2013年10月22日火曜日

サマースクール復習その4


くりこみ

画像や信号の場合、情報はデジタル化という意味で量子化されていて、 
周波数成分はコンパクトな領域に局在化したものしか解析できない。 
仮に自然が精度に限界なく近似しないと理解できないようなものであったとしても、 
低精度で理解できる理論と整合性がないものは、 
我々の自然に対する理解の役には立たないだろう。
ラプラシアンのdeterminantに対して、無限大が現れるのは、 
大きな固有値も全て数えているためだった。 
固有値をエネルギーとみなすと、 精度のスケールは、量子場においては、エネルギーを基準として測られる(らしい)。 
そのため、
  • 計算可能な低エネルギー有効理論
  • くりこみ群方程式
によって、理解可能な量子場の理論の範囲を定める。
有限のデータによって定まる理論の極限が理解可能な理論で、 
具体的には、 
エネルギーに対する増大度が抑えられている有効作用汎関数で定まる理論。
前提となるのは、
  • 理論は局所汎関数であるLagrangianを与えることで定まる
  • 高エネルギー極限では場の相互作用は点に局在する
で、
  • くりこみ可能性が定式化できる
  • 増大度の評価はグラフに対して重みを定義することで計算可能
となる。

2013年10月9日水曜日

サマースクール復習その3


量子化

量子化は、 
- 粒子を存在確率の与えられた存在とすること 
- 場の量子化 
の2つの段階がある(らしい)。
これを代数的な観点から見ると、 
- 変形量子化 
- operad 
- factorization algebra 
の概念が有用なようだ。

変形

The unbearable lightness of deformation theory 
Deformation Theory. I 
パラメータを持った底空間上の1点に基準となる構造があり、 
そこからの微小なズレを測りたい、という場合が多くある。 
その際の指針となるのが、 Deligneによる、 
標数0の体上の変形理論は何らかのDGLA(differential graded Lie algebra)で制御できる 
というidea(らしい)。 
手順としては、 
1. 双数の環を用いた接空間の計算 
2. 高階の次数の変形の計算 
3. 形式的冪級数への持ち上げ 
4. 収束冪級数での議論 
5. 貼り合わせ 
という段階があり、 
1,2においてはHochschild complexを見ることで、 
変形が次の次数に進むことができるかどうかが判定できる。
変形に対して、標準的な持ち上げが存在し、それを用いて標準的な座標が取れる、 
という場合がある。 
- アーベル多様体の場合のSerre-Tateの定理 
- p-divisible groupの場合のGrothendieck-Messingの定理 
- Virasoro uniformization 
p-adic Teichm¨uller Theory 
などの例がある。 
変形に対して、このような幾何化が出来る場合、というのは、どういった状況だろうか?

operad

Koszul duality for Operads 
変形理論において、高階の変動を捉えるための計算があったが、 
そこに現れたテンソル積からの写像、という構造を抽象化したものとして、 
operadの概念がある。
木に対する操作として、縮約と結合がある。 
木の圏Treesに対して、linear-operadという、 
TreesVectなる関手を定めることができる。 
木の結合とベクトル空間のテンソル積の整合性を要求することで、 
代数の結合性などの条件をlinear-operadの可換図式として表すことができる。 
EV(n)=Hom(Vn,V)とendomorphismのoperadを定義することができる。 
Pをlinear operad、Aをベクトル空間とするとき、 
f:PEAという射を与えて、P代数を定義することができる。 
- 結合的代数 
- 可換代数 
- Lie代数
はいずれも、operadとして解釈できる。(さらに関係式が2次のquadratic operadというものになる。)
ベクトル空間の圏Vectをテンソル積の定義されるsymmetric monoidal categoryとしても、operadが定義される。 
特に、位相空間の圏にCartesian積を入れて、topological operadが定義される。
Grothendieck-Knudson moduliに対応するtopological operadとして、configuration operadがあり、 
reduced treeに対して、stratificationが対応する。
A:P代数に対して、(P,A)上の加群が定義される。

factorization algebra

同一時空上で異なる観測ができない、ということを抽象化すると、 
factorizationの条件が出てくる。
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2013年10月3日木曜日

サマースクール復習その2


物理量のとる値

物理量がとる値は、暗黙の内に実数体の元と仮定されている。 
講義中には、物理屋からすると有理数も実数も殆ど同じ感覚、 
という説明があった。
実数体は、元に全順序を仮定した有理数体の完備化で出てくるわけだが、
  • 何故、物理量の順序に全順序性が仮定できるのか?
  • 何故、物理量にtorsionがないのか?
  • 何故、物理量に極限操作が必要なのか?
といった辺りには、何らかの説明が必要だと思う。
実数体は、 標数0の体であり、 
Fontaineの周期環のようなfiltrationが入った環、 
Novikov環のような実数値filtartionの入った環、 
といった代数構造に比べて、非常に単純な構造をしている。
宇宙において、 
極微から極大の様々なスケールの構造が、 
全順序を保って比較できる、 
という仮定は不思議な事であるし、 
さらに、 
物理量が標数pの体上に値を取っていたとしても、 
そのpが十分大きければ、普通に代表元をとることで、実際の計算にはなんの違いも出てこないし、 
p倍する、という操作自体が物理的に不可能であるような大きさであれば、 
何ら物理量として不都合はないはずだ。
極限操作、という操作も不思議だ。 
既に観測が行われた物理量は、それを有限回より多い操作で演算を行うことができる量なのか? 
という疑問がおこる。
量子力学は、複素共役というFrobenius作用素によって不変になるように、物理量を実数値としているが、
  • 実数体を剰余体として含むより大きな環のFrobenius作用素で不変な部分に値をとる
  • 十分大きな標数pの体上に値をとる
などの仮定を置くことで問題になってくるのはどういう箇所なのだろうか?
局所体上の Wiener 測度について 
を見ると、局所体上でHilbert空間のようなことをしようとすると、直交補空間の一意性が問題になってくるが、 
物理量としては、スペクトル分解が出来る必要があり、そこで実数を必要とするのだろうか?
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2013年10月2日水曜日

サマースクール復習その1


内容

  • 相対論的量子電磁力学の数位
ディラック作用素、ディラック方程式の局所ゲージ不変性の説明、
クーロンゲージ、ローレンツゲージのもとでの正準量子化の説明、
自由場の場合の量子場の構成の説明、 がされていた。 相互作用を含むモデルを構成するのは難しい、ということ。
  • 共形場理論と作用素環
代数的量子場の理論の一つとして、共形場理論を作用素環の観点から、
局所共形ネットと言う形で構成している。
局所共形ネットがLie群の類似、頂点作用素代数が対応するLie環の類似、
という説明があった。
頂点作用素代数を、より代数的に、複素数体上の1変数冪級数体上で構成する、
頂点代数(Vertex algebra)があるが、
頂点代数からchiral algebraおよびそれと同等なfactorization algebraが構成できる。
(しかし、頂点代数が局所的なものであるのに対して、factorization algebraは大域的なものなので、
必ずしも任意のfactorization algebraから頂点代数が構成できるわけではない。)
factorization algebraは、factorization spaceから線形化の操作、
すなわち特別な切断を与えて、そこからのズレを測ることで構成される。
したがって、局所共形ネットはfactorization spaceの類似、と思えるのだろう。
factorization spaceの構成は、Beilinson-Drinfeld Grassmannianを構成する、という自然で幾何的な話なので、
von-Neumann環の方ではどのように構成されるのか見てみたい。
さらに、円周上の区間の集まりというと、区間の短点を分岐点として2重被覆させることで、
実超楕円曲線を対応させることができる。
(あるいは、Fuchs群を対応させることができる。)
Segal-Wilsonの方法でHilbert空間内のLagrangian部分多様体が対応するが、
これから局所共形ネットと関係が付くのだろうか?
  • 構成的場の理論
公理論的場の理論の基本的な概念、
構成的場の理論で何を構成しなくてはならないか、
格子正則化、くりこみ
の話。 こういった話で気になるのは、
理論として用意される全体の中で、くりこみによって到達されるのはどの範囲なのか?
というものだが、 それについては、 Renormalization and effective field theory を参考にしてみることとする。
講義の中で、
1. 現在は停滞している
2. 結局、現状では、trivialなものしか出てこない
3. くりこみの計算はとっても大変
といった点が説明されていた。
  • 非相対論的量子場とGibbs測度
Nelson模型、スピンボゾン模型、Pauli-Fierz模型、
といった、自由場と粒子の相互作用のある模型で、
Hamiltonianのスペクトル解析を確率解析を用いて行う、という話。
自由場はガウス過程のようなものなので、相互作用をこめて、
Feynmann-Kac型の汎関数積分表示を行って、ペアポテンシャルの評価をうまく行うことにより、
基底状態の存在/非存在、固有ベクトルの空間減衰性、荷電分布がδ関数に近づくときのくりこみ、
について議論をしていた。
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