2011年4月24日日曜日

解析的曲線とトロピカル化

有限語の上の確率測度と大偏差原理は、
レート関数が相対エントロピーという形で奇麗に表される。
有限語を点とみて、語間の遷移確率を指定したマルコフ過程は、
有限グラフの辺に長さの構造が入ったものと見なせる。

有限語に対する重みを与えることを、
重みのパラメータを次元とするトーラス作用を与えることと思うと、
有限グラフとトロイダル多様体との間に何か関係が欲しくなるが、
これをBerkovich空間の言葉で表すことができる。
Berkovichの意味での解析的曲線は、
有限グラフへの変形レトラクトを持ち、
有限グラフと解析的曲線のsemi-stable modelとの関係がつく。


* トーリック多様体とトロピカル埋め込み
Analytification is the limit of all tropicalizations
(http://arxiv.org/abs/0805.1916)

Nonarchimedean geometry, tropicalization, and metrics on curves
(http://arxiv.org/abs/1104.0320)

* log-smooth
Lectures on Logarithmic Algebraic Geometry
(http://math.berkeley.edu/~ogus/preprints/log_book/logbook.pdf)
トロイダル多様体への埋め込みや、semi-stable curveという話を、
制限を付けずに扱うためには、ログ多様体の意味でのsmoothnessとしてあつかった方がよいと思われる。
Berkovich空間のログ多様体としての解釈はどうなるのだろうか?
局所環付き空間なので、定義自体はそのまま移行可能だろう。

2011年4月11日月曜日

有限グラフのゼータ関数

有限グラフのゼータ関数
Number theory of Graphs
(http://math.ucsd.edu/~aterras/2010%20newton.pdf)
または、
Zeta Functions of Graphs

* regular graph
多様体は、局所的にすべてEuclid空間に同型な幾何学的対象である。
有限グラフにおいて、局所的、という概念は、各頂点の近傍に対応する。
その位相的な性質は、頂点においてどれだけ辺がでているか、ということになるから、
多様体と同様に局所的にすべて同型という性質を持たせようとすれば、
頂点から出ている辺の数がすべて等しい、
という性質が要請される。この性質を満たすグラフをregularグラフという。
* Weil予想
有限体上の完備代数曲線について、それがsmoothであれば、
そのFrobenius作用素の固有値の絶対値について、purityが成り立つ、
というのが、Weil予想であった。
有限グラフについて、完備、という性質は、次数1の頂点が存在しない、と読み替え、
smoothをregularと読み替える。
グラフの辺に正、負双方の向き付けを与えて、ラベル付けを行い、グラフに従ってpathの集合を作る。
この集合におけるシフト作用素がFrobenius作用素に対応し、ゼータ関数は、
Iharaのゼータ関数として定式化される。
Weil予想に対応する結果は、隣接行列の固有値の性質に読み替えられるが、
すべてのregularグラフに対して成り立つことは言えず、
Weil予想が成り立つグラフをRamanujanグラフと定義している。

* Riemann面に対応するリボングラフ
Riemann面に対しては、ModuliのCell分割によってリボングラフが対応した。
このリボングラフの辺の長さがすべて等しいとき、そのRiemann面は数体上の代数曲線から来る。
(Berliの定理の言い換え)
すなわち、グラフの長さからなる単体と確率測度を対応させると、確率測度のエントロピーが最大になるときが数体上の代数曲線に対応していた。
そこで、次のような疑問が自然に出る。
- Riemann面に対応するリボングラフを有限グラフと見たとき、regularを満たすRiemann面はどのような性質を持つか?
- RIemann面のリボングラフを有限グラフとみたとき、これは何を表すか?
cell分割が、semi-stableな境界を含んでいて、
semi-stableに対応する双対グラフとして意味を持つか?
- Riemann面が数体上定義されるとき、p進でのBerkovich空間でのレトラクションとして有限グラフが得られる。これがtrivialにならないためには、代数曲線のモデルをとって、特異ファイバーが生じるところでみることになるが、この有限グラフと、もとのリボングラフはどのように対応するか?

SEMI-GRAPHS OF ANABELIOIDS
(http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/Semi-graphs%20of%20Anabelioids.pdf)
A dual point of view on the ribbon graph decomposition of moduli space
(http://arxiv.org/abs/math/0601130)
を読む必要がありそうだ。

* Brown運動とIharaのゼータ関数
regularグラフのIharaのゼータ関数のBassによる表示は、
det(I-uA+u^2Q)
と2次の形になっている。
そこで、Iharaのゼータ関数とBrown運動の生成作用素に対応がつくか?
という疑問が自然に浮かんでくる。
degree1の頂点が存在しないregularグラフのもとで、
境界条件はどうなるか?
下記の三つ組みがIharaのゼータ関数の2次表示と一致するのは、たとえばすべての辺の長さが1など、
具体的に書けるか?
Brownian Motions on Metric Graphs
(http://arxiv.org/abs/1102.4937)
を読む必要がありそうだ。

* 有限グラフのAbel-Jacobi
Riemann-Roch and Abel-Jacobi theory on a finite graph
(http://arxiv.org/abs/math/0608360)
では、対称積からJacobianを定義している。
そこで、Zelditchの大偏差原理の記述に対応するものを有限グラフで探してみたくなる。

* regularityの摂動
ランダムシュレディンガー作用素については、Anderson局在が成り立ち、
ランダムネスが減少するに従って、固有値の性質が絶対連続性を持っていた。
有限グラフにおいて、regularityは極めて強い条件と思われるが、
有限グラフをものすごく大きな次数で被覆して得られる有限グラフを考え、
その極めて小さい部分のみregularityを変更するように辺を挿入すると、
Iharaのゼータ関数は行列の微小摂動であるから、多項式として微小変動する。
この変動について、どのようなことがいえるか?