2016年12月16日金曜日

サマースクール復習(2016)その7

Frobenius多様体とRiemann-Hilbert問題

[S]のまとめ

  • Riemann-Hilbert問題は、射影直線の場合、与えられたの表現に対応するモノドロミー表現を持つ、の各点で高々対数的極のみを持つ微分方程式を与えよ、という問題。(Appendix A)
  • 微分方程式の形は、となり、matrixを求める問題となる。
  • Birkhoff問題は、polar partの標準形を与えよ、という問題で、Weilによるベクトル束のadele実現を用いてdouble cosetの標準形を与える、という観点から、射影直線上のベクトル束の分類に対応する。(A2.1, A2.2)
  • 座標を固定するとが原点でtype1, 無限遠点でtype0の極を持つmeromorphic connectionのBirkhoff normal form。(2.1.1)
  • 対応するconnection matrixは、

  • holomorphicなベクトル束に対して層、meromorphicなベクトル束に対して層およびlatticeの概念がある。

  • 上のベクトル束は離散的な情報のみで定まる。そのため、自明束はパラメータに対するhypersurfaceを除いてrigidityを持つ。(Th1.1.1)
  • よって、meromorphicにはtrivializationを取ることが出来る
  • flat holomorphic connection、flat meromorphic connectionの概念がある。
  • discD上のmeromorphic connectionに対して、residue、1-formが定まり、flatnessから定まる関係式を満たす。
  • 上のTh1.1.1の条件でのflat meromorphic bundleの標準形(lem1.3.3)
  • metricの条件を付加した場合(1.4)
  • から定まるデータ(1.5.1-1.5.4)
  • relation(1.5.5)
  • metricの条件を付加した場合(1.5.6)
  • 逆に1.5.5のデータからが定まる。(1.5.7)
  • local Fourier 変換により、Riemann-Hilbert問題とBirkhoff normal formが等価となる。(Prop1.6.2)
  • Riemann-Hilbert-Birkhoff問題は、rigidity(Prop2.2.1)と標準形を持つ。(Cor2.2.4)
  • universal deformation(Th3.1.1)

  • Saitoh structure without metric
    に対して、(Def4.1.1)

  • とすると、relation1.5.5を満たす(4.1.1)
  • flat coordinates が定まる。(4.1.5)
  • Saitoh structureのによりに対してmultiplicationが定義され、flatnessとsymmetricからcommutative,assosiativeがでる(4.1.2)
  • のclosed analytic varietyで、良い条件の場合はLagrangian。(4.1.7,4.1.9)
  • さらに、の形となる。(4.1.8)
  • canonical coordinates(4.1.10)
  • discriminants(4.1.11)
  • Saitoh structure with metric(Def4.1.12)
  • Frobenius manifold(Def4.2.1)
  • Saitoh structure with metricとFrobenius manifoldの等価性(Prop4.2.2)

  • infinitesimal period mapping(4.3)1.5.5の状況で、の構造をの構造にうつすために写像を定義する。

    が同型の時、をprimitive sectionと呼ぶ。(Def4.3.2)

  • Frobenius manifoldの特徴づけ(Th4.3.6)
  • simply connected massive Frobenius manifoldとuniversal isomonodromic deformationに付随するFrobenius manifoldの対応(Th5.1.2)

疑問

  • 複素数体上では射影直線上のベクトル束のrigidityを用いてisomonodromy変形とFrobenius多様体の議論ができた。
  • p進体上では射影直線に対応するのは、Fargues-Fontaine曲線となるはず。
  • FF曲線上のベクトル束は離散データのみで定まるが、変形に対するrigidity、その上のflat connectionについて、Frobenius多様体の議論と並行する性質が存在するか?
  • その場合、Frobenius作用を込みにした(p進の意味での)Frobenius構造が必要になるはずで、Frobenius-Frobenius多様体をFargues-Fontaine曲線を用いて定義できるか?という話になる。
  • 前提として、Riemann-Hilbert問題、Simpson対応をp進で議論できるか?という点がクリアにならなければならない。

Painleve方程式との関係

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2016年12月6日火曜日

サマースクール復習(2016) その6

quadratic hamiltonianの量子化

Definition 4.47 ( [61]). Givental’s propagator

[M]では、

  • の具体的な座標による表記(zの指数の符号–+,-+-,++の組み合わせで留数を展開)
  • 内積に対するself-adjointを満たす式

    の変形を記述する、
    (Givental’s propagator,Givental’s R-matrix)を用いた、

    (Th1)の導出

が説明されている。
[G]では、

  • 2次のHamiltonianの量子化
  • Gromov-Witten invariantsのgravitational descendentsとancestorsの関係式(Th5.1)
  • genus 0 descendent potentialのreconstruction(Cor5.4)

と、[M]の式の適用先の説明がされている。ただし、細かな完備化、収束などの正当化については省かれている。
これらの概念の詳細な記述、Frobenius多様体、幾何学的量子化によるreconstruction theoremの解釈は[CI]に詳しい。

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2016年10月6日木曜日

サマースクール復習(2016) その5

量子コホモロジー

semi-infinite VHS

[G]2.1には、A-modelのFrobenius多様体の構造について説明がある。
[G]2.1.5では、

  • 半無限Hodge構造の変動の定義(Def2.20)
  • 半無限Hodge構造の変動がminiversalであることの定義(Def2.25)
  • 量子コホモロジーの場合の構成(Ex.2.21,Ex2.22)
  • flat sectionとconstant sectionをつなぐJ関数の具体的な記述(Prop2.23)
  • opposite subspaceの定義と、miniversalな場合のFrobenius構造の復元(Th2.26)
  • 量子コホモロジーの場合のminiversalityの説明(Ex2.27)

がある。

Krein型特異点

Krein型特異点の場合に、導来圏の記述はかなり透明になる。([BKR]Cor1.3)
さらに、A型の場合、超幾何関数を用いて、Krein型特異点に関わるBモデルの局所ミラー対称性の記述、central chargeの記述が出来る。([Hosono]§5)

整構造

トーリック多様体とLG模型のミラー対称性に対して、
Kahler moduliのコンパクト化とsecondary fanの対応がある。
各々の極限点における小量子D加群の対応がある。([I1]Th3.3)

小量子D加群の対応、平坦構造について、より詳細に整構造が定まる。([I2]Def3.2,Def4.1,Th7.3)

大同変ミラー対称性は、同変量子加群の定めるベクトル場をGivental cone上の線形ベクトル場と同一視することでI関数が具体的に記述できる。([I3]Th5.1)

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2016年9月14日水曜日

サマースクール復習(2016) その4

moduliの対応

  • [CK] [Mirror symmetry and algebraic geometry ]

においては、
Hodge構造の退化として、maximally unipotent monodromyを定義し、monodromyがmaximally unipotent となる複素構造のmoduliのコンパクト化の境界点(で整数性条件を満たすもの)を、maximally unipotent boundary pointsとして定義している。(Def5.2.2)
一方で、Kahler構造のmoduliのコンパクト化において、large radius limit pointsを定義している。(Def6.2.2)
古典的ミラー対称性においては、
あるmaximally unipotent boundary pointにおけるPicard-Fuchs方程式の解から、良い座標系を導入することが出来て(6.31)、
large radius limit pointが対応する場合に、Kahler conesの生成元から定まる標準的な座標系との間に対応が付く、
ということがMirror mapの対応だった(6.3)。
しかし、Toric多様体およびそのanti canonical hypersurfaceの場合にconesを用いた例が記載されているものの、
moduliおよび、そのコンパクト化の対応、といった幾何学的側面は、
理論ではなく例証にとどまっているようだ。
その点で、このあたりの対応が理解できていない。

Hesse pencil

Calabi-Yau多様体(ただし単連結性は除く)の最も単純な例は、楕円曲線で、
この場合には、moduliの幾何的な構造はかなり理解されている。
[中村]では、コンパクト化について、具体的な記述がある。
平面3次曲線を射影埋め込みと見た時、埋め込みを与える大尉的切断がテータ関数となるが、これは射影曲面の大域切断から得られる。

[AD]lemma1では平面3次曲線のパラメータは1次元で、楕円曲線のレベル3のmoduli空間に対応することが示されている。また、moduliの具体的な構造は、[AD]Prop5.1。

[Z]において、上記をトーリック多様体のanti-canonical hypersurfaceとみなして、古典的ミラー対称性のMirror mapを具体的に構成することが出来ることがまとめられている。([Z]3.1.2, 3.2.3,4.1)

楕円曲線は、Ising模型と関係が深い。
[R]5 Elliptic Curves in Ising Model、では、
(54)式に現れる-familyが、Ising模型の自由エネルギーの計算に用いられる楕円曲線となっている。(ホロノミック量子場p32(2.40))
Ising模型の場合は、モノドロミー保存変形、タウ関数が導出されているが、
これをミラー対称性の側から見ると、Frobenius多様体のモノドロミー保存変形、タウ関数が対応する(はず)。

楕円曲線の場合のミラー対称性

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2016年9月4日日曜日

サマースクール復習(2016) その3

Witten予想とタウ関数

[M]では、
“Kontsevich [55] used the matrix Airy function to obtain all intersection numbers. The topological recursion replaces the asymptotic analysis of matrix integrations with a series of residue calculations on the spectral curve x = y^2.”
という記載がある。

[村瀬]では、

  • W:Riemann面のモジュライ空間の交点理論の生成関数
  • K:行列積分=リボングラフの空間のユークリッド体積を与える生成関数
  • Witten予想は、W(の指数)がVirasoro代数の作用(半分)で消える、ということと、それがKdV階層のタウ関数であること

に対して、

  • Kは、行列積分の一般的な性質からVirasoro条件、タウ関数の性質を自明に満たす
  • W=Kは、開いた弦理論と閉じた弦理論の対応

という説明があり、
更に自然な説明として、Eynard-OrantinのTopological recursionによる説明をあげている。

[DM]では、

  • Airy関数(複素関数)の漸近展開から定まる係数がRiemann面のモジュライ空間の交点数を用いて表わされること
  • それが、Topological recursionと、Hitchin spectral curveの量子化としてのQuantum curveとの関係によって解釈できること

の記述がある。
Riemann面のモジュライ空間の交点数、とは、1点に対するGromov-Witten invariantsであるから、一般の(シンプレクティック)多様体に対して、同様の解釈ができるのか?という点が自然な疑問となる。

CohFT

Gromov-Witten invariantsに対する抽象化として、Frobenius多様体がある。
これは、多様体に対するordinary cohomologyを変形する際の条件を抜き出したもの、と解釈できる。
[Dub]のLecture2では、位相的場の理論のmoduliがFrobenius多様体の構造を持つことの説明がある。

タウ関数

幾何学的量子化

[CPS] Geometric Quantization with Applications to Gromov-Witten Theory

  • Weyl量子化
  • 変形量子化
  • 幾何学的量子化

という量子化の方法があるが、
佐藤グラスマン多様体と量子化を結びつけようとすると、
シンプレクティックLoop群の接空間として現れる無限次元ベクトル空間に対する量子化がでてくる。

  • SE:String equation(2.2.1)
  • DE:Dilation equation(2.2.2)
  • TRR:Topological recursion relations(2.2.3)
  • DE:Divisor equation(2.2.4)

のうち、SE+DE+TRRを満たすものを、Gromov-Witten theoryの公理系と呼ぶ。これは、FJRW理論にも適用可能(らしい)。(2.3. Axiomatization)
Gromov-Witten theoryの公理系に対してタウ関数が定義される。(Def4.2)
さらに、シンプレクティックLoop群がGromov-Witten theoryの公理系の集合に作用し、rankを固定すれば推移的。(Th4.1)

量子コホモロジー

Frobenius多様体に対応する、ordinary cohomologyの変形として現れるcohomologyは量子コホモロジーと呼ばれる。

量子コホモロジーに関しては、
Weyl量子化により、量子D加群がでてきて、その特性多様体として、Lagrangianが出てくる。
一方、Gromov-Witten invariantsの生成関数からGivental Lagrangian coneが定義される。

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2016年8月31日水曜日

サマースクール復習(2016) その2

[H]の講義では、Lagrangianを用いて、
Non-Linear sigma modelとLandau-Ginzburg modelを導出していた。
Landau-Ginzburg modelにおいてA-twistに対応するtopological string theoryがFJRW theoryである、という記述があった。(2.6)

FJRW(Fan-Jarvis-Ruan-Witten) thoery

[FJ]§1.2にある、CY-LG対応と、CY-Mirror symmetry、LG Mirror symmetryにより、
Calabi-Yau Amodel/B-model
Landau-Ginzburg Amodel/B-model
の間に対応が付くことが予想されている。

FJRW theoryは、

  • LG A-modelに位置するべきCohomological Field theory(§2 Def2.2)
  • 状態空間はrelative cohomologyで定義され,degreeはageによるshiftがある(Def3.10, Def3.11)
  • 状態空間はsectorの直和であり、broad sectorとnarrow sectorに別れる(Rem3.12)
  • pairingが存在する(§3.3)
  • stableW,G-curveのmoduli stack(Def3.21)に対して、evaluation mapとvirtual fundamental classが定義できて、Gromov-Witten theoryの類似のCohFTが定義できる(Th3.27)

ミラー対称性に関わる予想としては、

  • Frobenious多様体の構造が定義されると予想されている(§4.1)
  • Witten予想(=Kontsevichの定理)の類似で、integrable hierarchiesのタウ関数が存在すると予想されている(§4.2)(ADEの場合は、[FJR2]§6)
  • Givental’s I-functionとJ-functionの対応がつくと予想されている(§4.3)

がある。

GLSM

[H]では、としてアーベル群のみが例として挙げられていたが、
任意の簡約群をゲージ群として理論が展開できる。

quasi-homogeneous polinomialに対して、
FJRWではWitten方程式が定義されたが、
GLSMでは、さらにmoment mapの情報を加えた、Gauged Witten方程式が定義される。
virtual-cycleが定義できて、そこから相関関数が定義できる。([FJR]Th1.1.1)

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2016年8月28日日曜日

サマースクール復習(2016) その1

講義内容

ミラー対称性講義

物理の側から見た、ミラー対称性の基礎的部分の解説。
Komaba Lectures on Mirror Symmetry

  • 2d (2,2) Supersyymetric、chiral ringの説明
  • T-dualityの説明
  • Lagrangianを用いたGLSM(Gauged Linear Sigma Models)の説明とclassical vacua、phase、およびQuantum effectsの説明
  • 例を用いたCY/LG対応とOrlovの導来圏の半直交分解の関連の説明

カラビ・ヤウ多様体の幾何学とミラー対称性

90年代における3次元カラビ・ヤウ多様体(3CY)の幾何学の観点からの基礎的部分の解説。

  • トーラスに対して、Fourier変換、Poisson総和公式を用いたT-dualityの解説
  • トーラスに対する、Narainモジュライ空間の説明
  • 3CYに対するBogomolov-Tial-Todorovの定理、複素構造の変形空間の定義
  • 3CYに対する複素化されたケーラー錐、chiral ring の定義、Hard Lefshetz定理
  • anti-chral ring の定義、LCSL(Large complex structure limit)の解説、B-structureの存在の妥当性の説明
  • 古典ミラー対称性予想の説明
  • 周期領域の説明、楕円曲線、K3曲面、3CYにおける周期領域の自然な座標の説明
  • 3CYにおけるミラー対の構成法の説明Determinantal Quintics and Mirror Symmetry of Reye Congruences

超曲面特異点のミラー対称性と関連する話題

可逆多項式に対して、位相的ミラー対称性、ホモロジー的ミラー対称性、環構造の具体的構成の話。

  • コンパクトケーラー多様体と超曲面特異点は似ている
  • 代数的背景を持つ三角圏とシンプレクティック幾何学的背景を持つ三角圏の同値
  • 半直交分解は収縮に対応し、ミラー対称性のもとで変形に対応す、ということからカスプ多項式を導出する
  • Dolgachev数とGabrielov数を入れ替える奇妙な双対性は奇妙ではない
  • 群同変の場合のJacobi環の積構造は、一般論ではなく手で入れる。
  • Hochshild cohomologyの積構造は、canonicalに対応付けられない

Floer Theory and Mirror Symmetry

深谷圏はありまーす、という話。

  • 普遍Novikov環(体)構造の定義
  • 有限次元のMorse理論の場合の境界写像の説明
  • 安定写像のモジュライ空間の説明
  • Weak Maurer-Cartan equation、potential function、obstructionがない場合のFloer cohomologyの説明
  • バルク変形、閉開写像、開閉写像の説明
  • 係数の場合のtorsionの現れ方の説明
  • トーリック(Fano)多様体の場合のポテンシャルの臨界点の計算、射影的トーリック多様体の場合の一般論
  • 深谷圏の定義、Hochshild cohomologyとQuantum cohomology間の標準射の説明、Trace mapの定義
  • Cardy relationに基づくgereration criterionに関する定理の証明の概略の説明

疑問点

  • 感覚的には、Fontaineの周期環とNovikov環は、変形を環の拡大により制御するという意味で似ている。面積と分岐がともに実数で測る量であることも似ている。周期環はHodge-Tate代数をGalois群の作用に対して自然にするために完備化やdivided powerを用いた複数のversionがあるが、Novikov環は、更に何らかの対称性に対してより複雑な環が必要になることはないのか?
  • 一般ルート系に対応する幾何的対象は、講義ではまだ見つかっていない、とのことだったが、Flag varietyやSpringer resolutionのような構成ができないか気になる。また、超曲面特異点の議論を、数論的曲面で、同様に展開できるか?(楕円曲面の場合にはNeronモデルがあった。)もし展開できれば、可逆多項式のパラメータの一つを素数に変えて、変数ごとに還元を考える、ということもできるかも。幾何という点では、ADEの場合には、affine Weyl群、hereditary algebra、重み付き射影曲線、が簡明に関係していたが、Quiverがwildにある場合は表現のmoduliが大きいので、重み付き射影曲線の幾何的情報だけでは対応する情報が少なすぎるはず。

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2016年7月27日水曜日

指標層

疑問

指標は、群の表現という群構造と環構造の折衷にあるもので、
1次元指標の場合は、環構造の乗法構造だけに依存する。
(そして、円分指標を環構造を崩した際に如何に保つかが、IUTTのlinkの議論の中心だった。)
果たして、群の指標は、どの程度、環構造に依存しない構造なのか?

Deligne-Lusztig

Deligne-Lusztig variety上のvirtual representationの、
characteristic cycleは具体的に計算可能なのだろうか?
単純に考えると、指標層の台の和からなるはずなので、
nilpotent cones内の軌道の和になることが想定される。

指標層の特異台

有限代数群の指標には、指標層という幾何的な構成があり、
偏屈層が対応する。
そして、標数0では、指標の満たす線形偏微分方程式系の形からD-加群の特性多様体の形に制限がつく。[H][O]
標数pにおいて、l進層の特異台が定義されたので、標数pにおける指標層の必要十分条件をそのl進層としての特異台の性質で記述できるか、
というのは気になる。

圏論から見た指標

圏論的な見方としては、指標層は、Drinfeld center(monodidal categoryの関手におけるcenterとして定まるmonoidal category)として解釈できる。([BFO]Th3.6)
標数0においては、指標層が特異台によって特徴づけられるが、
複素数体上の幾何学的Langlands対応のBetti実現においては、
-bundle stack上のnilpotent sheavesのなすdg圏(automorphic side)とcharacter stack上のnilpotent singular supportを持つind quasi coherent sheavesのなすdg圏(spectral side)が同値([BN]Conj1.5)、
という予想があり、
nilpotent sheavesのなす圏は位相的に定まる、
ということが予想から帰結される。

指標層は保型形式のおもちゃであって、
nilpotencyが無限遠点における関数の挙動を制御している、
ということが予想の背後にある。
標数pにおける幾何学的Langlands対応は、
de Rham実現はないものの、
Betti実現に必要な構成要素は、automoprphic side、spectral side共に定義できるはず。
では、topological field theory、conformal field theoryのような解釈を標数p上で行うことは可能なのだろうか?

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2016年6月15日水曜日

Springer resolution

 Springer resolution

pervers sheaves

[G]4. Perverse sheaves and the Decomposition Theorem
では、

  • perverse sheavesの圏がアーベル圏で、simple objectがintersection complexesで記述でき、空間のstratificationsからなるposetの構造が圏の構造に反映すること(Th4.3,Th4.4)
  • Perverse continuation propertyにより(Zariski)open subvarietiesの射がfunctorialにisoになること(Prop4.5)
  • Decompositon theorem(Th4.6)

が述べられている。
これは、複素数体上に限らず、標数pの体上でも成立する。([KW]ChⅢ)

Weyl群の表現

[G]6. Representations of Weyl groups
では、体k(複素数体だが、very goodな標数pの体でも成立)上の連結半単純代数群のWeyl群の表現を幾何的に構成している。

[G]9 Proof of the geometric construction of

  • に作用し、のhomology群は同型
  • の下で
  • Springer resolution はsemi-small([G]Prop9.1)
  • 軌道は有限個(軌道はでパラメータ付けされる)
  • universal resolution はsmallで、generic etaleでGalois群は([G]Prop9.3)

ということから、の正則表現が現れる。
Fourier変換を通して、Springer resolution上にW-actionが誘導される。

ここで、Fourier変換は、Deligne-Fourier変換([KW]ChⅢCor13.4)、Fourier-Sato変換([G]Prop8.3(4))、Radon変換のいずれも、直交補空間を直交補空間に移す。

疑問

[BK]では、Springer resolutionにおけるsubregular nilpotent elementの逆像として現れるDynkin fiberのnodesについて、Fourier変換で移り合う性質により圏を定義していた。このFourier変換で移り合う、という性質が、の対応から導出できないのか?

標数pにおけるsingular supportの定義から、Springer resolutionのsingular supportをG軌道を用いて記述すると、複素数体上のcell decompositionの結果と一致するか?(tamely ramifiedの場合なので一致しているはず)

discriminat locusを標数p特有の状況とするには、Artin-Schreier拡大による分岐の方法があるが、それ以外にはどういう方法があるのだろうか?
[MS]におけるdecompositionの議論を標数pで行うには、どの点が問題になるのだろうか?

affineHecke環のgeometricな構成には、余接バンドルのfiber方向へのスカラー倍が必要だった。
一方で、量子cohomologyにおけるqはエネルギーによるNovikov環の変数として、係数体に現れる。
[S]において、q-analogueが整数環上のHodge構造から現れるという予想がなされている。量子群やRingel代数が行える状況(odd-partがない状況)では、基礎体の標数がパラメータとして持ち上がっていて、結晶基底のパラメータとなっていた。
IUTTにおいては、Galois群を接バンドルとみなす、という考え方のようだから、Galois群の双対(?)的な余接バンドルのfiber方向への作用がqとして現れる、という理解ができれば望ましい。
p進Teichmuller理論ではqは、Serre-Tate canonical liftingにおける持ち上げの座標として現れていた。

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2016年6月2日木曜日

深谷圏の基礎のお勉強

基礎

Floer cohomologyが定義されるための3要素([Auroux]1)

  • transversality
    そのためにHamiltonian perturbationを行う(場合もある)
  • compactness
  • orientability

gradingが定義されるために([Auroux]1)

  • Maslov index

積([Auroux]2)

  • Floer product
  • higher product
  • Fukaya category

([Auroux]3)

  • exact triangle
  • twisted complex
  • Dehn twists([Auroux]3.3.1)

microlocal geometry

[KS90](Sheaves on manifolds)のmicrolocal HomではSerre dualityが成り立つ。
[BK]では、curveのnodeをnormalizeして2点に分離した時の層に対して、
Fourier-Sato変換を用いて対応が付く場合を見ている。
nearby-cycle, vanishing-cycleの言葉で書き直すと、nodal curve上のmicrolocal sheavesの圏の組み合わせ的な構成が記述でき、2-Calabi-Yau propertyがmicrolocal Homの性質から導かれる。([BK]Th1.9)

wrapped Fukaya category

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2016年5月17日火曜日

vanishing topos

microlocal sheaf

実解析的な状況では、開基として円盤や、円盤とconeの交わりを取ることが出来る。
そのため、層に対して、
singular supportを直接、点の集合として定義することが出来る。
層に対して、singular supportが定義されると、
写像が層に対してnon-characteristicであるかどうか、という点が議論の対象になる。
[KS90]では、
先にsingular supportを定義し、cut-offによる評価、
順像、逆像に対する変化の評価、を行い、
subanalytic stratificationにおけるconstructible sheaf、
複素解析的な場合のconstructible sheafの定義をしている。
そして、[KS90]のchⅧ Prop8.6.4.では、複素解析的な場合には、
singular supportをvanishing cycle functorを用いて記述できることが示されている。

singular support

scheme上のetale層に対するsingular supportを定義しようとすると、
実解析的な状況と異なり、開基が少なすぎて各点での条件で定義することは難しい(ように思われる)。
そこで、写像に対する層のlocal acyclicityの条件を満たすconic setの中で、
極小のもの、という形で定義をすることとなる。
存在自体は証明が必要になる。
([Saitoh1] Th2,6, ThA, ThB)
[Beilinson]における存在証明の流れは、以下の通り。

  • test pairの概念
  • C-transversalityの概念([KS90]におけるnon-charactericity)
  • local acyclicityの概念、-acyclicityの概念
  • micro supportedの概念
  • 円盤に対するvanishing cycleの特徴付けに対応するweakly microsupportedの概念、coneの交わりとの整合性
  • weak singular supportの存在
  • smooth map、open embeddingに対するsingular supportの振る舞い
  • 射影空間の部分多様体の場合に帰着
  • 射影空間におけるRadon変換の概念
  • 層のRadon変換とmicro-supported coneの双対との対応([Beilinson]lem3.3)
  • 層のRadon変換(Legendre変換)がlocally constantになる最大のopen partの補集合をとると、それはdivisorとなり、irreducible compornentの次元が上から評価できる([Beilinson]Th3.2、Th1.2、Th1.6)
  • constructible sheafの議論を、irreducible perverse sheafの場合に絞る
  • weak singular supportとsingular supportは一致([Beilinson]4.7)
  • singular supportの次元は空間の次元と等しい([Beilinson]4.0 )

疑問としては、[Beilinson]の定義によるsingular supportを、
複素多様体の(よいstratificationに対する)constructible etale層に適用した場合にconical setとして、[KS90]の定義と同一のsetとなるか?
というものがある。(すくなくとも、[Beilinson]中では示されていない。)これはvanishing cycle functorを用いてcheckするべきことのように思われる。
([KS90]の定義における関数が、vanishing cycleの特徴付けに置き換わっているので、local acyclicityとvanishing cycleがないことの対応から、ほぼ示されているようには思う)

vanishing topos

symplectic幾何におけるvanishing cycleは底空間が実2次元で、
sectionがpseudo-holomorphic curveとなる点が重要だった。
一般次元の底空間において、vanishing cycleの議論をしようとすると、
toposを拡張する必要が出てくる。

characteristic cycle

characterisitic cyleのcategorificationがFukaya category、という考え方からすれば、
任意の体上でmicrolocalizationにより、Fukaya categoryが定義されて然るべき、と思われる。

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2016年4月5日火曜日

twistorとFF curve

Hamiltonian’s ghost

複素数体上でのFrobenius作用素が複素共役、
という観点で、HyperKähler性のarithmetic versionがないか、
というのは、素朴な疑問。
Hermite形式が-moduleと対応する。
Hamiltonの4元体は、実数体上の非自明な中心多元環で、
と実数上のベクトル空間で同型、
そのため、4次元実空間上のanti-self dual Yang-Mills equationの解の特殊化
として、HyperKähler空間の例が出てくる。
[Hitchin]では、”Hamilton’s ghost may yet rest content.”
と記述されている。

p進体上では、各次元ごとに各々存在する。
従って、それらの中心多元環を集めてひねることが必要になる。
Hamilton’s ghostは果たして数論に対して心安らかなのだろうか?

twistor

複素共役によって射影直線を分割する、という手法は、
一つはQuasi conformal mapを用いて上半平面を2つ貼り合わせる、
という場合に、
もう一つはHodge構造の拡張としての底空間という場合に、
現れる。
後者は、non abelian Hodge theoryの拡張として、
一般論が建設されている。

p-adic twistor

射影直線に相当する幾何学的対象として、
Fontaine-Fargues曲線がある、
というのが、[Fargues2]5. Archimedean/p-adic twistorsにおける指摘。

疑問としては、

  • 標数pの局所体上、Hodge-Pink構造に対するFF曲線について、同様にtwistor構造を定めることが出来るか?とくにtiltingと両立するか?
  • [Fargues2]4.3. Vice Versaの部分は、標数pの局所体で成り立つか?
    さらに、
  • Hodge theaterにおける、楕円曲線とその±1で割ったorbifoldの役割をtwistorの底空間として理解できないか?(無論、FF-curveと射影直線で違いがあるので、素朴には成り立たない。)

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2016年4月4日月曜日

geometric satake

モノドロミー保存変形

可解格子模型は、極限が、共形場理論となり、
相関関数はKZ方程式を満たす関数となる。
の4点に分岐を持つ微分方程式のモノドロミー保存変形として、パンルヴェ方程式が現れる。
合流に応じて、対応するQuiverの対称性から、パラメータに依存して超越解と代数解かが定まる。
この背後にあるのは、元のリーマン面の基本群の表現のmoduliにシンプレクティック構造が入り、いわば位相的な構造を持っているが、
それがQuiverという組み合わせ的構造により抽出される、ということ。
不確定特異点まで込めて、基本群の表現のmoduliを構成して、その組み合わせ的構造からくる対称性を記述する、ということが、Frobenius多様体と合わせての問題意識となっている(ようだ)。

geometric satake

標語的には、モノドロミー保存変形の量子化が共形場理論、
ということになるが、実際に量子化を行うのに、
複素数体上では、Beilinson-DrinfeldによるD-加群を用いた量子化、
があった。
標数pにおいては、p-curvatureを用いることで、
量子化が、記述できる(ようだ)。

標数pにおいて、モノドロミー保存変形に対応する、Galois表現保存変形、というのは存在するのだろうか?
ここで、可解格子模型に対応するGalois表現というものが出てきて、
極限がperfectoidを用いて表せたりすると、複素数体上との対応がわかりやすくなる。

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2016年3月29日火曜日

Carlitz exponential

Artin-Hasse Exponential

Carlitz Exponential

  •  8. The Carlitz Exponentialに、標数pにおける指数関数について、記載がある。
     複素数体上では、双曲線関数あるいは三角関数は、その周期性から無限積展開を持つ。
     同様のことを標数pの体上で構成しようとすると、2πi$2 \pi i$ に相当する周期となる(超越)数、が必要になる。
     これは、(8.3)で定義される。
     指数写像については、Def8.1でTaylor展開の形で定義され、
     Th8.3で無限積展開を持つことが示されている。
     また、指数関数の逆関数としての対数関数も定義される。
     
     指数関数および対数関数の係数の付値は、divided powerの定義可能性において重要な意味を持っていた。
     Carlitz exponentialにおいても、その係数の評価を行うことが、
     Th8.10にある。

divided power

divided power structureは、special fiberと整構造を結びつけるために、
無限小近傍で積分を行うことを可能にするための構造である。
  • divided power ring([dga] Def3.1)
  • divided power polynomial algebra([dga]5)
  • universal divided power algebra([dga]lem5.3)
実際にdivided power ring$(A,I,\gamma)$が与えられた時に、 環の射$A\rightarrow B$、BのイデアルJ、$IB\subset J$と整合するdivided power algebraでuniversalなものをdivided power envelope$D_{B,\gamma}(J)$と呼ぶ。([crys]Def2.2)

torsions

divided power envelopeにおいては、torsionが現れることがある。
これは、[BO83]Appendix A or [crys]Ex22.1のように、かなり自然な設定で現れる。
(τ=γp(X2)γp(Y2)γp(XY)2$\tau = \gamma_{p}(X^2)\gamma_{p}(Y^2) - \gamma_{p}(XY)^2$の形は、形式的には分散行列に似ている。特異部分多様体のtorsionに対して、モーメント的な解釈が付けられると面白そうだが。。。)

標数pにおけるdivided power

標数pにおけるdivided powerとして、
  • Grothendieck - Bertelot divided power
  • Honda-Hopkins divided power
の2種類が導入されている。
5.4 Comparaison avec la construction de Messing
でexp,logを定義している。
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2016年3月8日火曜日

local shtukas

疑問

標数pの局所体と標数0の局所体上で、 
tiltingにより話が平行して進むのはどこまでなのだろうか? 
shtuka with no paw, one pawについて、 
Hodge構造の情報はtiltingにより移行できるのだろうか?
[SW]では、p-divisible groupの性質について、 
divided powers、Artin-Hasse exponentialの性質を用いている。 
(ただし、finite locally free group schemeの議論は主ではなくなっているらしい。) 
perfectoidに関する部分で特徴的なことは、 
2次元のringをadicに見ることによって、 
Robba ringやperiod ringを自然に導入することが出来る、 
という点。
[W]において、等標数の場合もuniversal coverに対応するformal vector spaceが定義されている。

標数pの体上のfinite locally free group scheme

[GH]10. A·divided powers、 
[GL]5.1において、等標数の場合のdivided powersが定義されている。
混標数においては、pが0もしくはnilpotentであることを救済するために、 
exponentialの各項xnn|がdivided powerに対応していたが、 
等標数においては、ζが0もしくはnilpotentであることを救済するために xqnζnがdivided powerに対応する。([ARGOS12]Def9)
等標数においては、有限体の位数がp冪の場合もあるため、Fqの作用について、 
Strict-Fq-moduleの概念が必要になる。これは、cotangent complexを用いて特徴づけられる。([ARGOS12]1.2)
標数pにおいては、additive groupはp倍すると0になる。 
従って、FV=VF=pの式において、V=0となる場合に注目する必要がある。 
これは、[ARGOS12]Th3にあるように、比較的容易に特徴づけが出来る。

naive cotangent complex

[Messing]においては、
  • 標数p上(p=0)での議論
  • pがnilpotentな環上での議論
を行っている。 
[HS]においては、
  • ζ=0のbase上での議論
  • ζがnilpotentなbase上での議論
を行っている。 
0からnilpotentに持ち上げる際のliftingを見るために、 
cotangent complexの概念が必要になる。

local Shtukas

[K]のPartIにおいて、Kisinの結果との関係が詳細に記述されている。
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