2012年11月21日水曜日

サマースクール 復習 その23


Finite volume flows and Morse theory
http://arxiv.org/abs/math/0101268v1

de-Rhamによる、
微分形式を用いたcohomology類の表現と
currentを用いたhomology類の表現があり、
積分によりPoincare dualityが表現される。
(e.g. http://www.math.upenn.edu/~ghrist/EAT/EATchapter6.pdf
http://www-math.mit.edu/~rbm/papers/deRham.11.May.2011.pdf)

コンパクト多様体Xに対して、
時間tをパラメータとするsmooth flow φ_{t}:X->X
が与えられると、これから、
P: φによるt->+∞における極限を対応させるpull-backによる微分形式への写像
を考えることができるが、φがfinite volume flowのときには、これは収束し(Th1.2)、
Pは微分形式からcurrentsへの写像を誘導する。
一方で、
I:微分形式からcurrentsへのinclusion
に対して、
IとPはあるchain mapTを用いてchain homotopicであることが示せる(Th2.3)。
これから、IとPはcohomology上で同じ写像を与えるが、Iはisomorphismを与えるので、
結局Pはcohomology上のisomorphismを与えることになる。

この議論をf:X->Rが実数値Morse関数の時に、
critical setsを安定多様体と不安定多様体に分割して、φを具体的に与えることによって(式(3.2))、
安定多様体からなるcohomologyの生成元と微分の表現を与えることができる。
(Th3.3, Th4.1, Th4.2)

これは、X*Xにおける対角線のresolutionを与えている、と見ることができる。

Boundary values, Fourier-Sato transform and Laplace transform
http://www.math.jussieu.fr/~schapira/respapers/BV.pdf
のLem5.1では、quadratic coneのFourier-Sato変換の計算をしている。

specializationはγ-topologyを入れた実直線上にログ構造を入れて、
その上でghostを見ていることに対応する(はず)。
microlocalizationはspecializationのFourier変換であるが、
実数上ではtempered distributionが必要になる。
標数pにおけるl進層での類似物では、Deligne-LaumonのFrouier変換が存在する。

On algebraic models for morse homotopy and their noncommutative deformations
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~kajiura/msj-kikagaku2006.pdf
An $A_\infty$-structure for lines in a plane
http://arxiv.org/abs/math/0703164v1

実2次元平面内の直線の組みに対してそれで囲まれる多角形を対応させて、
A∞圏を構成している。
ただし、1つの直線のself-intersectionやtransversalでない場合の問題があるので、
微分形式とcurrentsによる別の圏の構成をして、
ホモトピー同値性により、所望の圏を構成する。(Th3.2)
distributionの積は一般には定義されないが、
佐藤超函数と見てmicro supportを確認すれば積が定義できる。
そのため、デルタ関数とstep関数で生成されるDG代数を定義し(Def3.3)、
それを用いてself-intersectionの場合の代数を定義する。(Th3.7)


Homological mirror symmetry and torus fibrations
http://arxiv.org/abs/math/0011041v2

2012年11月12日月曜日

サマースクール 復習 その22

* 熱力学
熱力学の本(田崎)を見てみると、
熱平衡という概念があり、
平衡状態は、
環境という概念と、線形関数である示量変数の概念によって指定される。
環境と示量変数の組が状態空間を定め、状態空間上の関数として、状態量が定まる。
平衡状態に対する操作として、
- 環境を変化させない等温操作
- 環境に変化を許す断熱操作
の2種類がある。
操作に対して不変な式として状態方程式が存在する。

熱力学特有の概念として、
- 最大仕事と呼ばれる示量変数
が存在し、等温操作における仕事は最大仕事に等しい。
最大仕事を用いて、熱力学関数であるHelmholzの自由エネルギーが定まる。
すなわち、断熱操作に対する依存性が記述できる。
Helmholzの自由エネルギーの、
断熱操作の環境のパラメータに対する依存性を記述する示量変数として、
エントロピー、
が定義される。
状態に対する操作は一般に可逆ではなく、非可逆性を表す尺度として、
エントロピーが用いられる。

以上の概念を、もう少し馴染みやすい数学の言葉でアナロジーを作ってみる。
Constructuble sheafという概念があり、
Constructible sheafは、
sheafが定義される空間という概念と、Grothendieck群上の線形関数であるConstructible functionによって(一意ではなく)指定される。
Constructible sheafに対する操作として、
- 空間を変化させずGrothendieckのsix operationを行う
- 空間の変形(A,B-model双方の意味で緩く)
の2種類がある。
操作に対して不変な式として、相対Riemann-Roch(あるいはConstructible shaefに対するindex theorem)が存在する。

空間変形に対する依存性として、障害類の概念が定まる。
また、接続によるliftingにより、断熱操作に対応する状態が定まる。

非可逆性に対する尺度として、"重み"が対応するべきと思われるが、
"重み"は、Constructible sheafを単純層のextenstionで書いた時の矢印の向きを規定するもので、
そのままでは、示量変数とはならない。

* 統計力学
熱力学は、マクロな概念である熱の起源の説明を、ミクロの世界の言葉を使用する統計力学に委ねた。
では、そのアナロジーとして、Constructible sheafをよりミクロな世界の言葉で記述できるか、
という疑問が生じるが、
空間を固定した時に、
その上のConstructible sheafの複体のなすdg圏と
その余接空間をSymplrectic多様体と見た時の深谷圏のtriangulated envelopの圏が、
microlocalizationを通して同値、
ということが成り立つ。(空間はコンパクト実解析的多様体)
深谷圏におけるブレーンの射は擬正則多角形の個数であるから、
これはミクロな言葉で記述されている、と思ってよいだろう。

Constructible Sheaves and the Fukaya Category
http://arxiv.org/abs/math/0604379v4
Microlocal branes are constructible sheaves
http://arxiv.org/abs/math/0612399v4
Fukaya categories as categorical Morse homology
http://arxiv.org/abs/1109.4848v1

Springer theory via the Hitchin fibration
http://arxiv.org/abs/0806.4566v3
l進層およびLaumonのFourier変換の代わりにmicrolocal geometryの言葉を用いる。

* l進層における重み
l進層においては、Weil予想により"重み"は定義されていて、
良い性質を持っている。
http://www.ams.org/journals/bull/2009-46-04/S0273-0979-09-01268-3/S0273-0979-09-01268-3.pdf

Q:l進層において、なんらかのブレーンの深谷圏による記述は存在するか?
- l進層において、microlocalizationにおける特性cycleに対応する概念は存在する

INTRODUCTION TO WILD RAMIFICATION OF SCHEMES AND SHEAVES
http://swc.math.arizona.edu/aws/2012/2012MiedaSaitoNotes.pdf
l 進層の特性類と分岐について
http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~t-saito/jd/ag.pdf

Q:l進層のブレーンによる記述によりKatz-Sarnakの定理の自然な解釈ができるか?

* 混合モチーフの圏
l進層、Hodge加群といった"重み"の存在する圏の親玉に対応するものとして、
混合モチーフの圏がある(だろうと思われている)。
導来圏は構成されている。
Q:もしl進層の導来圏にブレーン解釈が存在するなら、混合モチーフの導来圏にも同様の解釈ができないか?
ただし、
その場合のブレーンに対応するものは、
宇宙際理論によれば、簡単に記述できるものでは無さそうだ。

2012年11月6日火曜日

サマースクール 復習 その21

SERRE-TATE LOCAL MODULI
https://web.math.princeton.edu/~nmk/old/serretatelocmod.pdf

標数pの世界から標数0の世界に持ち上げる、ということを問題にする。
一番簡単な場合は、group schemeであるが、
変形を持たないschemeの場合は面白くない。
そこで、abelian schemeの持ち上げが問題となる。
標数pの完全体k上のabelian schemeと
W(k)上のabelian schemeの比較を行うことが目的となる。

そのために、
Th1.2.1(Serre-Tate)で、
R: pがnilpotentな環
I:Rのイデアル
R0=R/I
に対して、
R上のabelian schemeの圏と、
R0上のabelian scheme + R上のBarsotti-Tate group + R0上でのabelian schemeとBT groupの同型写像のなす圏、
を定義して、両者が圏同値であることを示している。

この圏同値が有効に利用できるのは、標数pの体k上のordinary abelian varietyの場合で、
- dual abelian varietyの存在
- etale partのunique lifting
- troidal partとetale partのdualityによる対応
を用いて、
Th2.1が示される。
すなわち、formal deformation spaceにはformal torusの構造が入り、
W(k)上、その原点に対応するcanonical liftingが存在する。
さらに、
canonical liftingのEndomorphismsはreductionのEndomorphismsとbijectiveになる。

背後にあるのは、複素数体上では、アーベル多様体の複素Lie群の構造から、
1-jet(あるいはAtiyah-class)をとると、
不変微分型式のなすベクトル空間によるextensionが存在し、
Hodge構造によるcohomologyの分解となっている、
そして、それはGauss-Manin connectionに対応している、ということ。
Barsotti-Tate groupの場合は、接続に対応してCrystalが構成でき、
さらにCrystalline cohomologyに入るp進Hodge分解によるFiltration
が対応する。

それを、Kodaira-Spencer mapとして具体的に記述しているのが、
Th3.7.1。
deformation space上のformal abelian schemeの1次元de-Rham cohomology
のHodge分解と、Frobenius写像の持ち上げの作用をみる。


http://math.stanford.edu/~conrad/papers/notes.pdf
12. Applications to p-divisible groups and finite group schemes
Theorem 12.1.5 (Grothendieck-Messing)


"The Crystals Associated to Barsotti-Tate Groups"(Messing)
http://math.arizona.edu/~cais/scans/Messing-The_crystals_associated_to_Barsotti-Tate_groups/5.pdf
では、Appendix Prop3.2,3.3で
ordinary elliptic curveの場合の議論をしている。

2012年10月26日金曜日

サマースクール 復習 その20

Tropical geometry and mirror symmetry
http://www.math.ucsd.edu/~mgross/kansas.pdf
toric Fano varietyのB-modelはlangau-Ginzburg modelで、
ここにtwisted de-Rham complexが現れる。

- tropical world
- log world
- classical world
のつなぎ方を説明している。

* 以下極めていい加減な妄想
tropical worldからclassical worldへ行く道とは別に、
tropical worldからBerkovich空間へ行く道もある。
そこで、
Berkovich空間からの写像に持ち上げようとすると、難点が生じる。
すなわち、
Mumford curveのようなtotally degenereteの場合以外は、
そのままでは良い幾何的対象がない、
ということ。
これは、
A-modelの定義で、
stable mapを定義する際に概複素構造を用いて、モジュライ空間をコンパクトにして写像の存在を示す、
ということと同等のことを行う必要がある、
ということになる。

代数曲線に関するGrothendieck予想 --- p進幾何の視点から
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/Daisuukyokusen%20ni%20kansuru%20Grothendieck%20yosou%20-%20p-shin%20kika%20no%20shiten%20kara%20(Tsudajuku%20genkou%201998-10).pdf
では、
p進Hodge理論を用いて、擬似的に一位化を構成している。
複素構造に対応するものが、Hodge分解であり、p進Hodge理論の使える拡大体の上で、
有理点の収束定理を証明している。(D. 主定理の証明)

SEMI-GRAPHS OF ANABELIOIDS
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/Semi-graphs%20of%20Anabelioids.pdf
では、
tempered 基本群によるGalois圏を頂点に乗せて、群作用付き(無向)グラフの圏(anabelioid)を構成している。
このanabelioidの言葉を用いて、special fiberのdual graphから圏を構成できる。

Anabelioidの幾何学とp進Teichmuller理論
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/Anabelioid%20no%20kikagaku%20to%20Teichmuller%20riron%20(Muroran%202002-08).pdf
では、
定理3で、圏同値から元の代数曲線が復元されることをcanonical liftingの言葉で言っている。

Anabelian Geometry in the Hodge-Arakelov Theory of Elliptic Curves
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/Anabelian%20Geometry%20in%20the%20Hodge-Arakelov%20Theory%20of%20Elliptic%20Curves%20(Kokyuroku%202002).pdf
複素構造の積分可能性に対応する概念は、anabelioidを標識を固定してつないでいく、
ということに対応すると思える。
その標識を作るのに、Tate curveを利用する。

これらから、連想されるのは、IUTとは概複素構造のGalois版、いわば、概Galois構造ともよぶべきものだろう、
というもの。
ここで、代数曲線からの写像ではなく、数体を用いるために、
p進teichmuller空間においてのindigenous bundleの代わりをするのが、1点穴あき楕円曲線になる。


シンプレクティック幾何学の圧縮不能性定理が擬正則曲線の存在によって示される(シンプレクティック幾何学(深谷)定理2.108)
のと同様に、ABC予想が示されるのであれば、まさしく最初の応用、というのに適切なのだろう。


2012年10月21日日曜日

サマースクール 復習 その19

* The Calylay method

"Discriminants, Resultants, and Multidimensional Determinants"(GKZ)において,射影空間内の超平面Xに対して、そのprojective dualの定義方程式が、
X-discriminantΔ_{X}であることを示すのに、
1. Δ_{X}(f)=0が、Koszul complexのexactnessが(degree 0で)破れることと同値であることを示し、
2. そのcomplexをdeterminant complexの計算で置き換える、
という手順を踏む。(Ch2)
1.で使用されるのが、
Cor2.1.5のjet bundleとそのdualによるresolutionであり、
Th2.2.5の両者をつなぐ式だった。
Th2.2.5の根拠は、
incidence variety、およびそのleft resolutionのdual complexの定めるline bundleによる、
Hecke対応の記述だった。
2.で使用されるのが、Th2.5.2における計算だった。

それを利用して、Principal A-Determinantの分解を組み合わせ的に記述する。(Ch10)
V:vector space V^{*}:dual of V
として、
射影的トーリック多様体Xとそのaffine coneYは、
V^{*}-{0}->P(V^{*})というGm作用の軌道を取る写像を
Y-{0}->X
に制限することで得られる。これは、
A: Xを定める有限集合 
S: A*{1}と{0}の和
として、Sの元の重みをAの元の重みを1と定めることに対応する。
また、Sの元はrank kの自由アーベル群を生成するとする。(Aはrank k-1の自由アーベル群を生成する)
YはSpec C[S]の形で表され、トーラス作用としてk次元の開軌道Y0を持つ。
また、Yは唯一の0次元軌道を持つ。(affine空間の{0}に対応)(Prop5.3.5)

Q=convex hull(A)のfaceΓとYのトーラス軌道Y0(Γ)は一対一に対応する。
y∈Y0(Γ)の近傍は、Spec(C[S/Γ])*Y0(Γ)の有限個のbranchの和と局所的に表される。(Th5.3.6)

YのY-Y0に関するlogarithmic de Rham complexは、
1: j:Y0->YをembeddingとしてY0上の定数層のjによるdirect image
2. トーラス軌道の近傍の構造による分解
の2つの記述(modulo quasi-iso)がある。

2.の構造の記述のためにCh9で、
トーラスHに対し、その指標格子の上の離散ベクトル場による微分型式の表現(Prop9.2.2)
affine トーリック多様体に対し、理三ベクトル場によるDanilov i-formsの定義と微分形式の表現(Th9.2.5)
discriminant complexのgraded vector spaceによる置き換え(Th9.2.6)
があり、
これから、Prop10.1.1による記述と、そのprime factorization Cor10.2.5が出る。

Cor10.2.5におけるmultiplicityの計算に、
上記の1.の記述を用いる。
VとV^{*}の直積は、V,V^{*}のcotangent bundleと見なせるので、
トーラス軌道のconormal bundleの閉包はLagrangianになる。
これが、1.のcharacteristic cycleによる分解に現れる。(Th10.2.11)
Th10.2.15でcharacteristic cycleの重複度と上記のprime factorizationの重複度の対応がつく。

* モチーフ
Principal A-Determinantの分解は、

log-differential complexを用いて、
特性多様体の分解とEuler数を計算すること、
を基礎に置いていた。
ここで、Euler数を取る前の特性多様体の情報を保持したままで話を進めようとすると、
モチーフによる記述が妥当と思われる。
モチーフのBetti realizationには重みが存在するから、
重みの情報を用いることにより、Euler数よりも多くの情報を得ることができるはずである。

* 相対化
Q:トーラス退化の場合に、上記の話が相対化できるのか?
tropical vertexと関係はあるのか?
The tropical vertex
http://arxiv.org/abs/0902.0779v2

* crystalline
トーリック多様体は、整数環上でも定義できて、
判別式の部分に整数が出てこない。
Q:整数環上で相対化して退化を記述した場合に、
logarithmic differential formsの記述、
Riemann-Hilbert対応の記述に、
crystalline cohomologyが有効利用できるか?

On the crystalline period map
http://arxiv.org/abs/1111.3316v2

p-adic derived de Rham cohomology
http://arxiv.org/abs/1204.6560v1






2012年10月12日金曜日

サマースクール 復習 その18

*非可換DT
Non-commutative Donaldson-Thomas theory and the conifold
http://arxiv.org/abs/0705.3419v3
Quiver with potentialからJacobi環の表現のmoduli空間を構成したいが、
とくに、cyclic modlueの場合をみる。
- path algebraのレベルでcyclicな場合はmoduliを構成できる(lem1.2.1)
- Jacobi環のframed cyclic moduleのfine moduliを構成できて、path algebraのレベルのmoduli(smooth)に埋め込める
(Prop1.2.2)
- さらにmoduliの各点での接空間をイデアルと加群で記述できる(Cor1.2.3)
- moduliはsymmetric perfect obstruction theoryを持つ(Th1.3.1)
path algebraのレベルのmoduliがsmoothで、
moduliはその中でのexact 1-formのzero locusとして記述できるので、
obsutruction theoryを持つ。

- 3次元Calabi-Yau代数の表現について、
射影加群の有限余次元有限生成部分加群と有限次元cyclic加群
の間に対応がある。(Prop1.4.1)

- 具体的にnon-commutative conifoldの場合を扱う
Q: 2点と4つの辺からなるquiver
W: potential
A: Jacobi環
R=Z(A):Aの中心
とすると、RはGL(2)のdeterminant locusと同型。
Z=Spec(R)はsingularだが、そのcrepant resolutionとして、
X:可換(resolved conifold)
X+:可換(Xのflop)
A:非可換
が存在する。(Figure 8)
- framed cyclic moduleのfine moduliには、2次元トーラスの作用が入る
トーラス作用の重みを固定して、
pyramid partitionとmoduliのトーラス作用の固定点に一対一対応がある(Prop2.5.1)
- DT-invariantの計算に必要になる接空間の次元のparityは、path algebraのレベルのmoduliのpaityと同一
(lem2.5.2)
- Aの非可換分配関数がpyramid partitionを用いて計算できる(Th2.7.1)
さらに無限積展開が具体的に計算できる(Th2.7.2)

2012年10月10日水曜日

サマースクール 復習 その17

Poisson properties of cluster algebras

http://www.math.jussieu.fr/~bbertrand/gtaa/school2012/ParisApril2012-Day3.pdf
extended cluster variablesに対するlog canonicalなPoisson構造の入れ方は、
τ座標を用いることにより、具体的に表すことができる。
cluster variablesとcompatibileな2-formを用いて表すこともできる。
Cluster algebraに対して、それをcoordinate ringとするvarietyと
その良いsub varietyであるCluster manifold(+2-form)を対応させる。
- A-cluster algebraとX-algebraという形で、cluster variablesとτ座標が対応する。
- Grassmann多様体に対して、cluster構造を入れることができる。
G(2,4)の場合は、a,cをcluster variables, b,d,ad-bcをfrozen variablesにして、
{a,b,d,ad-bc}<->{c,b,d,ad-bc}
の2つのclusterになる。
これは、4=3+1でA1型に対応するので、Weyl群がS2であることに対応する。

- cluster manifoldはnonsigular
cluster manifoldは各cluster毎に、
cluster変数から生成されるトーラスと、frozen variablesから生成されるaffine空間、
の直積をcexchange relationsで貼りあわせて得られるvariety。
よって、nonsingular。
さらに、log canonical w.r.t extended cluster variablesとなるPoisson構造が入る。
- local toric action
各cluster毎に、
cluster monomialsに対して、重みを付けてトーラス作用を与えることができる。
全てのclusterに対するトーラス作用がcompatibleで貼り合わせることができるとき、
cluster manifoldにトーラス作用が入り、そのregular locusを定義できる。
- regular locusの連結成分の個数
regular locusはcluster manifoldにおけるPoisoon構造のleavesに分割されるが、
とくに、generic leavesで分割される。
regular locusの連結成分の個数は、cluster algebraを定める反対称行列のmod2作用から
計算できる。

- cluster A-manifold, cluster X-manifold
cluster manifoldに対して、log canonicalなPoisson構造を与え対応する2-formをΩとする。
Ker(Ω)のgeneric filberは次元がrank(B)のsmooth manifoldになり、
Ωのpush forwardによりsymplectic型式が入る。

- cluster algebra with coefficients
tropical semifieldの元を係数に持つcluster algebra。

Cluster algebras and Poisson geometry
http://arxiv.org/abs/math/0208033v2


* Planar network
http://www.math.jussieu.fr/~bbertrand/gtaa/school2012/Paris2012-Day4_no_pause.pdf
- GL(n)にはSklyanin bracketにより標準的なPoisson-Lie構造が入る
- Coxeter Double Bruhat cell
A型の場合、2つのpermutation(u,v)に対して、Sklyanin bracketに対するPoisson manifoldが定まる。
Jacobi行列は、u=v^(-1)が一番長いpermutationの場合。
GL(n)は上三角行列、対角行列、下三角行列に分解でき、
それぞれを更に、Ga,Gmに対応する1-parameter群の元に分解することができる。
とくに、double Bruhat cell G^{u,v}は、
l(u)+l(v)+n次元のベクトル空間と双有理同値で、具体的に記述できる。

- Rn:Q/Pの形の互いに素な多項式からなる分数で、P(0)!=0, deg(Q)Rn
という写像(Moser map)を経由するが、これに対して、
Toda階層に類似の可積分系の存在、
Moser mapの逆写像
が存在するかどうかが問題になる。

G^{u,v}/H->Wn->Rn->(C*)^{2n}->G^{u,v}/H
が恒等写像になるように、
m:G^{u,v}/H->Wn
x:Rn->(C*)^{2n}
ρ:C*)^{2n}->G^{u,v}/H
を定めることができる。({u,v}に依存する。)

- A:cluster algebra
(u,v)に寄らないcluster algebraで、stable(frozen) variablesによる局所化がRnになるもの、
が存在する。
さらに、上の写像xの{u,v}の依存に対する変換は、Aにおけるcluster transformationの積で表される。


Generalized Bäcklund-Darboux transformations for Coxeter-Toda flows from a cluster algebra perspective
http://arxiv.org/abs/0906.1364v4

KP solitons and total positivity for the Grassmannian
http://arxiv.org/abs/1106.0023v1

2012年10月4日木曜日

サマースクール 復習 その16

Poisson properties of cluster algebras

http://www.math.jussieu.fr/~bbertrand/gtaa/school2012/ParisApril2012-Day1.pdf

A型の戸田格子模型は、3重対角行列に対してLax pairを構成することができる。
Hamiltonianと可換な値をrank分取ってくることができ、完全積分可能。
実際に3重対角行列をresolventのTraceからなる値を用いて分解することができる。(20/1)
代数群にPoisson構造が入り、群構造と両立する場合、Poisson-Lie構造と呼ぶ。
SL2のBorel部分群にPoisson-Lie構造を入れることができる。
これは、Gm*Gaとみて入れる。
SL2のGauss分解を用いて、SL2にもPoisson-Lie構造を入れることができる。
さらに、SL(n)へSL(2)の積から写像があるので、それを用いてSL(n)にPoisson-Lie構造を入れることができる。
Poisson-Lie構造はR-matrixからも定義することができる。
http://www.math.jussieu.fr/~bbertrand/gtaa/school2012/ParisApril2012-Day2.pdf
実数値n*n行列の全ての小行列式が正であるとき、Totally positiveと呼ぶ。
実際には、n^2個の小行列式の組が正であれば他の全ての小行列式は正になる。
さらに、異なる組の中に属する小行列式に対して関係式が存在する。
これらを扱うために、Cluster algebra of geometric typeが定義される。
グラフの頂点ごとに、
- frozen variables
- cluster variables
- extended cluster variables
が定まり、frozen variablesは変化せず、
cluster variables, extended cluster variablesはCluster transformationの式を満たして変化する。
そして、初期種子を与えて、cluster variablesで生成される代数をcluster algebraと呼ぶ。
cluster variablesは初期種子のLaurent多項式で表される。
よって、初期種子のPoisson括弧を決めることでCluster algebraにPoisson構造を入れることができる。
特にlog canonicalなPoisson構造を入れることができ、
これはcluster variablesに対して整数値反対称行列を対応させることになる。

2012年9月29日土曜日

サマースクール 復習 その15

* DG category

スキームにおいては、
- 空間の位相と層の位相の分離、とくに局所環付き空間の概念
- 関手の概念による相対化
- 部分空間の層による書き換え
- 有限性を制御する射の固有性および層の連接性の概念
に加えて、
- 垂直方向の矢印によるファイバーの概念の視覚化
- 水平方向の矢印による空間の包含関係の視覚化
- 斜め方向の矢印による平滑というファイバーと部分空間の絡む概念の視覚化
が成功していた。
そして、
- Kahler微分の存在
- Serre双対性
- 6つの関手およびその導来関手
により、多様体で成り立っていた多くの性質、
- Poincare duality
- 交差理論とRiemann-Rochの定理
が成り立つことが示されていた。
スキームの概念を拡張して非可換な対象を扱えるようにしたい場合にも、
上記の概念が拡張できなければそれほど有用ではないだろう。


On differential graded categories
http://www.math.jussieu.fr/~keller/publ/OnDGCat.pdf
空間に対し圏を対応させるという思想では、
スキームに対しその上の連接層のなすアーベル圏を対応させることができる。
しかし、導来同値な空間の性質を調べたい、という動機のもと、三角圏の圏の性質を調べたい。
- テンソル積、内部Homの存在
- 関手性
の問題があるので、DG圏を用いる。
DG圏の圏はテンソル積で閉じている。
DG圏を係数とするDG加群が定義できる。
DG加群の擬同型が定義でき、局所化を行うことができ、三角圏になる。
perfect DG導来圏という充満部分圏が定義でき、三角圏になる。
DG圏に米田関手がH^{0}とperfectDG導来圏の同値性を導くという形でsaturatedの概念が定義できる。

非可換スキームの圏NCSはDG圏のDG圏dgcatを局所化することで定義される。
NCSの対象はsaturated DG圏である。
NCSはQuillenの意味でのモデル圏の構造が入り、テンソル圏になる。
NCSには内部Homが存在する。
NCSにおいて、対象の充満DG部分圏による商が定義できる。
NCSにおける連続写像の概念が定義でき、(良い)スキームから来る場合は向井変換でかける。

DG圏に対して、Hochshild homologyが定義できる。
NCSにおいて、cyclic homologyが定義できる。
DG圏には固有性、平滑性の定義が存在する。


Model Categories and Simplicial Methods
http://arxiv.org/abs/math/0609537v2
- 斜め方向の矢印の概念を抽象化
- 局所化の概念を抽象化
- 導来関手をQuillen関手を用いて記述できるように概念化
したものがモデル圏。

2012年9月25日火曜日

サマースクール 復習 その14

* Riemann-Roch
三角圏に安定性条件を入れて、条件を固定するごとに様々なアーベル圏が出てくるとすると、
その内の一つがたまたま代数多様体の連接層のなすアーベル圏であった場合、
そこで使用出来るRiemann-Rochの定理のような公式は、
他のt-構造からアーベル圏を構成した際にどの程度反映されるものなのだろうか?
たとえば、Calabi-Yau圏に対して、Quiver with potentialから定まるアーベル圏が
t-構造のcoreとして取られた場合に、
- Riemann-Rochの定理は存在するのか?
- 接バンドル、余接バンドルに対応する対象は何か?
- 特性類が存在するコホモロジーは何か?
- とくにEuler数はどのような特性類を用いて与えられるのか?
- Todd類はどのように特徴づけられるか?
といった点が疑問になってくる。

Lectures on D-modules
http://www.math.columbia.edu/~scautis/dmodules/ginzburg.pdf

2.6. Application: Riemann-Roch Theorem for curves.
において、Atiyah代数を用いて記述をしている。

The Atiyah class, Hochschild cohomology and the Riemann-Roch theorem
http://arxiv.org/abs/math/0610553v3
平滑(固有)代数多様体において、
余接バンドルのAtiyah類から、接バンドルにLie代数の構造が入る。(Prop1)
Hochshild cochain complexに接バンドルのLie代数の構造と整合する積構造が入り、(Th1)
(アフィンの場合はHochshild-Kostant-Rosenberg同型により)接バンドルの外積代数とcochain complexは同型となる。(Prop2)
Serre-dualityの存在とcanonical extentionの存在。(Th3)
Chern指標の定義(Def5)
Todd類の定義(Prop6)
Riemann-Roch(Th4)
が示されている。

Hirzebruch-Riemann-Roch theorem for DG algebras
http://arxiv.org/abs/0710.1937v3
DG代数に対して、PerfectDG加群の圏を定義する。
DG圏に対して、Hochshild chain complexおよびHochshild homologyを定義する。
DG代数のDG加群の圏とPerfectDG加群の圏はQuasi iso。(Th2.6)
bimoduleによるテンソル積のPerfectonessに関する関手性(Cor2.3, Prop2.4)
複体のレベルでのKunneth Quasi-iso(Th2.8)
Euler characterの定義(3.1)
Trace射の定義(Prop3.3)
テンソル積のEuler数をEuler characterのpairingで表示(Th3.5)
なお、ここではTodd類は現れていない。

A variant of the Mukai pairing via deformation quantization
http://arxiv.org/abs/1103.5312v1

2012年9月24日月曜日

サマースクール 復習 その13

* Calabi-Yau代数

Calabi-Yau algebras
http://arxiv.org/abs/math/0612139v3

多様体上の関数に対して、そのcritical pointsは、
余接空間上の2つのLagrangian、0-sectionと関数の微分のグラフ、
の交わりとなるので、genericには次元は0となる。
そのため、numericalな値が定義できる。
Counting invariants for Calabi-Yau threefolds
http://www.math.ubc.ca/~behrend/talks/edmonton11.pdf
にあるように、
3次元Calabi-Yau多様体上の安定層(イデアル層)のモジュライ空間が平滑な場合には、
モジュライ空間上のEuler類の積分として、Gauss-Bonnet-Chernの定理からEuler数が不変量として出てくるが、
これは、Poincare-Hopfの定理より、関数の微分として出てくるベクトル場が有限個の横断的な零点を持っている場合、
零点におけるベクトル場の向きを考慮に入れた足しあわせたものだった。
実際には、モジュライ空間はほとんど平滑にならないので、平滑な空間に埋め込んで、
特異な場合にも成り立つGauss-Bonnetの定理を利用して不変量が定義される。
ここで、特異な場合のGauss-Bonnetの定理の成り立つ根拠は、
Donaldson-Thomas invariants via microlocal geometry
http://arxiv.org/abs/math/0507523v2
にあるようにSymmetric Obstruction Theoryの存在だった。

さて、3次元Calabi-Yau圏として、3次元Calabi−Yau多様体の性質を抜きだして、
DT-invariantsが定義できるような圏を構成したい。
特に有限次元代数の加群の圏として非可換代数から構成したい。
その典型例として、
自由代数にポテンシャル関数を与えて、そのJacobi環として定義される代数、
がある。
この代数は、
- dg代数によるresolutionを持つ。とくに3次元Calabi-Yau代数の場合にQuasi-isoになる。(Th5.3.1)
- contangent complexの類似が定義でき、変形理論が展開できる。(Prop2.4.2)
- 幾何の場合のモジュライ空間の対応物として有限次元表現の空間を取ることができる。
ポテンシャル関数のcritical locusが定義でき(2.3.1)、vanishing cyclesのEuler数を定義できる。(Prop2.10.4)
- DG代数としてRHomによる良い記述がある。(Prop2.9.5)
がある。
Calabi-Yau代数として、Symplectic DG dataというものにより、universalな構成が存在する。(Th3.6.4)
Calabi-Yau代数の例として3次元MacKay Quiverのpath algebraにポテンシャルをつけたものがあり、
これは3次元Calabi-Yau代数となる。(Th4.4.6)

2012年9月23日日曜日

サマースクール 復習 その12

*Donaldson-Thomas invariatns

Donaldson-Thomas invariants
http://www.ihes.fr/~maxim/TEXTS/DTinv-AT2007.pdf

導来圏の安定性条件を用いて、
t-構造およびそれに付随するアーベル圏を定めることができる。
代数多様体の導来圏について、安定性条件から一つアーベル圏を定めると、
アーベル圏が、
有限次元代数の加群の圏の場合や、
Quiver with potentialの場合がある。
このようなアーベル圏を扱う枠組みとして、
3次元Calabi-Yau圏がある。

実3次元多様体(の上の接続)に対して、Chern-Simons汎関数が定義され、
その正則バージョンとして、
複素3次元Calabi-Yau多様体(の上の正則接続)にして、正則Chern-Simons汎関数が定義される。
そのcritical pointsに対し不変量がされる。

これを拡張して、
3次元Calabi-Yau圏に対して、
安定性条件から定まるアーベル圏のmoduli stackの
virtual dimensionが0の時、そのvirtual numbersで、
numerical Donaldson-Thomas(DT) invariantsが定義できる。
(GW理論と同様、モジュライに対してvirtual fundamental classが定義できて、
不変量がwell-definedであることを確かめる必要がある。)

3次元Calabi-Yau圏に対して、
Motivic Hall代数とその部分群として、
Motivic Quantum Torusが定まる。
さらに、phaseを固定して無限積を取ることで、
DT-invariantsからMotivic Quantum Torusの元を定義することができる。
この元は、安定性条件の壁超えに対して、
良い振る舞いをする。

2012年9月21日金曜日

サマースクール 復習 その11

* 導来圏の安定性条件
Spaces of stability conditions
http://arxiv.org/abs/math/0611510v1

三角圏に対して安定性条件が定義できる。
(小三角圏に対して完全三角形で関係式を入れることでGrothendieck群(K群)が定義できる。welldefinednessはTR4による)
これは、アーベル圏に対する安定性条件を拡張し、
K群からの複素数値線形関数であるcentral chargeと
その値であるphaseを指定するごとに忠実部分圏を割り当てる。
- 三角形のTranslationに対しphaseが正の向きに半周する(1周しないのはsuperであることを念頭に置いている?)
- phaseの大きい対象からphaseの小さい対象には射は0だけ。
- 任意の対象はphaseが単調減少の有限個の三角形に分解できる(semistabilityの概念の拡張)
を条件に加える。
さらに安定性条件の空間を適切に記述するためには、局所有限性の条件が必要になる。

central chargeはK群上の複素数値関数であるから、
K群が有限生成であれば、
central chargeの空間は複素空間を関係式で割った比較的わかりやすいもので、
安定性条件の空間はその持ち上げになる。

一般にはK群は有限生成ではないが、安定性条件の空間の連結成分を取れば、
Th3.5では、局所的に持ち上げが位相を込めて同型になる、と言っている。

さらに、
射影的平滑代数多様体の導来圏の場合には、
局所有限な安定性条件で、
Chern指標を経由する条件の空間に限定する。(そのためsuperであることが必要だった)
この場合は、安定性条件の空間は、Th3.5より複素多様体と局所同型なので複素多様体になる。

安定性条件の空間には、
central chargeに対する変換からくる群作用と、
三角圏の同値変換から来る群作用が存在する。

実例として、
複素数体上の楕円曲線の場合、導来圏の同値はSL(2,Z)のZによるextentionからくる。
安定性条件は、GL(2,R)で向きを保つものの普遍被覆からくる。
よって、安定性条件/導来圏同値 は、modular curve上の直線束となる。

代数多様体の導来圏がexceptional collectionsで生成され、Quiver with relationsの導来圏と同値な場合は、
綺麗に書ける場合もある。

A 型特異点の安定性条件
http://www.mm.sophia.ac.jp/~shinoda/msj/pdffiles/ishii.pdf

2012年9月20日木曜日

サマースクール 復習 その10

* Quantum groupとHall代数

3次元多様体の量子不変量が'量子'である理由は、
- Witten不変量はWZW模型によって幾何学的量子化されたものから計算されている(表現はアファインLie環)
- Reshetikhin-Turaev不変量は量子群の表現を用いて構成されている
というものであり、背後にChern-Simonsゲージ場という量子場があったからだった。

さて、
WZW模型を計算可能にするKZ方程式はモノドロミー保存変形の量子化であり、
モノドロミー保存変形はアーベル圏の安定性条件から導出されていた。
そこで、量子群をアーベル圏の言葉で記述したくなる。
通常は定義関係式を用いて(Quasi)Hopf代数として定義される量子群(量子展開環)は、
Ringelの定理により、Borel部分はアーベル圏の言葉で記述できていた。
展開環全体の記述のためには、2次元球面が上半平面と下半平面の貼り合わせであるように、
アーベル圏が良い性質(Hereditary)を持っていて、さらに複体を用いて記述する必要がある。

Quantum groups via Hall algebras of complexes
http://arxiv.org/abs/1111.0745v1

2012年9月19日水曜日

サマースクール 復習 その9

Renormalization and motivic Galois theory
http://arxiv.org/abs/math/0409306v1
淡中圏として、motivic Galois group、
すなわちGmとあるpro-unipotent groupの半直積を固定して、
universal singular frameの明示的な式を提示していた。
これは、Time dependent exponential mapの形から、
かなりJoyceの構成に近いと思われる。
しかし、ここでは、安定性条件が現れていないので、
どのようにBridgelandの枠組で理解できるのかよくわからない。
Q:singular frameをBridgelandの枠組みで理解すること。

Stokes factors and multilogarithms
http://arxiv.org/abs/1006.4623v5

また、
群値運動量写像を用いた箙多様体の変種とRiemann-Hilbert対応
http://www.math.titech.ac.jp/~yamakawa/abst-geom55.pdf
に現れる乗法的箙多様体を、Quiver iwth potentialの圏の言葉で理解すること。

2012年9月18日火曜日

サマースクール 復習 その8

* 安定性条件とモノドロミー保存変形

Stability conditions and Stokes factors
http://arxiv.org/abs/0801.3974v5

- 安定性条件
有限次元代数の有限次元加群のなすアーベル圏に対して、
K群の正錐に対して複素上半平面上の点を加法を保つように対応させることにより、
安定性条件を与えることができる。
(ここで、複素数であることは、本来Motivicであるべき対象を記述する適切な言葉がないため、
それを含む複素数体で物事を議論しているためと思われる。モノドロミーに対する数論的理解が進めば、
安定性条件はより精緻な対象で記述されるべきであると思われる。)
K群の生成元は(単純加群からなり)有限個であるから、安定性条件の空間はこの場合、有限次元であり、
とくに上半平面の直積として多様体となる。
安定性条件の元で、部分加群に関する偏角の単調減少性によりsemistable条件を定義できる。

Kingにより安定性条件(Kingのθ安定性と同値になる)とK群の正錐(type)を指定するごとに、
semistable加群のcoarse moduli spaceを構成できる。
安定性条件の微小変動によりmoduli spaceが変動しない空間分割、
すなわち安定性条件のchamberと壁が構成できる。

有限次元代数の有限次元加群のなすアーベル圏からHall代数Hを構成できる。
安定性条件はK群の演算とcompatibleであるので、
安定性条件とtypeに対してよい振る舞いをする部分代数を構成したい。
typeに対して特性関数を取ることにより部分代数Cを、取ることができる。
Cには直和の類を用いて余積構造を入れることができる。
さらに、indecomposable加群の類で生成されるCの部分代数nを取ることができる。
nはLie環におけるnilpotent partの類似であり、
Cartan部分代数の類似であるh(これは安定性条件の空間を含んでいる)、
およびhとnの半直積であるBorel部分代数の類似b
を取ることができる。

さらに、安定性条件の空間からnへの関数として良い振る舞いの関数をとりたい。
Joyceによる構成は、nの中に、良い元をとって、typeの演算とcompatibleな微分方程式を満たすようにできる、
というものだった。(2)
これを、b(の完備化)に値を取る射影直線上のStokes dataと見ることで、
壁越えとモノドロミー保存変形を関連付ける。

- 射影直線上の代数群G主束の不確定特異点を持つ接続
admissble rayにおける正則で0への極限が明示的に記述される切断がuniqueに存在する。(Th2.6)
Stokes rayを超える部分ではStokes factorにより解の変化が記述される。
よって、上半平面をStokes rayにより偏角によって並べることにより、Stokes factorが記述されるが、
これがadmissible rayのみの領域で変化しないことと、モノドロミー保存変形であることは同値となる。(Prop2.11)
さらにモノドロミー保存変形のJimbo-Miwa-Uenoの方程式は、
Gのroot分解を用いて記述することができる。(Th2.12)(4)

-
安定性条件とn(の完備化)の元を与えることにより
a) 安定性条件の特性関数がStokes factorに対応する
b) Stokes multiplierの正規化
の2つの条件を満たすStokes dataを持つmeromorphic 接続がuniqueに対応する。
さらに、接続の留数は、Joyceの構成により記述でき、モノドロミー保存変形の微分方程式を満たす。

2012年9月17日月曜日

サマースクール 復習 その7

* 2次微分と安定性
Quadratic Differentials as Stability conditions
http://www.hcm.uni-bonn.de/fileadmin/stringmath2012/plenary_talks/brsm_bonn_stringmath.pdf
点付き境界付きリーマン面に対し、非退化3角形分解からQuiver with Potentialを構成する。
さらに、complete Ginzburg代数の導来圏の部分圏として、
3次元Calabi-Yau三角圏を構成する。(Q:これはCalabi-Yau代数の文献を見ればよい?)
この3角圏に対し安定性条件の空間、および圏の自己同値の空間を構成し、
後者の連結成分での商を取る。(安定性条件の空間は複素多様体(Th2)となる。)
(Q:自己同値の空間はその部分空間になるのか?)
すると、複素orbifoldとして、符号付きmeromorphic2次微分の空間と同型になる。(Th1)
辺に対するflipはQuiver with Potentialのmutationを引き起こし、圏の自己同値を引き起こす。
最初と最後の分割が変わらない辺のflipの列を合成することで、圏の自己同値の群が生成される。

境界付きリーマン面に対し、meromorphic2次微分を、零点がすべてsimpleであるようにとり、
3位以上の極についてはreal blowupをし、2位以下の極しか持たないようにする。
このようなリーマン面と2次微分の組は複素orbifoldとして定まる。
2次微分なのでsqrtをとって留数を取ることができる。

リーマン面とすべての2位の極での留数を固定して、2次微分の部分空間をとり、
これを安定性条件の空間に引き戻すと、
どのような特徴付けができるか?
という事が書かれていた。

2012年9月16日日曜日

サマースクール 復習 その6

* 虚2次体上の保形型式
有理数体上のGL(2)保形型式は、
複素上半平面上の関数で算術群に対する保形性を持つ関数で表される。
とくに、正則保形型式が存在して、楕円曲線のモジュライ上の直線束の切断を与えていた。
ここで、複素上半平面がでてきたのはSL(2,R)/SO(2)が対応していたためだった。
では、虚2次体上のGL(2)保型形式はどうだろうか?[
SL(2,C)/SU(2)が3次元上半平面に対応するが、
正則保型形式は存在しない。
また、保型形式はSU(2)の有限既約表現の存在により、ベクトル値になる。

Some Applications of Number Theory to 3-Manifold Theory
http://arxiv.org/abs/1203.1428v1
算術群として、arithmetic Klein群、とくにBianchi群と呼ばれるものに注目する。
ただし、結び目の補空間の基本群として現れるのは、figure-8に対応する場合だけである。
Eichler-Shimura同型に対応するBettiコホモロジーと算術群のコホモロジーの同型対応、
およびその保型形式としての解釈、
cusp型式、Hecke対応については、定義が存在する。
(これらは保型表現としてみたほうが分かり易いかも知れない。)

また、虚2次体のゼータ関数のs=2での値と、虚2次体のorderのPSL2による商の体積との関係が存在する。
(もし結び目補空間がいっぱい対応していてくれれば、これは体積予想とも関連したはずであるが、
上記の通り1つしかないので、結び目の観点からはあまり興味はない。)

2012年9月15日土曜日

サマースクール 復習 その5

* A-多項式
3次元トーリックCalabi-Yau多様体において、
そのmirror curveは対応するMatrix modelのスペクトル曲線であり、
1次元シュレーディンガー方程式のWKB法によるStokes曲線を与えていた。
すなわち、
完全WKB解 析,そ して完全最急降下法
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku1947/55/4/55_4_350/_pdf
にあるように、
シュレディンガー方程式のポテンシャルQ(x)から、
Stokes曲線が得られるが、
一方で、Q(x)は曲線のリーマン面としての一意化を与える関数を与えるものだった。

3次元トーリックCalabi-Yau多様体のスペクトル曲線は2次元トーラス内の曲線なので、
パラメータとしてはトーラス上のパラメータをとったほうが見やすい。
では、結び目を与えて、それに対応する3次元トーリックCalabi-Yau多様体の
mirror curveおよびStokes曲線は何になるのだろうか?

Representation Theory and the A-polynomial of a Knot
http://www.math.ucsb.edu/~long/pubpdf/repnApoly.pdf
Plane Curves Associated to Character Varieties of 3-Manifolds
http://homepages.math.uic.edu/~culler/papers/PlaneCurves/curves.pdf
では、
結び目の管状近傍として得られるソリッドトーラスを取り除き、
境界が2次元トーラスである3次元コンパクト多様体を対応させ、
これに対して、特性多様体と呼ばれるリーマン面と、A-多項式と呼ばれる多項式を対応させている。

結び目補空間が双曲一意化を保つ場合、基本群の作用を見ると2次元射影表現が得られるが。
SL(2)への持ち上げが境界のトーラスの作用によって固定されたものが得られる。
特に、トーラスの基本群の生成元が(同時)対角化されているように基底を選ぶ。

境界トーラスでの表現を対角化条件を保って、3次元空間の基本群の表現に持ち上げる場合、表現空間の体は、
変形の自由度分超越次数が増大し、今の場合は1次元増加する。


A-polynomial, B-model, and Quantization
http://arxiv.org/abs/1108.0002v1

2012年9月14日金曜日

サマースクール 復習 その4

* 結び目に対応するmirror curve

Knots, Mirror Symmetry and Large N Duality
http://wwwth.mpp.mpg.de/members/strings/strings2012/strings_files/program/Talks/Friday/Aganagic.pdf
- 結び目に対して、3次元(非コンパクト)トーリックCalabi-Yau 多様体を対応させることができる。
トーリックCalay-Yau多様体にはmirror curveが対応するので、
結び目に対してリーマン面が結び目不変量として対応する。

- では、Calabi-Yau多様体のミラー対応は、結び目に対してどのような対応をもたらすのか?
コンパクトCalabi-Yau多様体のミラー対応は、SYZ対応によりLarangian fiberの対応になるが、
今の場合は、トーリック非コンパクトなので、fiberはトーラスではなく、退化した
R*R*S1の形になっている。

- トーリックCalabi-Yau多様体のGW不変量はEynardによりSymplectic invariantsを用いて計算できた。
Eynardの計算は、
トーリック多様体を局所的に複素3次元ベクトル空間と思って組み合わせ的に計算できること、
それに対応してmirror curveにpants分解が入り、Lagrangianの情報がpants分解との整合性に落ちること、
に帰着されていた。

- Gopakumar-Vafa 双対性
Gopakumar-VafaによるS^3上のChern-Simons理論と
resolved-conifold上のGW不変量のLarge N双対性
を仮定すると、結び目不変量はLargeN双対性によりresolved conifold上の計算になる。
ここで、NはCSのほうは、SU(N)をゲージ群に取ることで、GWのほうはパラメータtに対応する。

- 実際に幾つかの結び目に対してmirror curveを具体的に計算できる
unknot
trefoil
figure-8
torus-knot

- linkの場合はまだ材料は揃っていない


Large N Duality, Mirror Symmetry, and a Q-deformed A-polynomial for Knots
http://arxiv.org/abs/1204.4709v4

Introduction to the Gopakumar-Vafa Large N Duality
http://arxiv.org/abs/math/0701568v2

2012年9月13日木曜日

サマースクール復習 その3

* Chern-Simons汎関数

Chern-Simonsゲージ理論において、
講義では、作用汎関数が与えられれば後は何とかする、という物理のスタンスが述べられていた。

作用汎関数については、
- 接続1形式に対して値を定める汎関数
- levelと呼ばれる整数パラメータが与えられ
- 変分が消えるところは、平坦曲率
ということが記述されていた。
しかし、作用汎関数自体は天下り的に定義され、
何故、その汎関数が選択されたのか、については明示されていなかった。

Chern-Simons
http://ncatlab.org/nlab/show/Chern-Simons+theory

Classical Chern-Simons theory, Part 1
http://arxiv.org/abs/hep-th/9206021v1


2012年9月12日水曜日

サマースクール復習 その2

結び目は3次元球面に埋め込まれた1次元球面のことであった。
結び目の情報を取得するために、
1. Morse関数を選んで1次元に射影し、critical pointsの位置と指数を記述する。
または、
2. 結び目の1点を固定し、結び目を包む2次元球面に対して、その点と結び目の点を通る直線による射影を行う。
(これは平面射影と同じである。)
という方法が考えられる。

2.のほうは、Lefshetz pencilの手法の類似とみなせる。
0次元球面は2点であり非連結であるから、S1上の2重分岐被覆は、
S1上の0次元球面バンドルで特異点を持つものと思える。
それをblow-upにより引き剥がすことで、
0次元球面、すなわち2点からなる0次元のvanishing cyclesの情報が付加される。
組紐群のKZ方程式による表現の局所モノドロミーからスケイン関係式が出てくることを思い出すと、
強引にLefshetz pencilのモノドロミー表現からスケイン関係式が生じている、
と思えないこともない。
(ただし、スケイン関係式のパラメータがこの場合何を指しているかというと、
モノドロミー表現の固有値ということになるが、
0次元球面だとパラメータを持てないため、その分の自由度をどこかで与える必要がある。)

Q:接バンドルを取ることにより、結び目から、射影直線上のrank2(ベクトル)束が生じるとみなすことができるか?
Q:だとすれば、射影直線上のrank2分岐ベクトル束は結び目の適当な集合の情報を保持していることになる。これはベクトル束と分岐の情報からどのように定まるか?

2012年9月11日火曜日

サマースクール復習 その1


* 内容
ランダム結び目と環状高分子の統計物理
結び目を折れ線近似できる対象として定義して、その不変量を構成する。
結び目多項式を、スケイン関係式を満たす多項式として、
とくにJones多項式を、
組紐群の表現->ヤン-バクスター関係式->マルコフトレースの構成->絡み目不変量の構成
という枠組みの中で説明している。
(さらに背後にあるTemperlay-Lieb代数と6頂点模型についても言及しているが、
これは、
Six-Vertex, Loop and Tiling models: Integrability and Combinatorics
(http://arxiv.org/abs/0901.0665v2)
を参考に理解することとする。)
さらに、結び目の不変量を如何に計算するか、という点で、
結び目ダイアグラム及びそれと同値なガウスダイアグラム、
更に一般的なコードダイアグラム、矢印ダイアグラムを定義し、
Vassiliev不変量を定義している。
その応用として、長さを固定してランダムな移動のもとでどのような結び目が生じるか、
という実験を行なっている。

3次元双曲幾何とクラスター代数
カスプを持つRiemann面に対して、三角形分割をひとつ与えた時、
飾り付きTeichmuller空間にPenner座標が標準的に構成され、
空間を写像類群で割ったTeichmuller空間にFock座標が定義される。
これらは三角形分割のフリップに対してクラスター変換となる。
そこで、擬Anosov写像に対する写像トーラスに完備双曲構造を入れるために、
Fock座標を使用する。
ただし、Fock座標を取るTechmuller空間の点は、
写像トーラスの定義に用いた写像の固定点で、その存在は仮定する。

結び目不変量と量子場の理論
Chern-Simonsゲージ理論を用いて結び目不変量を定義する。
位相的場の理論の公理を適用し、物理的Hilbert空間がこの場合WZW模型の共形ブロックになることを利用し、
とくにトーラスの場合の共形ブロックをアフィンLie環の指標で表す。
さらにトーラスのS変換、T変換に対する指標の変換則を記述し、
分配関数の計算を行なってみる。
S2*S1、およびS3の場合に、Wilsonループ演算子を挿入して計算し、これがJones多項式にFrame因子を除いて一致することを示す。
結び目多項式の背後に、圏化として結び目ホモロジーがあり、その統一理論として、
Triply-gradedホモロジーの存在およびそのPincare多項式としての超多項式が期待される。
これは、弦理論的には、精密化されたChern-Simons理論が与えるTQFTの分配関数となるべきものである。

結び目の量子不変量とその応用
Kauffman bracketを用いて、結び目不変量を定義する。
これは、結び目の射影図の交差の解消をすべて列挙し、
解消後のループの数、解消の様子を用いて、重みを付けて足し合わせたものになる。
状態和を可解格子模型、面模型と関係付けて、量子展開環の表現と結びつける。
自然表現に対応するものがJones多項式で、
有限既約表現に対応するものが、Colored Jones不変量である。
さらに、
3価リボングラフの不変量、4価以上のリボングラフの不変量である横田不変量、および、
3次元多様体の不変量としての、Witten-Reshtihkin-Turaev不変量、Turaef-Viro不変量を定義する。
後者は量子パラメータqが1の冪根の時、すなわち表現に半単純でないものが生じるとき、
前者の不変量に対応する。
また、Turaef-Viro不変量と横田の不変量は離散Fourier変換で移りあう。
結び目補空間の位相不変量である体積について、Kashaevが堆積予想を提出したが、
それについて、modulo 鞍点法で、4面体分割と双曲構造方程式により解釈ができる。
これを厳密に示すために、logarithmic CFTからくる不変量と、qが1の冪根の時生じる半単純でない表現を用いて、
理論構成されることが期待されている。


2012年8月18日土曜日

vanishing cycles

Lectures on D-modules
http://www.math.columbia.edu/~scautis/dmodules/ginzburg.pdf
微分作用素は掛け算作用素と非可換だが、filtrationを入れることにより、
可換環への写像を作ることができる。
従って、
- D加群に対してよいfiltrationを入れてgraded algebraの性質を見る
- filtrationの取り方によらない性質を取り出す
という方針がある。
特性多様体は、D加群から取り出せるfiltrationによらない可換環の性質。
非可換と可換をつなぐ性質として、Noether性、有限生成の仮定の元、
特性多様体のPoisson括弧に対するinvolutivityが成り立つ。

可換環において局所化による単純化は有用だったが、D加群においても、
超局所化により、微分作用素の局所的な振る舞いを取り出すことができる。

左D加群と右D加群の間にvolume-formを用いて対応を付けることができる。

* 直線上のD加群の例
O=D/D∂, δ=D/Dt
がある。
これは、D加群に対する操作として、積分と制限があるが、
積分に対応するのは、水平方向に制限する操作なので∂で割る。
制限は、O加群としてのskyscrapper層を取ってみればO/tOなので、
D加群としてD/Dtが制限に対応する。
Fourier変換で互いに移ること、特性多様体が水平、垂直方向の直線であることに注意する。
0->O->C[t,t^{-1}]->D/Dt->0
が成り立つ。
つまり、0->D/D∂->C[t,t^{-1}]->D/Dt->0,
C[t,t^{-1}]=D(1/t)=D/D(t∂)となる。
これは佐藤超関数としてのδ関数が[1/t]であったことに対応する。

log(t)を∂log(t)=1/tの解を表す記号とする。
D(log(t))はD(1/t)=C[t,t^{-1}]=D/D(t∂)を含み、
商O(log(t))はO=D/D∂と同型なので、
0->D/D(t∂)->D(log(t))->D/D∂->0
となり、
D(log(t))=D/D(∂t∂)
となる。

直線を1点とそれ以外に分解してD加群の貼り合わせを考える。
X=Spec(C[t]), R=C[t,t^{-1}], U = Spec(R) j:U->X i:Y={0}->X
として、
logによるextenstionをみる。
すなわち、
j_{*}Log^{n-1}=D((∂t)^n)
j_{!}Log^{n-1}=D((t∂)^n)
となるD加群を見る。
Malgrange construction(4.6.36)によりt^sという記号を導入できて、
Residue pairingにより、
Log^{n-1})=R t^s[s]/s^n R t^s [s]
が成り立つ。(lem4.6.5)
これからlimを取ることにより、佐藤グラスマン多様体のC((s))による記述が対応してくる。
貼り合わせは、Def4.6.28のGlueing categoryによって与えられる。
Def4.12.26でNearby functorが定義される。

* 順像、逆像、duality
スキームの場合と異なり重複度を見ているので、
冪零分の不定性はなく閉集合への制限は圏同値となる。

* 連接性、holonomicD加群
O-加群として連接なD加群はlocal systemになる。
これは、特性多様体が0-sectionに含まれるので、holonomicD加群の一例になる。


Notes on Perverse Sheaves and Vanishing Cycles
http://arxiv.org/abs/math/9908107v5

Vanishing cycles and mutation
http://arxiv.org/abs/math/0007115v3

単位円盤内の1点に関するvanishing cyclesは佐藤グラスマン多様体内のLagrangianで解釈できる。
すなわち、1点をreal blow-upしたS1上のL^2空間内のLagrangian全体が佐藤グラスマン多様体
であり、vanishing cyclesを与えることとLagrangianを与えることが対応する。(要check)
同様にvanishing cyclesをLagrangian部分多様体として解釈したい。

A1型の場合
SL(2)表現のモノドロミー保存変形
1-Matrix Model
スペクトル曲線としての超楕円曲線
球面の接バンドル
という関連があった。
超楕円曲線と球面の接バンドルの対応は、
Homological Mirror Symmetryの立場で解釈できるだろう。
Exact Lagrangian submanifolds of $T^*S^n$ and the graded Kronecker quiver
http://arxiv.org/abs/math/0401212v1

では、
An型ではどうなるか?
A2型に対応するモノドロミー保存変形は、2-Matrix Model(Cauchy 2-model)により与えられるので、
An型に対応するモノドロミー保存変形はn-Matrix Modelにより与えられそうだ。
そのスペクトル曲線はn次分岐を持つ曲線となる。
問題は、
このスペクトル曲線のJacobianにJacobi-Moser-Mumford型の可積分系が存在するか?
Jacobian-テータ因子を束ねた空間として現れる空間は何か?
その空間はHMSの対応で解釈できるか?
ということになる。

Lagrangian homology spheres in (A_m) Milnor fibres via C^*-equivariant A_infinity modules
http://arxiv.org/abs/1202.1955v3
をみると、Am型の空間の候補として、Springer fibersの空間が考えられる。

Matrix-Modelには直交多項式が有効だった。
では、その高次元化として、
Calabi-Yau多様体のHMSに現れるテータ関数をタウ関数に持つmatrix-Model
を定義することはできるだろうか?
Lagrangian fibrations on blowups of toric varieties and mirror symmetry for hypersurfaces
http://arxiv.org/abs/1205.0053


2012年8月16日木曜日

モノドロミー保存変形のタウ関数

* 直交多項式の性質
- 与えられた測度に対するL2空間の直交基底をなす
- 直交多項式からL2空間に関するKernel関数を定義することができる
- 3項漸化式により逐次計算できる

* 直交多項式と1-Matrix Model(1-MM)の関係
- 直交多項式を定義するのに用いた測度により1-MMを定義することができる
- 直交多項式から定まるKernel関数により2体相関関数が計算できる
- 多体相関関数は2体相関関数の計算に帰着する
- 1-MMの分配関数は直交多項式のnormsにより逐次計算できる
- 1-MMの分配関数はポテンシャルの時間発展に関してKP階層のタウ関数となっている
- 直交多項式によるHilbert空間内の基底表示からKPタウ関数を計算する行列式を表すことができる
([2] Appendix)


* 直交多項式のなすD加群 ([1]Th2.1 [2]Th2.1)
- 掛け算作用素は3重対角行列
- 2*2行列を用いて微分作用を書くことができる
これは、ポテンシャルによるtwist部分をあらわに計算することにより出てくる。
部分積分による反対称作用の記述のためにquasi-polynomialsを用いる。
- ポテンシャルと掛け算作用素を用いて微分作用を表すことができる
ポテンシャルの微分に関するFaber多項式になる。

* ポテンシャルが多項式の場合
* モノドロミー保存変形(IM)のタウ関数と1-MMの分配関数
- 定数倍を除き一致する([2]Th2.4)
- 積分路([2](2-5))
1-MMを計算する固有値の入る積分路は、
ポテンシャルにあわせて複素領域内の曲線とする。
そのため、直交多項式を定める測度も複素測度となる。
これによりStokes sectorsを与えることができる。
- 1-MMの分配関数とスペクトル曲線([2]Th2.3)
(n,n+1)次の直交多項式の微分作用の多項式表示
が定めるスペクトル曲線が1-MMの分配関数と関係する。
- Virasoro作用
1-MM分配関数にも、IM-タウ関数にもVirasoro作用がある。
0,-1次の作用が異なっていてその比較により定数が出てくる。([2](2-60))

* ポテンシャルが有理関数の場合
[3]で上記の結果を拡張している。

[1]A concise expression for the ODE's of orthogonal polynomials
http://arxiv.org/abs/math-ph/0109018v1

[2]Partition functions for Matrix Models and Isomonodromic Tau functions
http://arxiv.org/abs/nlin/0204054v4

[3]Semiclassical orthogonal polynomials, matrix models and isomonodromic tau functions
http://arxiv.org/abs/nlin/0410043v1





2012年7月23日月曜日

microlocal analysis

Three lectures on Algebraic Microlocal Analysis
http://arxiv.org/abs/1206.1435v1

microlocal homによるSerre functorの実現。
これから、Hall代数的な扱いができるのでは?

l 進層の特性類と分岐について
http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~t-saito/jd/ag.pdf


Riemann-Roch theorems via deformation quantization
http://arxiv.org/abs/alg-geom/9705014

Riemann-Roch Theorems via deformation quanitzation I
http://arxiv.org/abs/math/9904121v1
Riemann-Roch via deformation quantization, II
http://arxiv.org/abs/math/0002115v2

Donaldson-Thomas invariants via microlocal geometry
http://arxiv.org/abs/math/0507523v2

Ribbon Graphs and Mirror Symmetry I
http://arxiv.org/abs/1103.2462v1

Constructible Sheaves and the Fukaya Category
http://arxiv.org/abs/math/0604379v4

Polytopes and Skeleta
http://arxiv.org/abs/1109.4430v1

2012年6月24日日曜日

クラスター

* Seiberg-Witten曲線
Seiberg-Witten integrable systemshttp://arxiv.org/abs/alg-geom/9705010v1

Geometry and physics of localization sums
http://www.math.columbia.edu/~thaddeus/seattle/okounkov.pdf

Donaldson-Thomas theoryは、
target space内の空間をイデアル層で数え上げるもの。
そのために、コホモロジー類(degree)、genus, Euler数をパラメータとするHilbert schemeを用いる。
target spaceがtoric Calabi-Yau 3foldの場合、
virtual fundamental classは0次元。
toricの場合、トーラス作用がHilbert schemeにあり、
局所化による計算が可能になり、DTの母関数はトーラス作用の孤立不動点の和になる。
トーラス作用の不動点は、凸多面体の頂点に対応する。
結晶溶解モデルにより統計力学の考え方に則って、

エネルギー=-化学ポテンシャル*体積+const*面積
として平衡状態のパラメータの条件を見ると、
化学ポテンシャルとDTのgenus依存性が対応し、
凸多面体の辺の長さとDTのdegree依存性が対応する。
熱力学的極限は、
化学ポテンシャルが0になる極限、すなわち、DTのgenus依存部分が0の場合。

この場合、
離散的な凸多面体の極限であるlimit shapeが現れるが、
これは、Ronkin関数を用いて記述される(実)代数曲線となり、
mirror curveである。
すなわち、Seiberg-Witten曲線となる。



行列模型とストークス現象
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~tada/matrix/pdfs/Irie.pdf

行列模型においてlargeN極限とは、
離散的に定義された三角形分割による離散曲面に対する経路積分の、
meshの目の細かさに対する連続極限に対応する。
すなわち、弦の摂動展開。
行列模型のスペクトル曲線は、lageN極限における固有値の分布の情報を持っているので、
摂動的物理量はスペクトル曲線の情報から計算できる。
この場合、スペクトル曲線=Seiberg-Witten曲線。

一方、
非摂動的に化学ポテンシャルを入れた場合の分配関数は、
Seiberg-Witten曲線の情報だけでは定まらない。

Seiberg-Witten曲線は熱力学的極限、
あるいは、半古典近似であるから、
WKB法によるシュレーディンガー方程式の解の近似と
関係があることが想像される。

* WKB法
特異摂動の代数解析学
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku1947/45/4/45_4_299/_pdf

1次元シュレディンガー方程式を、ポテンシャルQ(x)で用いて表した時に、
Q(x)^{1/2}をSeiberg-Witten曲線と見なしたい。
それが(1.4)の漸化式。
解のBorel変換を波動方程式の解と見る
(1.9)は、陪特性曲線に沿って特異性が伝搬する、
ということを示しているが、
これはEynardのスペクトル曲線における(y,x)の積分、あるいはSeiberg-Witten微分の積分
の一つの解釈になる。

Stokes曲線を変わり点を頂点とする2部グラフとみなすと、
Q(x)がFuchs型の微分方程式として与えられる場合には、
モノドロミー表現は2部グラフに対する組み合わせ的操作によって記述できる。

- 一番簡単な場合はAiry関数の場合で、これはQ(x)=xの場合に相当する。
- Random matrix側でのRiemann-Hilbert問題の解法との関係は?
- Q(x)のアメーバとStokes曲線の関係は?
- モノドロミー保存変形の場合に許される操作は?
- Stokes曲線とtrain tracksとの関係は?
といった疑問が生じる。


* 1点で分岐している場合NOTES ON PSI CLASSES
http://www.mat.uab.es/~kock/GW/notes/psi-notes.pdf
Invariants of spectral curves and intersection theory of moduli spaces of complex curves
http://arxiv.org/abs/1110.2949v1

* モノドロミー保存変形とHitchin Hamiltonian
Quantized moduli spaces of flat connections, Liouville theory, and integrable models
http://online.itp.ucsb.edu/online/integral11/teschner/pdf/Teschner_Integral11_KITP.pdf

Quantization of the Hitchin moduli spaces, Liouville theory, and the geometric Langlands correspondence I
http://arxiv.org/abs/1005.2846v4

G=SL(2)の場合に、
a) Fuchs型の微分方程式のモノドロミー保存変形
b) Liouville theory
c) Hitchin系(の量子化)
に対応がある。

* タイヒミュラー空間
Moduli spaces of local systems and higher Teichmuller theory
http://arxiv.org/abs/math/0311149v4
上記のa),b),c)の対応を一般の簡約群Gで定義するためには、
タイヒミュラー空間が定義される必要がある。
そのため、positeive representationの概念を定義し、
そのmoduliを定義する。

* クラスター代数
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/LaTeX/201205Nagao/








2012年6月19日火曜日

クリスタリン

* 標数0でのalgebraic de Rham cohomology
Basics of Algebraic de Rham Cohomology
http://www.math.harvard.edu/~jay/writings/derham.pdf
で、Grothendieckによる代数的なde Rham cohomologyと解析的de Rham cohomologyのisomorphism
が説明されている。
properでない場合は広中の特異点解消定理によりsmooth proper schemeに埋め込んで議論をする。
埋め込み方によらず、complementで任意位数の極を持つ微分形式が定義でき、
GAGAが使用できる点がポイント。

ON THE DE RHAM COHOMOLOGY OF ALGEBRAIC VARIETIES
http://www.math.brown.edu/~wgillam/dR.pdf
のExample1に、
局所環に対応するde Rham complexとその点での形式環に対応するde Rham complex
の比較に言及されている。

ON THE DE RHAM COHOMOLOGY OF ALGEBRAIC VARIETIES
http://archive.numdam.org/ARCHIVE/PMIHES/PMIHES_1975__45_/PMIHES_1975__45__5_0/PMIHES_1975__45__5_0.pdf
section7でAmbient spaceの方を元のschemeに沿って完備化し、normal bundleを取る、という形で定式化を行っている。

Comparison theorems between algebraic and analytic De Rham cohomology (with emphasis on the p-adic case)
http://www.emis.de/journals/JTNB/2004-2/pages335-355.pdf
Grothendieckの同型対応を、定数層から係数を代数的ベクトル束とした場合、
問題になるのは、微分、すなわち接続の特異性(分岐)で、
これが穏やかでないと、単純な同型対応はできない。

devissageにより、射影直線上の分岐被覆について成り立てば全体で成り立つ、
という議論に帰着できる場合がある。
ただし、複素数の場合とp進の場合で、収束の状況が異なり、
微分方程式が解けるためにパラメータがLiouville数でない、など制限がつく場合がある。

* inifinitesimal site
http://www.math.harvard.edu/~gaitsgde/grad_2009/SeminarNotes/Nov17-19%28Crystals%29.pdf
標数0の場合、crystalはinifinitesimal site上のtoposとして定義される。
可微分多様体の場合には、jetという概念があり、
関数のテーラー展開の提示の項のみを取り出す操作ができた。
これを代数的に行うと、infinitesimal siteとなり、
そのsite上での層の圏がinfinitesimal toposとなる。

Cohomology of the Infinitesimal site
http://archive.numdam.org/ARCHIVE/ASENS/ASENS_1975_4_8_3/ASENS_1975_4_8_3_295_0/ASENS_1975_4_8_3_295_0.pdf
Th4.6でinifinitesimal site上のcohomologyを計算している。
また、標数pの場合にinifinitesimal site上のcohomologyはetale cohomologyとなり、
crystalline cohomologyのstable partとなることを示している。

* divided power
DIFFERENTIAL EQUATIONS IN DIVIDED POWER ALGEBRAS, RECURRENCE RELATIONS AND FORMAL GROUPS
http://www.maths.gla.ac.uk/~ajb/dvi-ps/recde.pdf
Hopf代数の観点から見ると、divided powerは解り易い。
(dualはLie代数のenvelopping algebraになるが、q-deformのような話はあるのだろうか?)

* 標数pでsmooth schemeの場合
Notes on Crystalline cohomology
http://www.mabli.org/mabli/files/BerthelotOgus-Crystalline.pdf
標数pの体上で代数多様体のde-Rham cohomologyを計算しようとすると、
係数の問題が生じる。
係数が標数pのままであればよいが、標数0の係数上で複体を計算する場合、
p冪方向にも変形が生じるので、その分を考慮に入れる必要がある。
そのため、infinitesimal siteではいわゆるunit root方向しか補足できず、
toposの条件にdivided powerを入れて、位相を強くする。
それがcrystalになる。
crystalは具体的には接続が定義されたmoduleの列。

* 標数pの場合
Crystalline cohomology and de Rham cohomologyhttp://arxiv.org/abs/1110.5001v1

2012年5月29日火曜日

クラスタリング


http://www.math.psu.edu/petrunin/papers/alexandrov/bbi.pdf
距離空間には、
Euclid空間への埋め込みに対して、
内在的に定まる距離(intrinsic)と
埋め込みに依存する距離(extrinsic)がある。

有限距離空間のisometry類の集合上の距離として、
Gromov-Hausdorff距離が定義できる。
これはcorrespondenceに対応する点対の距離の差により算出される。

* point could dataの解析
point cloudは点の集まりであるが、それに付随して、
データに内在する距離(intrinsic metric)と
データの観測に伴う距離(extrinsic metric)
により、距離空間とユークリッド空間への埋め込みが与えられている、
とみることができる。

point cloud dataの例として、
複数の都市に存在する人間の位置をすべて記録したものを想像してみる。
高い密度で都市に集中し、それよりも少ない密度で都市間の交通網上に存在しているはずだ。
point cloud dataから都市を推定することがクラスタリングと呼ばれる技法であり、
交通網を捉えるための技法が、Persistent homologyになる。
つまり、対象の粗視化、という操作を取り入れて、トポロジーの計算手法を応用しよう、
というもの。


* クラスタリング

point cloud dataを解析するために、荒い分類を行う、
すなわち粗視化のスケールを変えながら連結成分に分ける、という操作を行う。

これを(階層化)クラスタリングと呼ぶわけだが、
Classifying Clustering Schemes
http://arxiv.org/abs/1011.5270
では、
まず、理想的なクラスタリングアルゴリズムは存在しない、というKleinbergの定理に言及して、
その定理の仮定を緩めて、ある性質を満たすクラスタリングアルゴリズムは唯一存在する、
という定理を示している。
(数学の応用としては、
最善のものは存在しない、という形で限界を示し、
限界から少し条件を緩めたものの存在を構成的に示す、
という形のフレームワークは非常に有効なもので、
シャノンによる通信の符号化
もその一例とみることができる。)

point cloudの分割は、point cloudを有限集合と見た時、
有限集合に対して位相開基を与えることと同等である。
いわゆる有限空間と呼ばれるものであるが、
この位相は、密着位相と離散位相の間で、半順序をなす。
クラスタリングは粗視化のスケールを変えて分割を変更するものであるから、
位相開基の減少フィルトレーションが必要である。
この半順序を取り出す位相開基の減少フィルトレーションを定めると、
それに対応して木構造、いわゆる、デンドログラムというものになる。
そこで、有限集合とその位相開基の右連続減少フィルトレーションの組で、
先頭が必ずしも離散位相ではないが最後は密着位相となるものを
persistent setと呼ぶ。
なお、point cloudが距離空間の構造を持っている時、距離から定まる位相は点を分離するので、
クラスタリングが定める位相はそれよりも弱い。

クラスタリングのアルゴリズムとは、
有限距離空間を対象、しかるべき条件を満たす距離空間の写像を射とする圏から
persitent setsの圏への関手、
として定義される。


入力の有限距離空間の射の条件として、
iso:isometry
inj:距離が非増大の単射
gen:距離が非増大
という3種類について考察されている。
よく知られているk-means法は、どの入力の圏に対しても
関手の意味でのクラスタリングアルゴリズムを与えない。
(ex. Persistent Clustering and a Theorem of J. Kleinberg 4.1
http://arxiv.org/abs/0808.2241)
クラスタリングのあるスケールによって定まる分割に対して、クラスタリングを行っても、
そのスケールでは分割が変化しないことが望ましい。
この冪等性の性質をexcisivenessと呼ぶ。
標準的なクラスタリング関手として、Vietoris-Rips関手がある。

これは、2点からなる距離空間によって表現されている、と見なすことができ、
その拡張として、有限距離空間の集合によって表現可能な関手が定義される。
(Def6.3)
上記論文では、(階層化でない)分割の場合にexcisiveクラスタリングアルゴリズムは表現可能と同値
であることを示している。(Th6.2)
Th7.2では、入力の圏がgenの場合に、クラスタリングアルゴリズムに、
Vietoris-Rips関手が対応することを示している。

* クラスタリングのstability
クラスタリングを行う元のpoint cloud dataは、
サンプリング結果として、確率的、不完全、という性質を持っている。
そのため、
クラスタリングアルゴリズムには、安定性が必要となるわけだが、
そのために、入力の圏の対象の距離を測る道具として、
Gromov-Hausdorff距離を使用することができる。
(Persistent Clustering and a Theorem of J. Kleinberg section 5)



* 形の把握
Gromov-Hausdorff Stable Signatures for Shapes using Persistence
http://math.stanford.edu/~memoli/papers/dgh-persistence.pdf

point cloudの形を把握するには、単純なホモロジーでは点の数しか出てこないので、
粗視化のスケールを変えて特徴を取り出す必要がある。
それがpersistencyということになる。
2つのpoint cloudの距離を測るのに、point cloudに内在的な距離および埋め込みによる距離を与えて、
距離空間間の距離、すなわちGromov-Hausdorff距離により、形の相違を測る。
この距離を下から評価するために、persistencyの結果が利用できる。
すなわち、filtered Rips complexを定義して、
それから得られるpersistent diagramを、point cloudに対して対応させる。
2つのpersistent diagramsをbottleneck distanceを使用して距離を測った結果が
Gromov-Hausdorff距離で抑えられる。
(Th3.1)

Spectral Gromov-Wasserstein Distances for Shape Matching
http://math.stanford.edu/~memoli/papers/dgw-spec-nordia-theo.pdf








2012年5月24日木曜日

Faber多項式

LATTICE PATHS AND FABER POLYNOMIALS
http://people.brandeis.edu/~gessel/homepage/papers/faber.pdf
重み付けで解釈することにより、
Faber polynomialをlattice pathの数え上げとして確認している。

Analytic functions and integrable hierarchies-characterization of tau functions
http://arxiv.org/abs/hep-th/0305005v2
Faber多項式、Grunsky行列の整理された記述と、
それを用いて、無分散戸田格子のτ関数の記述を行っている。

Weil-Petersson metric on the universal Teichmuller space II. Kahler potential and period mapping
http://arxiv.org/abs/math/0406408v1

6.2. Embeddings into the Segal-Wilson universal Grassmannian
では、リーマン面からconformal weldingを構成し、
リーマン面の周期をFaber多項式(Grunsky行列)を用いて記述していた。

無分散可積分系と関数論
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1541-12.pdf
にあるように、
Grunsky行列はLowner方程式に関係している。

Q1:
では、スペクトル曲線を与えて、そこからtopological recursionによるinvariantsを計算する際に、
(g,n)=(0,2)ででてくる無分散戸田格子(x=z+1/zの場合)は、どのようにconformal weldingと関係しているのだろうか?
Q2:
スペクトル曲線として実構造を持つ超楕円曲線の場合、判別式からなるFloquet指数が、conformal weldingを生成する。
これは上半平面から固有値に対応するslitを除いたものに対応し、slitを変形して消失させる等角写像が、
Lowner方程式で、それが無分散戸田に対応する、と解釈できるのだろうか?
その場合、topological recursionによる分配関数の計算は高種数の項も含んでいる。
これを全部あわせて、スペクトル曲線に対応するτ関数となり、
(無分散極限は古典極限)
τ関数に対応する佐藤グラスマンへの埋め込みが、conformal weldingから定まるタイヒミュラー空間からの写像となる、
という理解で正しいのだろうか?
Q3:
スペクトル曲線に対応する代数関数のアーベル拡大の極限をとると、代数曲線のmoduli上ではうまく極限が存在しないが、
普遍タイヒミュラー空間においては、極限がlaminationという形で存在する。
(ex. UNIVERSAL HODGE BUNDLE AND MUMFORD ISOMORPHISMS ON THE ABELIAN INDUCTIVE LIMIT OF TEICHMU ̈LLER SPACES
http://arxiv.org/abs/alg-geom/9406003)
では、この極限のリーマン面の周期を具体的に計算できるか?
Q4:
射影直線の場合に、
The equivariant Gromov-Witten theory of P^1
http://arxiv.org/abs/math/0207233v1
で計算されているGW-invariantsを、
スペクトル曲線のinvariantsとして計算できるか?
Gromov-Witten invariants of $\bp^1$ and Eynard-Orantin invariants
http://arxiv.org/abs/1106.1337v2
では、yがlog(z)の形になっているが、これはどのように理解するべきか?

Q5:
トーリック曲面の場合、ブレーンタイリングは、スペクトル曲線のアーベル拡大の極限に対応するのか?
(ex. http://www.princeton.edu/~masahito/files/2007/Kanazawa070601.pdf)
Q6:
Computation of open Gromov-Witten invariants for toric Calabi-Yau 3-folds by topological recursion, a proof of the BKMP conjecture
http://arxiv.org/abs/1205.1103v1
の、
4.9.2Renormalizing edges
の議論は、無分散極限の話に対応するのか?


Q6:
Ito-Nisioの定理により、Wiener空間のCameron-Martin空間は、普遍タイヒミュラー空間の正規分布によるbase change
とみなすことができる。
では、スペクトル曲線が実構造を持っていて、Floquet指数から定まる等角写像を、
それぞれのslitごとにブラウン運動をおくことによってえられるSLEは、どのような意味があるのだろうか?
また、固有値の区間が分かれているので、non-intersection Brownian motionとも見なせるが、
Macdonald processの場合に、対応するトーリックカラビヤウ3-foldのmirror curveから定まるSLE
を具体的に計算することができ、元のprocessと比較できるか?

2012年5月20日日曜日

スペクトル曲線のinvariants

簡単な場合にtopological recursionを確認してみたい。


幾何学的な背景として、
Geometrical interpretation of the topological recursion, and integrable string theories
http://arxiv.org/abs/0911.5096v1
では、S=(C,x,y,B):スペクトル曲線のJacobianへのworldsheetの写像、
という形でtopological recursionの式の同値な意味付けをしている。

そこで、(generalized)Jacobianが一番簡単になる場合として、
射影直線を2点でくっつけた場合、すなわち楕円曲線が退化した場合を見る。
そのために、射影直線の2重被覆をとるが、
可積分系、有理関数の複素力学系、ランダム行列でなじみ深い、
x(z)=z+1/z
y(z)=-z
をとる。
これは、単位円周を[-2,2]に2重に移す有理写像で、z=1,-1が分岐点。
(generalized)Jacobian Jは{0,∞}を除いた部分になり、半径と角度がflat coordinatesであり、
D-branesの運動は、単位円周上の円弧の角度成分を保った拡大縮小になる。
worldsheetΣからJへの写像が上記論文のDefinition4.1および分岐の条件を満たすとすると、
pants分解によって分解される部分は、
cylinderは原点中心の円環、
pair of pantsは1,-1を結ぶ二つの円弧と単位円周を外側と内側でつないでえられるもの、
と解釈される。
すなわち、Σは射影直線の分岐被覆で、{0,1,∞}のみで分岐し、
1での分岐度は2である必要があり、
Belyiの定理が使用でき、数体上定義された代数曲線になる。
(Belyiの定理自体は、
ガロア・タイヒミュラー群のLEGO理論
http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/744/1/65.pdf
にあるように、命題が正しいと解れば証明は難しくない)
worldsheetの長さの条件部分は変化させることができるので消え、
0,∞での分岐状態を指定するパラメータ(整数)が残る。
さらに、このpants分解のskelton graphsはJacobianにおける[0,1]の逆像で与えられ、
dual graphはdessin d'enfantsのgraphになる。

topological recursionをworldsheetsのmoduliの状態和(4-2)のLaplace変換、
として理解すると、
上記のスペクトル曲線の場合は、
dessin d'enfantsの個数の(整数値)Laplace変換となる。

topological recursionにおいて求めなければならない量は、
- prepotential
- log determinant of a Laplacian
そのため、初期値として、unstableな場合、すなわち、(g,n)=(0,1),(0,2)
の場合を見る必要がある。

上記のスペクトル曲線では、対応する可積分系は、周期的戸田格子であり、
運動量が0の場合は、
固有値は1の冪根の実部(z+1/z)で、対応する判別式はTschebysheff多項式になる。
(1のN乗根をとり、その実部を射影すると、N->∞で[-2,2]を埋める。)
また、行列模型として、GUEが対応する。
そのポテンシャル関数は単純な2次単項式であり、
時間発展はポテンシャルの高次摂動に対応する。

Combinatorics of the dispersionless Toda hierarchy
http://shell.cas.usf.edu/~wma3/NMMP-Xinjiang-2009_files/Xinjiang2-dToda.pdf
に、Catalan数を用いた(g,n)=(0,1)の記述と、dispersionless Todaによる
(g,n)=(0,2)の記述がある。
The spectral curve of the Eynard-Orantin recursion via the Laplace transform
http://arxiv.org/abs/1202.1159v1
で、その記述を用いて、具体的にtopological recursionの式を、
4. The Laplace transform of the number of dessins and ribbon graphs
で、Bergman kernelの記述とともに書いている。
そこでは、{1,-1}を{0,∞}に移した変数で記述している。

topological recursionで定まるinvariantsは、
- スペクトル曲線(幾何)
- 可積分系
- 行列模型
- string theory
に関連する。
* 行列模型->スペクトル曲線
From Random Matrices to Geometry: the "topological recursion"
http://www.brunel.ac.uk/__data/assets/pdf_file/0012/41070/eynard.pdf
では、large N expansionのleading termの確率測度のStieljes変換として、
スペクトル曲線の(x,y)を復元している。
この場合に、Bergmann kernelを決めるのは、
2点相関関数になる。(すなわち、正則1形式の基底を固定する情報がある。)

* スペクトル曲線->可積分系
Geometry of spectral curves and all order dispersive integrable system
http://arxiv.org/abs/1110.4936v1
では、
代数的なスペクトル曲線から、Lax pairsを復元している。

* string-theory->行列模型
Random Matrices and topological strings

http://www.blau.itp.unibe.ch/Eynard.pdf
toric Calabi-Yau 3-foldの場合に、行列模型が構成でき、
そのスペクトル曲線がmirror curveに対応することを説明している。

* 基本的なスペクトル曲線
GUEのuniversalityとしてAiry curveがでてくるが、
これは1点でのみ分岐するスペクトル曲線として基本的なものになる。
では、1点分岐の条件の下で、invariantsが何を示しているか、というと、
Intersection numbers of spectral curves
http://arxiv.org/abs/1104.0176v3
で、invariantsを具体的、すなわち代数曲線のmoduli上の積分で表している。

2012年5月10日木曜日

Wasserstein距離

情報幾何では、2つの確率分布を比較するのに
Kullback-Leibler距離を使用していた。しかし、これは、極めて荒い分別しかできず、
より細かい距離が応用面においても必要になる。
例えば、画像処理において領域分割の手法に、レベルセット法があり、
Chan-Veseの方法ではKL距離を使用していたが、
Wasserstein Active Contours
http://cvlab.epfl.ch/~fbenmans/teaching/Papers/wasserstein-active-contours.pdf
では、Wasserstein距離を使用している。
Wasserstein距離は、Legendre-Fenchel変換により、測地線が記述できる。

例えば、
Optimal Transport in Imaging Sciences
http://www.ceremade.dauphine.fr/~peyre/talks/2012-01-27-ircam.pdf
では、画像の輝度値のヒストグラムの最適輸送の凸解析による説明をしている。

確率測度の空間の幾何学
http://www.math.kyoto-u.ac.jp/~sohta/jarts/sugaku.pdf
では、
一般のリーマン多様体において、
最適輸送の説明をしている。(およびフィンスラー多様体)
測度を取る空間の曲率の上下の評価が必要であるが、
曲率の評価さえあれば多様体である必要はない。

測度距離空間のリッチ曲率と熱流
http://www.math.kyoto-u.ac.jp/~sohta/jarts/Nenkai12.pdf
では、
相対エントロピーの勾配流と熱流が同一視できることを説明している。

2012年5月9日水曜日

フロベニウス作用に対する妄想

有理整数環のBerkovich空間は無限素点と有限素点に対応する辺を持つ星形のグラフで、
trivial normに対応する頂点を持つ。
無限素点においては、ケーラー構造に対応してラプラシアンが定まり、
cohomology類の代表元として調和形式が取れる。
Hodge理論の比較同型定理は、
特異コホモロジーとde-Rhamコホモロジーの複素数係数拡大での比較だった。
有限素点においては、
ガロア表現を持つエタールコホモロジーと
de-Rhamコホモロジーの周期環係数拡大での比較だった。
そこで、有理整数環上定義された代数多様体に対して、
1元体上のガロア表現がもしあったとすれば、
無限素点から来るラプラシアンの生成作用素と
ガロア表現から来るフロベニウス作用素に
何か対応らしきものがあってしかるべきだ、と妄想したくなる。

また、遠アーベル幾何の思想は群から幾何構造が定まる、というものだが、
これは数論的基本群を副有限群と見ての表現環が、従順な群より情報を保持している、
(ex. http://mathsoc.jp/meeting/sougou/2009haru/2009_haru_ozawa.pdf)
と解釈できると思える。

そこで、ガロア表現からマルコフ連鎖を作る(ex. http://www.math.harvard.edu/~lior/work/random_groups.T.pdf)と、
操作と、
無限素点でのラプラシアンの生成作用素、
1元体におけるフロベニウス作用素
に対応がついてほしくなる。
1元体においては、フロベニウス作用が完備化により実数値に拡張されるが、
その議論と、
Markov連鎖を実数をパラメータとする過程に拡張する議論
を平行に行えれば嬉しい。

p進Hodge理論においては、
代数多様体から来るガロア表現の特徴付けとしてde-Rham表現があった。
その類似を辿れば、空間を決めずにMarkov過程を生み出す
Dirichlet形式における議論(http://www-an.acs.i.kyoto-u.ac.jp/~hino/file/yokou0808.pdf)
を1元体でのガロア表現と結びつけたくなる。
そして、幾何からくる表現の特徴付けが欲しくなる。

Resistance forms, quasisymmetric maps and heat kernel estimates
(http://www-an.acs.i.kyoto-u.ac.jp/~kigami/vdrflecture.pdf)

Analogies between group actions on 3-manifolds and number fields
http://arxiv.org/abs/math/0107210v2
をみると、
数体は実3次元多様体の類似と見なせる。
そこで、数体のガロア群が実際に実3次元多様体に作用している場合に、
対応するマルコフ過程によりflowを作ると、
それは数体の情報をどれだけ保持してくれるだろうか?

2012年5月4日金曜日

トーリック多様体とDiscriminant

Discriminants, Resultants, and Multidimensional Determinantsでは、
整数格子内の有限集合Aに対して、
トーリック多様体X_{A}
A-determinantalvariety ∇_{A}
が定義され、射影双対の関係になっている。
genericには、∇_{A}は超曲面で、
その定義多項式を
Discriminant Δ_{A}という。
Principal A-determinant E_{A}
が定義され、
A-secondary polytope Σ(A)はE_(A)のNewton polygonに一致する。
E_{A}の既約分解は、Δ_{A∩Γ}(ΓはAのfaceを渡る)の積として表される。

指数分布族に対してトーリック多様体が対応したが、
その混合分布を取ることが、射影双対を取ることに対応する。
従って、
EM法(ex. http://www.seanborman.com/publications/EM_algorithm.pdf)を
トーリック多様体とその射影双対
の幾何的な操作として理解したくなる。
なお、EM法は情報幾何においては、
双対接続を通して理解されていたが、なるべく接続の言葉を使用せずに、
代数幾何の言葉で理解したい。
というのも、
ベイズ確率論を、(もやもやした)確率の圏に対する関手とみなしたい、
という理由から。
グラフィカルモデルのように条件付き独立性のような構造を抽象化して、
その部分を表現する関手として、トーリック多様体が現れる、
と解釈したい。
基礎体に依存しない構造の話のはずなので、
1元体への還元を取ることができ、その場合がトロピカル多様体、
という形で形式化されるべき話だと思われる。


Tropical Discriminants
http://arxiv.org/abs/math/0510126
トロピカル幾何の立場で、Discriminantを計算している。

Elliptic curves in honeycomb form
http://arxiv.org/abs/1203.2356
グラフとして1-loopを取った場合、
Tate curveのspecial fiberが対応する。
special fiberの持ち上げを、
Berkovich空間と捉えることで、
(Th7の)conceptualな理解が得られている。

2012年5月1日火曜日

局所類体論

保型表現と Galois 表現
http://www.math.sci.osaka-u.ac.jp/~ochiai/ss2009proceeding/Yoshida_SummerSchool-1.pdf
淡中圏の考え方は
ベクトル空間の圏という枠組みを用いて、
種々の空間をGalois群の作用するベクトル空間の圏の対象と見なすことで、
統一的に理解することを目的としている。

An introduction to the theory of p-adic representations
http://arxiv.org/abs/math/0210184v1
p進HodgeにおけるGalois表現の圏と周期環の扱い
に対応する話が1元体であるか?
という疑問が出てくる。
すなわち、
1元体におけるWitt環とde-Rham周期環の定義があることから、
- 1元体のGalois表現の圏を構成できるか?
- crystalline周期環は何か?さまざまなGalois表現の圏に対応して周期環を構成できるか?
- 1-divisible groupのDiudonne theoryに対応するものはあるか?とくに、Kummer系列は存在するか?
- (φ,Γ)群の枠組みはあるか、特に表現の圏の線形代数による言い換えができるか?
などの疑問がでてくるわけだが、
Connesの論文で定義された周期環は柔らかい関数を多分に含んでいる。
気になるのは、
Hilbert空間で元が正則関数からなるもの、
といった固い空間と
それに比較して柔らかい空間が、
たとえばFourier変換を通して対応する場合があるが、
そうした空間の特徴付けをGalois群を用いて行うことができるか?
という点。

カーネル法(http://www.ism.ac.jp/~fukumizu/ISM_lecture_2010/Kernel_2_basics.pdf)
のような正値性をもつ再生核Hilbert空間の話と
トーリック多様体の幾何学
を結びつけることができるか?

Local class field theory via Lubin-Tate theory
http://arxiv.org/abs/math/0606108v2
局所類体論は、wildly ramifiedの部分を処理できれば、特に難しいところはない。
1次元の場合は、Lubin-Tate理論があるんで、その場合も
formal groupを用いて記述できる。

高次元局所類体論
http://msp.berkeley.edu/gtm/2000/03/
Invitation to higher local fields, Part I, section 2: p-primary part of the Milnor K-groups and Galois cohomology of fields of characteristic p
http://arxiv.org/abs/math/0012133v1
Invitation to higher local fields, Part I, section A: Appendix to Section 2
http://arxiv.org/abs/math/0012134v1
local ringにおけるKahler differentialの具体的な記述と
Bloch–Kato–Gabber’s theorem。


Invitation to higher local fields, Part I, section 9: Exponential maps and explicit formulas
http://arxiv.org/abs/math/0012140v1
指数写像により微分とK群の元の対応をつけている。
Invitation to higher local fields, Part I, section 13: Abelian extensions of absolutely unramified complete discrete valuation fields
http://arxiv.org/abs/math/0012144v1
Witt環と1次元Galois cohomologyの対応。

p-adic etale cohomology
http://archive.numdam.org/ARCHIVE/PMIHES/PMIHES_1986__63_/PMIHES_1986__63__107_0/PMIHES_1986__63__107_0.pdf
混標数(0,p)でのp冪のエタールコホモロジーにおいて、
mod pでは、de-Rham部分だけが出てきたが、
mod p^nでは、de-Rham Witt complexを必要とする。

Algebraic K-theory and crystalline cohomology
http://www.springerlink.com/content/8j7n4613481q4408/fulltext.pdf

2012年4月21日土曜日

グラフィカルモデル

確率分布の中で、具体的に計算ができて性質がよくわかるものをbuilding blockとしたい。
そのために、基本的な確率分布を列挙する。

Bernoulli分布
2値変数に対して、定義される。
2値ではなく自然数値にすると2項分布になる。
A={e1,e2}->R^{k-1}=R
[0,1]がモーメントマップの像で、これがパラメータ空間。

Beta分布
Bernoulli分布のパラメータに対する共役分布。
ベータ関数が周期として出てくる。

多項分布
2項分布の拡張として、n-単体で定義される。
Dirichlet分布
多項分布のパラメータに対する共役分布

がある。
これらはすべて指数分布族の範疇に属する。

Toric多様体と指数分布族との関係は、
ON THE TORIC ALGEBRA OF GRAPHICAL MODELShttp://math.berkeley.edu/~bernd/AOS0092.pdf
に記載されているように、
グラフィカルモデルの言葉で記述するのが見易い。

* Graphical model
PRML 8. GRAPHICAL MODELS
http://research.microsoft.com/en-us/um/people/cmbishop/PRML/Bishop-PRML-sample.pdf
確率モデルは、確率変数と確定的変数を用いた式で記述される。
確率変数の確率的要素の基本単位を定めて、
有向グラフと観測の有無の情報により、確率モデルに対する確率分布の性質を記述することを目的として、
有向グラフィカルモデルが定義される。

グラフィカルモデルで抽象化しているのは、
確率モデルにおける確率変数の依存性と、
確率変数の条件付き独立性。

* 確率分布に対する演算
確率変数の依存性に対するベイズの定理を用いることで、
有向グラフの向きを逆にする演算を行うことができる。
(これは、cluster代数におけるmutationの概念の類似と見なしたい。)この場合、指数分布族に対する共役分布のように、
パラメータの範囲が問題になる。
この演算において確率分布を求めるためには、
分配関数を計算する必要が出てくる。
すなわち、[0,1]をサイクルとする周期であるが、
パラメータが複素数であれば解析接続ができる。
この場合、出てきた値に何か意味がつくのだろうか?

また、別の確率分布に対する演算として、
混合がある。

グラフィカルモデルと、事後分布、混合、
の演算を繰り返してできる確率分布は、
グラフの各頂点に事前分布を与えると計算できる。

* 情報量
X:確率変数
に対して、情報量を、
I(X):=-log(p(X))
と置く。
I(X)は0<=p(X)<=1から0<=I(x)<=\infty
が成り立つ。

* total positivity
total positivityは、
モデルが定める多様体の実数値点が情報量を表す、
ということの言いかえとみなせる。

* 1元体
The Witt construction in characteristic one and Quantization
http://arxiv.org/abs/1009.1769v1

一般に、
k:標数pの有限体に対して、Witt環を構成すると、
W(k):標数0の環
となり、K'/k:有限拡大にW(k')/W(k)は商体が不分岐拡大となっている。
p進Hodge理論におけるガロア表現の取り扱いは、
不分岐拡大 p冪巡回拡大 暴分岐拡大
という形でガロア表現を分解し、
対応する周期環(B_{crys},B_{st},B_{dR})を用いて線形な情報に置き換えるのが、
効果的な手法だった。

標数1の有限semi-fieldとして
B={0,1}がある。
R:semi-ringがBを含むと、
和とスカラー倍に適合する部分順序が入る。
Rを商体に埋め込みたいが、そのためには、
multiplicatively cancellativeの条件が必要で、
このとき、冪は単射である。(lem4.3)
Rの例として、max-product代数がある。(logをとると、max-sum代数)
semi-ringから環を作る操作として、Symmetrizationがある。(Prop4.8)

冪が全射の時、perfectである、と定義する。(Def4.4)
これから、Frobenius写像に対応する写像が定義される。
これは正の有理数冪に対して定義されるが、完備化によりそれを実数上に拡張して、
one-parameter automorphism groupとしたい。
(Prop6.5)
ただし、完備化にあたって、p進体におけるpに相当する、
乗法の付値を与える元を一つ固定する必要がある。

標数1のmultiplicatively cancellative perfect semi-ring
に対して、完備化、加法の修正、Symmetrizationの操作により、
Witt環を定義する。
(Prop6.8, Def6.10)
ここで、加法の定義には、Entropyがでてくる。
(Th5.3)

Berkovich空間は、(multiplicative)semi-normを考えることで空間を定義したが、
その類似として、標数1においても、
Witt環上にsemi-normを定義できて、その完備化はBanach代数となる。
(Th6.15)
(ただし、Symmetrizationがあるので、multiplicative normにはならない。)

漸近展開におけるBorel総和法は、p進Hodgeにおける、
A_{crys}の定義に対応する?

* 周期環
- 整数環上のモデルを作り、局所化し、係数体で還元したものの性質を見る
という局所化の手法は広く用いられているが、
無限素点における還元とは何か?
1元体における還元とは何か?
ということが疑問になる。
無限素点として実数がとれる時に、
多様体の実数値集合の性質を見ることと、
Witt環上の性質、係数体での還元、
ということが問題になるが、
The universal thickening of the field of real numbers
http://arxiv.org/abs/1202.4377v1
では、実数体を係数に持つWitt環を構成し、
周期環を定義している。
有界変動関数に対して、長さを用いた逆関数を定義し、
ラプラス変換とWitt環の展開の類似を示している。

2012年4月11日水曜日

GKZ超幾何関数

Log-Linear Models, Toric Varieties, and Their Markov Bases
http://www.math.harvard.edu/~seths/lecture2.pdf

指数分布族がトーリック多様体のモーメント写像の像に対応する。
マルコフ基底と(A,h)の対応がつき、
マルコフ連鎖モンテカルロにより乱数を用いたサンプルを生成する場合の、
遷移グラフとマルコフ基底の代数的操作が対応する。
では、遷移グラフは、トーリック多様体のスペクトル曲線と関係があるか?

トーリック多様体の同変直線束の積が、
多面体のミンコフスキー和で記述できることを、
hyperfieldの観点から解釈できないか?

Thermodynamics and the moment map
http://arxiv.org/abs/1108.3472v1
統計力学の枠組みでGibbs分布に基づく分配関数は指数和。
(1.6)で超幾何分布がでてくる。
(2.1)で複数のハミルトニアンからなる写像で凸多角形をEuclid空間に埋め込むことにより、
指数分布族とトーリック多様体のmoment mapを関連づけている。
逆温度は、指数分布族のパラメータと解釈される。
Prop2.3では、
- エネルギー期待値により、パラメータ空間は状態の凸閉包のなす凸多角形にdiffeoに移る。
- Legendre変換により、分配関数の対数とエントロピーが対応する。
が示されている。
指数分布族の十分統計量、とは単に、凸多角形内のエネルギー期待値のことで、
この場合には情報幾何でいうところのe-座標系とm−座標系の対応になる。


Symplectic Toric Manifolds
http://www.math.ist.utl.pt/~acannas/Books/toric.pdf
Th1.2.2 Delzant polytopeとsymplectic Toric manifoldsは一対一に対応する
1.3.3でgenericなベクトルに対するmoment mapをとって、
Morse functionとしている。

GKZ Hypergeometric Structureshttp://arxiv.org/abs/math/0511351v1
- Aとhによって微分方程式系が定まる
微分方程式系はEuler積分の形から導出される系と
トーラス作用から導出される系の2種類がある。
- Fourier-Γ seriesが定義でき、GKZ微分方程式系を満たす
- Aの生成元でよい性質のものがとれる
Secondary fan
グレブナー基底
Stanley-Reisner ideal
-区分的線形関数
Tropical reductionとみると、fiberは指数和

GKZ超幾何関数は、トーリック多様体の量子化を与えるものと
解釈できる。
secondary fanのmaximal coneを与えると、
Fourier-Γ seriesの無限小変形をすることができる。
これは GKZ微分方程式の解を与える。

ある可積分系における固有関数の分布関数の漸近挙動
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1364-10.pdf
Distribution laws for integrable eigenfunctions
http://arxiv.org/abs/math/0306189v1

2012年3月19日月曜日

有理Cherednik代数

From Double Hecke algebra to analysishttp://arxiv.org/abs/math/9806097v2

Representations of rational Cherednik algebras
http://arxiv.org/abs/math/0504600v2
Hecke代数の階層として、
0次元:Weyl群 <-> 有限Hecke代数
1次元:nilpotent part <-> affine Hecke代数
2次元:包絡環 <-> double affine Hecke代数
と思える。
幾何学的実現は、finite,affine Hecke代数については、
Chriss-GinzburgによるWeyl群の群環のSteinberg多様体上の同変K群による表現
曲線のHall代数またはLusztigによる構成
があったが、DAHAについて、幾何学的実現があるか?
という問題意識がある。
DAHAの前に、それが退化した形で有理Cherednik代数
を見るのが自然のようだ。

量子群の場合結晶基底の概念があったが、
有理Cherednik代数の場合はどうか?
という疑問がおこる。
そのために、まず表現論を見る必要がある。

有理Cherednik代数の表現論は、
highest weight categoryとして捉えられる部分がある。
すなわち、
多項式環を二つ用意して、それぞれに群を作用させたものを、
一方の多項式環を微分作用素と見なすのが有理Cherednik代数であるから、
Verma加群に対応するもの、
有限列をもつこと、
既約表現の具体的な構成、
sl2-tripleの構成
がある。

Lecture notes on Cherednik algebras
http://arxiv.org/abs/1001.0432v4
の3章では、
PBW型の基底の表示と
表現論の証明の概説があり、
3.14で群が巡回群の場合の例がある。
4章では、行列積分と多項式表現から定まるsymmetric formのdeterminant因子での値を結びつけている。
有理Cherednik代数の中心の値に関する漸化式として示している。
これから、ガンマ関数の一般論を援用して、
The Macdonald-Mehta integralを示している。
(行列積分とCohomological Hall代数との関係、それと有理Cherednik代数の関係
と、このあたりの代数系のつながりが、Shiffmann-Vasserotの話と絡めて気になるところだ。)

共形場理論では、KZ方程式により、
Braid群の作用を考えることができたが、
有理Cherednik代数の場合も、discriminant divisorで局所化することにより、
Euler作用が0の加群からBraid群に関する局所系に対応させる
KZ-functorを考えることができる。

Microlocalization of rational Cherednik algebras
http://arxiv.org/abs/0705.1245v2
F-actionの概念が導入されている。
有理Cherednik代数とそのspherical subalgebraが
森田同値となることを利用して、
spherical subalgebraの量子化を行う。

Representation theory of the rational Cherednik algebras of type Z/lZ via microlocal analysis
http://arxiv.org/abs/1003.3407v2
巡回群の場合の有理Cherednik代数の表現論を、超局所解析を用いて
アーベル圏として同値な圏に移している。

2012年3月14日水曜日

Persistent homology

Topology and Data
http://comptop.stanford.edu/u/preprints/topologyAndData.pdf
では、点群に対して、単体的複体を構成し、
persistent cyclesを計算している。
これは、離散的な集合から非アルキメデス的なデータを作る操作と見なすことができないだろうか?

Measuring Shape with Topology
http://arxiv.org/abs/1011.2258
では、フラクタル的な図形に対して、
persistencyを計算している。

カントール集合のような完全不連結集合に対して、
persistencyを計算すると、
cycleの生死の状況はtree構造になり、カントール集合を境界とする非アルキメデス距離空間の構造が復元される。

Euler Calculus with Applications to Signals and Sensing
http://arxiv.org/abs/1202.0275v1
整数値可構関数に対して、Euler数を計算している。
層と関数の対応を(Grothendieckの辞書はない状況だが)用いている。
Fourier-Sato変換やBessel変換といった超局所解析のおもちゃ版として、
馴染み易い。

* クラスタリングの拡張としてのpersistent homology
機械学習におけるクラスタリングは連結集合を数えていた。
persistent homologyは高次の特徴を捉えるもの。
(関連して多様体学習や計算代数統計といったキーワードがある。
趣味で学ぶほどには興味はわかないが、
プログラマとしての一般教養として知っておきたいところである。子会社勤務のIT土方としては、業務に直接の関係はないのが辛いところだ。)

2012年3月4日日曜日

Jack多項式

Alday-Gaiotto-Tachikawa 予想とその発展
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~sokened/sokendenshi/vol11/lectureAGTfinalDenshi.pdf
- Gaiotto による M5-ブレイン構成
NSブレーンとD4ブレーンによる図式
弱結合はパンツ分解がグラフに退化している状況に対応する。
また、
質量がない場合は、特異有理曲線の場合で、曲線の変形が質量パラメータに対応する。
すなわち、ハイパー多重項のパラメータはSeiberg-Witten微分の2次の極の係数に対応する。
これをリーマン面の2次微分とリボングラフの対応から理解すると解り易い。

- ストレステンソルと量子 Seiberg-Witten 微分
ストレステンソルを入れた時のWard-Takahashiの恒等式とSW微分の質量変形の解釈の類似。
- Dijkgraaf-Vafa β-アンサンブル
- Zorichのflat surfaceとGross Siebertのtropicalの話
リボングラフの話と2次微分の関係を、退化を込めて記述する。
そのために、分岐を許した被覆をとる。

- 幾何学的転移
行列模型のラージ N 極限における振る舞いはスペクトル曲線として、古典的な曲線に量子補正が加わったものと
解釈できる。


Generalized matrix models and AGT correspondence at all genera
http://arxiv.org/abs/1011.5417v2

Quantum Hitchin Systems via beta-deformed Matrix Models
http://arxiv.org/abs/1104.4016v2

* Calogero-Sutherland
A lecture on the Calogero-Sutherland models
http://arxiv.org/abs/hep-th/9405104v3
Calogero-Sutherland模型は、
変数¥betaを用いて、調和振動子のハミルトニアンを変形したもの。
¥beta=0のときは、元々の調和振動子で、
¥beta=1のときは、パウリの排他律が成り立つ、すなわちフェルミオンになる。
実際には、円周上の自由電子のモデルになる。
そこで、変数を円周の普遍被覆、すなわち直線上に引き戻すことができる。(2.4)
さらに励起状態/基底状態はJack多項式で表される。
対角化のために、Dunkl作用素が使用される。

Jack polynomials and Hilbert schemes of points on surfaces
http://arxiv.org/abs/alg-geom/9610021v1
射影直線の直線束の全空間にトーラス作用を入れたもののHilbert schemeをみる。
直線束のdegreeがJack多項式のパラメータに対応する。
Jack多項式のdominant順序はトーラス作用による軌道の順序に言い換えられる。(Prop4.14)


The cohomology rings of Hilbert schemes via Jack polynomials
http://arxiv.org/abs/math/0411255v1
Nakajimaの論文とトーラス作用が異なっているが大筋は一緒。

The elliptic Hall algebra and the equivariant K-theory of the Hilbert scheme of $\mathbb{A}^2$
http://arxiv.org/abs/0905.2555v3

Conformal blocks in Virasoro and W theories: duality and the Calogero-Sutherland model
http://arxiv.org/abs/1110.1101v2

Laumon Spaces and the Calogero-Sutherland Integrable System
http://arxiv.org/abs/0811.4454v2

The elliptic Hall algebra, Cherednick Hecke algebras and Macdonald polynomials
http://arxiv.org/abs/0802.4001v1

Cherednik algebras, W algebras and the equivariant cohomology of the moduli space of instantons on A^2
http://arxiv.org/abs/1202.2756v1

* beta ensembleと概均質ベクトル空間
Eisenstein級数と概均質ベクトル空間のゼータ関数
http://www.math.kobe-u.ac.jp/publications/rlm-2-106.pdf
行列積分をアデール化したいが、
有限素点の場合にポテンシャルとHaar測度を設定して計算するとどうなるか?


代数体上の直交群の非正規玉河数の密度につ いて
http://www2.kobe-u.ac.jp/~mhsaito/agsymkobe07/proceedings/hayasaka-yukie.pdf

2012年2月24日金曜日

有理整数環上のHall代数

The spherical Hall algebra of Spec(Z)
http://arxiv.org/abs/1202.4073v1
正定値二次形式と格子の組を整数環上のベクトル束と見なして、
その上のHall代数を構成している。
代数曲線の場合にベクトル束のHall代数がshuffle代数で記述できていたので、
同様の記述を試みている。
ただし、無限素点の存在とL関数のmeromorphicな性質により、
実解析的な考察が必要になり、
shuffle代数の記述にPayley-Wiener型の議論が必要になる。
L関数の関数等式は、GL(n,R)の保型形式の関数等式が対応する。

代数曲線の場合と同様、直線束で生成される代数(Spherical Hall algabra)を調べることが、
第一歩となるが、
整数環の場合は、生成元として、Eisenstein-Selberg級数がとれる。
関係式として、2次のものを調べると、Eisenstein級数の関数等式がでてくる。
代数曲線の場合に種数が1以上でH^{1}がnon-trivialの場合、零点に対応して、3次の関係式が現れる。
整数環の場合も2次の関係式で閉じていないが、
3次の場合は、Th7.7で
the space of new cubic relations in SH modulo rescaling is identified with the space spanned by nontrivial zeroes of ζ(s)
と記述されている。


* 多重L関数と、Whittaker模型
Whittaker vectors of the Virasoro algebra in terms of Jack symmetric polynomial
http://arxiv.org/abs/1003.1049v2

Archimedean L-factors and Topological Field Theories I
http://arxiv.org/abs/0906.1065v2

Archimedean L-factors and Topological Field Theories II
http://arxiv.org/abs/0909.2016v2

2012年2月22日水曜日

代数曲線のHall代数

The Hall algebra of a curve
http://arxiv.org/abs/1201.6185v1
有限体上の完備代数曲線Xに対して、その上の連接層のなす圏から、
Hall代数を構成する。
Hall代数の代数的双対には余積が定義できるが、
propernessからHall代数そのものに余積が定義できる。
hereditaryであることと、Cartan形式によりbraided categoryになり、
積と余積が整合的である。
torsion sheavesからできる代数はHecke代数になる。

H:ベクトル束のHall代数
H_{coh}:連接層のHall代数
A:tosion sheavesのHall代数(=Hecke代数)とすると、
H_{coh}はHのAによるcross積になる。
また、Aは各点でのHecke代数A_{x}のテンソル積になり、
Spec(A_{x})=local Witt schemeである。
これは、ring schemeでもある。
よって、Spec(A)は(global)Witt schemeとなる。
Aの指標はL関数を定める。
(global)Witt schemeのring schemeとしての構造は、
L関数の積構造を与えるが、これが、
Rankin-Selberg methodとなる。

Hall代数の元はベクトル束のmoduli上の関数とみなせるので、
Weil起源のmoduliのアデールによる記述から不分岐保型形式と思える。
保型形式の積は、parabolic inductionに対応する。
保型形式がcuspidalということはHall代数の元として、
primitiveであることになる。
Hall代数において、保型形式に対してHecke代数が作用するのは、
元々のHall代数の積構造を通してである。
よって、Hecke eigen cusp formという条件を考えることができる。
Hecke eigen cusp forms全体に対応するWitt schemeの部分schemeをΣ
とすると、
HをΣによるshuffle代数で記述することができる。


STANDARD MODELS FOR FINITE FIELDS
http://www.damtp.cam.ac.uk/user/na/FoCM/FoCM08/Talks/Lenstra.pdf
有限体の拡大に対して、標準的な操作を記述している。


On the arithmetic of the BC-system
http://arxiv.org/abs/1103.4672v1
整数環の上のHall代数は未だに定義できていないが、
BC系と関係はつくのだろうか?


The universal thickening of the field of real numbers
http://arxiv.org/abs/1202.4377v1
p進Hodgeに対応する周期環を実数体に対して、構成している。
ただし、hyperfieldの概念を用いている。
6.3 Table of correspondences with p-adic Hodge theory
をみると、
実数体のWitt環を{0,1,-1}を剰余体とするhyperfieldとしている。
また、p乗の代わりに累乗により射影系を定義している。
また周期環は、有限測度のラプラス変換になる。

2012年2月6日月曜日

結晶基底

量子群の結晶化
http://www.journalarchive.jst.go.jp//jnlpdf.php?cdjournal=sugaku1947&cdvol=44&noissue=4&startpage=330&lang=ja&from=jnlabstract

sl2の場合から初めて、一般の半単純Lie環の場合に説明をしている。

Lectures on canonical and crystal bases of Hall algebrashttp://arxiv.org/abs/0910.4460v2
chapter4 Th4.6
Kashiwara operatorの説明と、どのような場合にcrystalが
表現から来るものの類似になっているかの説明がある。

Tensor product multiplicities, canonical bases and totally positive varieties
http://arxiv.org/abs/math/9912012v1
Littlewood-Richardson ruleの一般化。
polytopeを用いてテンソル積の分解の重複度を表している。
そこで、polytope->Cartan subalgebraというmoment mapもどきが定義され、
そのpush forwardによりDuistermaat-Heckman measureが定義できる。
この測度はLebesgue measureに対して絶対連続で、区分的多項式を密度関数に持つ。

Continuous crystals and Duistermaat-Heckman measure for Coxeter groups
http://arxiv.org/abs/0804.2356v2
Theorem 5.1. The stochastic process Pw0 η is a Brownian motion in V conditioned, in Doob’s sense, to stay in the Weyl chamber C ̄.
とCrystalの時間を無限素点で完備化して、Brown運動として捉えている。

Introduction: Multiple Dirichlet Series
http://sporadic.stanford.edu/bump/multiple.pdf
有限素点においてCrystalによりWhittaker functionを記述している。
さらに、Crystalの組み合わせ的構造から、自然に
6頂点モデル(Ice type model)の分配関数として計算ができることを示唆している。
この元々の動機は、多重Dirichet級数の解析接続とFourier係数の明示式から来ている。そのため、n重被覆も問題にしている。
Crystalの上での和を、有限素点を時間とするBrown運動(局所定数関数)とみなして、実務元素点を時間とする連続Crystalと対比させるのも面白い。
また、多重Dirichlet級数を有限体上のcurveの場合に考えて、Langlands対応の話をCrystalの話に結びつけることも、
必要なことと思われる。

2012年1月21日土曜日

うば玉のやみのくらきに

アカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ。人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。
(太宰治 右大臣実朝)
本日、勤務先の親会社が特設注意市場銘柄に指定されました。

13/2 ways to count curves
http://arxiv.org/abs/1111.1552v1
hereditary algebraのalmost split sequenceは、
1次元の代数曲線の連接層の導来圏でstabilityを変える操作に対応していた。
3次元のCalabi-Yau多様体のうえで、curveとその上の点の組み合わせに対応するobjectをとると、stabilityの変更の記述ができる。
それが、Stable pairsという定義になる。
ここでは、3d Calabi-Yau多様体におけるcurvesの数え上げのために、
Gromov-Witten不変量
BPS不変量
Donaldson-Thomas不変量
Stable Pairs
を並べて、相互の関係についてまとめられている。
不変量は、
ambient spaceの変形に対してある程度不変であることが要請される。

CURVES ON K3 SURFACES AND MODULAR FORMS
http://arxiv.org/abs/1001.2719v3
特殊な3d Toric Calabi-Yau多様体について
同変の意味でのGromov-Witten不変量とStable Pairsの対応を示し、
それから任意の3d Toric Calabi-Yauに対して、
localizationとdegenerationのcompatibilityから
同変の意味でのGromov-Witten不変量とStable Pairsの対応を導く。(Theorem21)
K3曲面の退化族に対して、それと1次元複素平面との直積をとったCalabi-Yau多様体をみる。
退化族に対するvirtual classの性質(Theorem16)から、3d Toric Calabi-Yau多様体になっているfiberをとり、
そこで、GW/Stable Pairsの対応を見る。
これから、さらに手順を踏んでK3曲面のprimitive classに関するGW/Stable Pairs対応が得られる。
descendent potential functionはSL(2,Z)に関する準保型形式として記述できる。

2012年1月19日木曜日

スペクトル曲線と行列積分

Random Matrices and topological strings
http://www.blau.itp.unibe.ch/Eynard.pdf

topological stringの分配関数を行列積分で記述する。
ただし、ターゲットの空間はtoric 3d calabi-yau。
この場合、toric fanから2次元の組み合わせ的構造(topological vertex)
が生成され、それから一定手順で分配関数が計算できる。
分配関数を行列積分で記述するには、
ファンデルモンドの行列式、
留数公式、ガンマ関数、Cauchyの行列公式、ラプラス変換を使用する。

分配関数のlog、すなわち自由エネルギーはtopological expansionを持ち、
それを具体的に計算するための漸化式は、
loop equations(Schwinger-Dyson)で定まる。

さらに、loop equationからspectral curveが定まるが、
これは、実は、mirror curveでもある。
すなわち、元のtoric 3d Calabi-Yauのミラーは、
mirror cuveで退化する構造を持ち、
mirror curveから、分配関数の高次の項は一意的に定まる。

A matrix model for the topological string I: Deriving the matrix model
http://arxiv.org/abs/1003.1737v2

toric Calabi-Yau 3-foldに対して、行列模型を構成している。

A matrix model for the topological string II: The spectral curve and mirror geometry

http://arxiv.org/abs/1007.2194v1
spectral curveを構成し、これがmirror curveであることを示している。

Two Dimensional Kodaira-Spencer Theory and Three Dimensional Chern-Simons Gravity
http://arxiv.org/abs/0711.1932v1

loop equationsからBergmann kernelなどがでてくる様子を、Riemann面の場合に導出している。

Topological recursion and mirror curveshttp://arxiv.org/abs/1105.2052v1
GW invariantsの定数項についてもrecurtion formulaから導出ができることを示している。

Matrix models for $β$-ensembles from Nekrasov partition functions
http://arxiv.org/abs/0912.5476v2
Figure1にあるように、
Seiberg-Witten
Topological strings
Liouville theory
Matrix models
に対応がつくことが予想されている。

2012年1月13日金曜日

DT invariants

From affine manifolds to complex manifolds: instanton corrections from tropical disks
http://www-math.mit.edu/~auroux/frg/mit08-notes/M.%20Gross%20-%20Slides%20-%20From%20affine%20manifolds%20to%20complex%20manifolds.pdfでは、
整affine構造を持つ実多様体に対して、
tangent bundleとcotangent bundleをaffine構造、flat coordinatesから決まる格子で割ることにより、
互いにdualなtorus fibrationを作っている。
その例として、コンパクトトーラスがある。
すると、ログ構造を持った多様体についてみたくなる。
特異点を許す場合で特異点を除いた部分に整affine構造が入っているとき、
これに近いコンパクト複素多様体を構成する、
ということが主題。
(rigid analytic K3についての構成が
Affine structures and non-archimedean analytic spaces
http://arxiv.org/abs/math/0406564v1
で述べられている。
その6.7K3 surfaces and ZPL-actions on S^{2}
では、複素射影直線を底空間とする、楕円K3曲面に対して可積分系の族を構成しているが、
そこから後はconjecturesの連続。)
特異点周りの挙動を記述するために、rigid analyticな話からさらに簡略化して、
tropicalな部分を見よう、ということで、
tropical vertexがでてくる。
dualityをdiscrete Legendre transformの形で記述できる。

toy exampleとして、
lattice polytopeを与えてそのthickeningを構成している。
次元を一つ上げてNewton polygonを作り、normal fanを張り合わせて、
変形空間としてアファイン直線上の族でspecial fiberがtoric varietyの貼り合わせであるものを構成できる。

特異点がある場合には、polytopeの辺上に特異点があるとして、
monodromyにあわせてglueingを変える。
ただし、自己同型を追加する必要がある。

ここで最後に追加される部分が、
Motivic Donaldson-Thomas invariants: summary of results
http://arxiv.org/abs/0910.4315v2
にあるDT invariantsの計算と関係しているようだ。
(元の、Borcherdsの無限積を持つ保型形式との関係は、
7.4Donaldson 4d theory, Borcherds automorphic forms
に、少し触れられている。)

Vetex operator algebraはCFT,すなわち2次元の話で、
DTはゲージ理論、4次元の話なので、
両者を関係づける背景はAGT予想ということになるのだろうか?
その中で、テータ積分はどこにでてくるのか?
ミラー対称性をみるための3次元カラビヤウで楕円曲線との直積を取った部分の情報が、
落ちてくるのだろうか?

2012年1月8日日曜日

無限積を持つ保型形式とテータ積分

Enriques surfaces and root systems
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~mukai/paper/Kinosaki_proc3.pdf

エンリケス曲面はTorelli型の定理が成り立つので、
偏極Hodge構造で同型類が定まる。

エンリケス曲面でE7の対称性を持つもののモヂュライと
Siegel3-foldとの幾何的対応が、
genus2の曲線->curveのJacobianで定まるアーベル曲面->対合を取ってblow-upによる楕円K3曲面->対合を取ってE7-Enriques曲面
で定まる。
モジュライに適当なレベル構造が入ったとして、保型形式を具体的に作る方法として、
ひとつはBorcherdsによるΦ関数がある。
これは、analytic torsionと見なせる。

On the value of Borcherds Φ-function
http://www.fields.utoronto.ca/programs/scientific/11-12/CalabiYau/Yoshikawa.pdf
Singularities and Analytic Torsion
http://www.las.osakafu-u.ac.jp/~kazuko/kyoto2011/PDF/Yoshikawa.pdf

* theta liftingにより無限積を持つ保型形式を作る
Infinite products in number theory and geometry
http://arxiv.org/abs/math/0404427v1

Chow群に値を取るHeegner divisorのgenerating functionを定義して、
それが、Eisenstein seriesとなることを説明している。
主要な手法は、theta積分で、この部分を、どのように解釈すればいいのかがよくわからない。
表現論的には、Howeのdual reductive pairの話になる。

Picard groups of Siegel modular threefolds and theta lifting
https://www.math.lsu.edu/~hoffman/tex/toronto/siegelthetalift.pdf
では、Siegel threefoldのPicard群の生成元をLefshetz classとtheta liftingからくる部分に分けて、
後者に対応する因子が、Humbert surfacesとなることを主張している。


* theta lifting
Introduction to theta liftings
http://www.math.mcgill.ca/goren/Montreal-Toronto/Getz.pdf

* geometric theta lifting
Moduli of metaplectic bundles on curves and Theta-sheaves
http://arxiv.org/abs/math/0405021v5

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テータ積分がでてくるところを理解するためのキーワードとして、
BPS状態、壁越え、
があるようだ。
(
BPS states and algebras from quivers
http://arxiv.org/abs/hep-th/0006189v3
では、“correspondence product.”
という概念があって、それはほとんどRingel-Hall algebraと書かれている。とりあえず、そのまま受け入れてみる。

Quiver varieties, affine Lie algebras, algebras of BPS states, and semicanonical basis
http://arxiv.org/abs/math-ph/0206012v1
では、クライン型特異点を持つ2次元orbifoldの連接層の安定性の話とBPS状態をみていて、root系の言葉で記述している。

BPS states, crystals and matrices
http://arxiv.org/abs/1106.4873v1
では、トーリックCalabi-Yauの場合に、
行列積分の中にテータ関数をいれてユニタリ群上でテータ関数を積分している。(5.2)
これは、フェルミオンの期待値を計算することに相当する。

BruinierのLNM1780の設定では、
1次元上半平面*格子のGrassmann多様体の上の関数を核関数
として、テータ積分を作っていたが、Grassmannのほうは、
壁越えのおこる空間で、BPS状態がHeegner divisorに対応するのだろう。
一方で、アーベル曲面のmoduliとしては、Heegner divisorは自己同型が能う限り大きくなる部分であるから、
多分、BPS状態のcoherent性と見て納得がいくのだろう。
ただ、Heegner divisorが算術的Chow群の元と見ても整合的なのは、数論性がさらに深い意味を持つということなのだろう。

色々な概念が絡み合っているようだが、
どこに重点を置いて整理、理解すればよいだろうか?
)