2009年7月28日火曜日

サマースクール予習(Tsallis統計)

[1]エントロピーの公理的定式化から複雑系の理論へ(http://www.ne.jp/asahi/hiroki/suyari/0810suyari_IT_invited.pdf
[2]非平衡系の統計力学(藤坂) 4章
[3]銀河の分布を表す統計力学(http://www.nara-wu.ac.jp/initiative-MPI/images/Nakamichi%20.pdf)

統計力学は"more is different"の世界を記述するための道具。
しかし、宇宙のように重力で支配される階層構造はBoltzmann統計でうまく記述できない。
それをcurve fittingしてみるとTsallis統計がでてくる、とのこと。
TsallisエントロピーはShannonエントロピーを導出する際の加法性についての条件を変更して得られるエントロピー。

- Shannonエントロピーは符号化やKLダイバージェンスで現れてくる。Tsallisエントロピーが適用可能なデータとはどのようなものになるのか?

2009年7月27日月曜日

サマースクール予習(情報幾何)

[1] 情報理論の基礎(村田) 3章、6章
[2] 情報幾何の方法(甘利長岡) 1-3章
[3] パターン認識と機械学習(ビショップ)邦訳版 9章、10章

α-接続の概念が直感的に役に立つのは、
EMアルゴリズムにおけるEステップとMステップの意味が、
α=1,-1に対応するα-ダイバージェンスによる射影と捉えられる、
という点。([1])
ただし、(混合ガウス分布における)パラメータと潜在変数の違い、
を幾何的にはっきりさせないと意味がないので、
あくまでKLダイバージェンスを理解しやすくするため、と捉えておく。

[2]の7.1において線形計画法と完全可積分系との関係が言及されていた。
行列のQR分解においては、いったんJacobi行列に変形して、
有限非周期Toda格子として軌道の極限を見ることで対角化する、
という考え方が利用されているが、そこには情報幾何はあらわには現れない。

- 双対接続におけるポテンシャルで計算してみようという気になるものが果たしてあるのか?
- フロベニウス多様体のflat座標に関して、α接続を考えると何かご利益はあるか?
という辺りが気になっているところである。

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ヘッセ多様体はリーマン計量がポテンシャルの座標の2回微分で書かれているものだった。
フロベニウス多様体はスーパーポテンシャルをある変数で微分したものがヘッセ多様体の意味でのポテンシャルになっている。
では、α接続と多様体の上の計量について、何か関係がつくだろうか?
まずはフロベニウス多様体における計量の族を見る必要がある。
Flat pencils of metrics and Frobenius manifolds
http://arxiv.org/abs/math/9803106

2009年7月25日土曜日

Witt環と1元体

Cyclotomy and analytic geometry over F_1
http://arxiv.org/abs/0809.1564
に1元体についてのサーベイとWitt環についての考察があった。

Witt環は環Rから新たな環W(R)を作るもので、
標数pのものを標数0に持ち上げるためによく使用される。
http://www.claymath.org/programs/summer_school/2009/witt.pdf

とくにF,Vを用いてformal Groupを記述するCartier-Diudonne theoryをみると、
Sato-GrassmannにおけるΓの記述になる。
Notes on Cartier-Dieudonne Theory
http://www.math.upenn.edu/~chai/course_notes/cartier_12_2004.pdf

そこで標数pでp->1としたときにどうなるか?
という疑問は自然なのだが、
Frobenius写像はp->1のときに微分写像に行くと思えるから、
微分環を考えることになるはず。

一方上のサーベイでは、operadとの関係(あるいは点付リーマン面のmoduli)
との関係が記述されていた。

operadにおける、対称群の作用と結合に対する整合性は、
気分的にKolmogorovの確率測度の拡張定理を想起させる。

とすると、思いっきり言葉の連想だけだけど、
http://www.claymath.org/programs/summer_school/2009/prelimnotes.pdf
に丁寧に解説されているFontaineのperiod Ring(BdR,Bcris,Bstなど)を、
Wiener空間的なものと思えないだろうか?
(φ,Γ)-moduleはp->1のとき、(微分,F1の持ち上げ)-moduleになって、
p進Hodge的なものと古典的なHodge分解とを、Wiener空間を経由して結ぶ、
ということができれば、楽しい。

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Witt環を用いてbosonizationをSpec(Z)上で記述しているのは、
New bosonization and conformal field theory over ${\bf Z}$
http://projecteuclid.org/DPubS?service=UI&version=1.0&verb=Display&handle=euclid.cmp/1104178249

2009年7月17日金曜日

KdVと逆散乱法

Strum-Liouville型の作用素に対して、
スペクトル測度からポテンシャルを決定する逆散乱法は、
KdV方程式を解くために利用された。

1. ポテンシャルが十分遠方で0という仮定の下で、異なるポテンシャルに対応する微分方程式の解をつなぐ積分作用素Kを見つける
2. Kを求めるために別の対称作用素Fを見つける。KとFはGelfand-Levitan方程式により対応する
3. スペクトル測度から実際にFを計算する式を見つける
4. FからKを計算し、Kからポテンシャルを計算する
という手順だった。(非線形波動とソリトン 10章)

ポテンシャルが無反射の場合、Fは簡単な式になり、ポテンシャルは有限次元の行列の行列式を2階微分したものになる。

これらを確率論的に表現したのが、

確率解析のKdV方程式への応用について
http://www2.math.kyushu-u.ac.jp/~taniguch/paper/903_kdv_orikiken_ln.pdf
にあった。
しかし、この場合はポテンシャルが遠方で0という制限がきつく、
たとえば周期ポテンシャルは枠組みの外になる。

スペクトル曲線は周期ポテンシャルの場合に出てくるから、それらを込みにした対応をつける必要が生じる。

Spectral theory of re‡ectionless potentials and relatedtopics
http://sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/~kotani/specsymp2008v2.pdf
には、
ランダムポテンシャルの場合について、佐藤グラスマンにおけるflowを作っている。

おおらかに、
周期ポテンシャル<->スペクトル曲線<->flowは曲線のJacobian
だから、
ランダムポテンシャル<->flowは曲線のJacobianたちをふらつき、無限次元軌道で補間される
という対応になる。
具体的にどのようにflowが計算されるのか、もう少し見てみる必要がある。

"Integrable Systems"にあるSegalのIntegrable systems and inverse scatteringでは、
散乱行列をLoopとみなしていて、restricted Grassmannからポテンシャルへの写像を作っていた。
この辺りの対応を見たい。

2009年7月8日水曜日

ブラウン運動についてもう少し

http://www.math.kyoto-u.ac.jp/probability/sympo/PSS03abstract.pdf

リーマン多様体上のブラウン運動を接枠バンドル上のそれから射影して構成する方法がのっていた。
ユークリッド空間に埋め込んで具体的に作れるというのは解り易い。

リーマン多様体についてブラウン運動が定義できると、
多様体の幾何学的性質からブラウン運動にどのような制限がつくか?
という疑問がわく。
- 接続によって水平持ち上げがあるが、ブラウン運動の持ち上げもある。基本群とブラウン運動の振る舞いについてなにか関係がつくか?基本群の作用で和をとって落とした確率過程はブラウン運動になるか?
- 完備でない多様体Xについて、(Y,Z) YはXのコンパクト化、Z=Y\Xとして、(Y,Z)のブラウン運動の挙動からXのブラウン運動の挙動について何かいえるか?
- もしXが複素多様体で、Zを正規交差にとって、Hodge理論が使用できる状況であれば、精密な挙動がいえるか?
- 曲率の評価とブラウン運動の挙動に関係が在る。そうすると、リーマン多様体が特異点を持つように変形していったときにブラウン運動はどう振舞うのだろうか?

さらに、確率過程としてパラメータはR+をとっていたが、
これを1つの元から生成されるモノイドとみると、
錘に対してブラウン運動が定義できるのではないか?
という疑問がわく。
KP階層では自然に多時間となっていたので、多時間に対して両立するブラウン運動とはどのようなものになるだろうか?
ボゾンに対するフォック空間上のブラウン運動を
ボゾン-フェルミオン対応でフェルミオンのフォック空間上のブラウン運動に移して、
確率的なタウ関数を考えることができるだろうか?