
W(k)上のabelian schemeの比較を行うことが目的となる。

そのために、
Th1.2.1(Serre-Tate)で、
R: pがnilpotentな環
I:Rのイデアル
R0=R/I
に対して、
R上のabelian schemeの圏と、
R0上のabelian scheme + R上のBarsotti-Tate group + R0上でのabelian schemeとBT groupの同型写像のなす圏、
を定義して、両者が圏同値であることを示している。

この圏同値が有効に利用できるのは、標数pの体k上のordinary abelian varietyの場合で、
- dual abelian varietyの存在
- etale partのunique lifting
- troidal partとetale partのdualityによる対応
を用いて、
Th2.1が示される。
すなわち、formal deformation spaceにはformal torusの構造が入り、
W(k)上、その原点に対応するcanonical liftingが存在する。
さらに、
canonical liftingのEndomorphismsはreductionのEndomorphismsとbijectiveになる。

背後にあるのは、複素数体上では、アーベル多様体の複素Lie群の構造から、
1-jet(あるいはAtiyah-class)をとると、
不変微分型式のなすベクトル空間によるextensionが存在し、
Hodge構造によるcohomologyの分解となっている、
そして、それはGauss-Manin connectionに対応している、ということ。
Barsotti-Tate groupの場合は、接続に対応してCrystalが構成でき、
さらにCrystalline cohomologyに入るp進Hodge分解によるFiltration
が対応する。

それを、Kodaira-Spencer mapとして具体的に記述しているのが、
Th3.7.1。
deformation space上のformal abelian schemeの1次元de-Rham cohomology
のHodge分解と、Frobenius写像の持ち上げの作用をみる。


http://math.stanford.edu/~conrad/papers/notes.pdf
12. Applications to p-divisible groups and finite group schemes
Theorem 12.1.5 (Grothendieck-Messing)


"The Crystals Associated to Barsotti-Tate Groups"(Messing)
http://math.arizona.edu/~cais/scans/Messing-The_crystals_associated_to_Barsotti-Tate_groups/5.pdf
では、Appendix Prop3.2,3.3で
ordinary elliptic curveの場合の議論をしている。